
女性の心身のコンディションは、女性ホルモンの影響を大きく受けています。ホルモンバランスが乱れると、短期的には月経に伴う不調、長期的には閉経前後10年間にあたる更年期の不調などが起こり、生活の質の低下はもちろん、夢やキャリアの妨げになることも。
そこで大切なのが、女性ホルモンと上手に付き合っていく「女性ホルモンマネジメント」です。女性ホルモンの性質とその変化を知り、セルフコントロールに役立てましょう。ここでは、女性ホルモンマネジメントの基礎知識について、詳しく解説します。
女性ホルモンとは?
女性ホルモンとはよく聞くものの、実際にどんな働きをしているのかはわからない...というILACY(アイラシイ)世代は多いでしょう。まずは、女性ホルモンの基礎知識からご紹介します。
女性ホルモンは、次の2種類で構成されています。
卵胞ホルモン(エストロゲン)
通常、女性ホルモンとして表現されるのは、おもにこの卵胞ホルモン(エストロゲン)です。エストロゲンは「女性らしい体を作るホルモン」といわれ、皮膚の潤いを保つほか、受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚くして妊娠に備える働きがあります。さらに、感情や自律神経に作用して気持ちを安定させたり、血管や骨、関節、脳などを守ったりするのもエストロゲンの役目。
しかし、45歳頃から閉経に向かうにつれて急激に減少し、女性の体に大きな変化が現れます。
黄体ホルモン(プロゲステロン)
エストロゲンによって厚くなった子宮内膜を、受精卵が着床しやすい状態に整えるのが黄体ホルモン(プロゲステロン)の役目です。
基礎体温を上げる働きもあるので、体温の変化で排卵の有無など、体の状態を知ることができます。
ライフステージ別・女性ホルモンの変化
女性のライフステージは、大きく次の4つに分けられ、各ステージで女性ホルモンの分泌量が大きく変化します。
・思春期(10~17歳頃)
・性成熟期(18~50歳頃)
・更年期(50~60歳頃)
・高齢期(60歳頃~)
ライフステージ別の女性ホルモンの変化について、詳しく見ていきましょう。
思春期
初潮を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量がぐっと上がります。月経不順、月経痛、月経前症候群(PMS)など、月経に絡む悩みが増加。
性成熟期
分泌量が安定し、女性ホルモン(エストロゲン)に守られている性成熟期。妊娠や不妊の問題、子宮や卵巣の病気が増えます。
更年期
閉経に向け、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減り始めます。
ほてり、冷え、イライラ、落ち込み、動悸、めまいといった更年期症状が現れるようになるほか、肌やデリケートゾーンの乾燥が起こりやすくなります。デリケートゾーンの痛みやかゆみを感じる人も増えるでしょう。
子宮体がん、卵巣がんといった病気のリスクが高まるのもこの時期です。
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高齢期
閉経を経て、女性ホルモン(エストロゲン)がほとんど分泌されなくなります。エストロゲンのサポートを失った骨、心臓、血管、生殖器、皮膚などに影響が及び、内臓脂肪が付きやすくなったり、高血圧や脂質異常症など動脈硬化を進行させたりする生活習慣病、骨折のリスクを引き起こす骨粗しょう症などのリスクが高まります。
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女性ホルモン(エストロゲン)が心身に影響するのはなぜ?
そもそも、女性ホルモン(エストロゲン)が心身に影響を及ぼすのはなぜなのでしょうか。
エストロゲンは、脳の命令を受けて分泌され、脳をはじめ皮膚や心臓、血管、中性脂肪、骨、膀胱、卵巣、腟など、多くの機能を良い状態に保つ働きをしています。
エストロゲンが減少する更年期頃からしわが増えたり、太りやすくなったり、疾患が増えたりするのはそのためです。
40代の月経変化を知ろう
更年期に差し掛かると、月経の量や周期にも変化が現れます。経血の量が多すぎる過多月経、少量の出血がダラダラ続く過長月経は生活の質にも大きく関わる上、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、中には子宮体がんといった、重大な病気の可能性もあるので要注意。
これまでの月経と違うと感じたら、貧血のチェックを含めて、医療機関の受診をおすすめします。
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女性ホルモンの変化に負けないライフスタイル
女性ホルモン(エストロゲン)の減少に伴う不調を感じたら、生活習慣を見直して心身のバランスを整えましょう。ここでは、すぐに試せる生活習慣を4つご紹介します。
温活をする
まずは、婦人体温計で起床時の体温を測る習慣をつけましょう。理想の体温である36℃台を下回っている場合は、体を温める「温活」を始めてください。
通勤や買い物の際は息がはずむ程度に少し早歩きをしたり、湯船にゆっくり浸かったりするだけでも効果的です。
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骨活をする
骨密度(骨を構成するカルシウムなどのミネラルの詰まり具合)が高いと、骨折のリスクが下がるだけでなく、顔の輪郭を若々しく保つことが可能。
というのも、骨密度が減ると、骨自身も縮んで小さくなっていきます。頭蓋骨や顔面骨が減ると、顔の皮膚とのあいだに隙間ができて皮膚が余り、老けて見える「たるみ」が生じるのです。
そのため、カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどを含む食品を摂取し、骨量減少を抑えましょう。
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■温活・骨活の栄養素が含まれる食材
・たんぱく質...肉類・魚介類・卵・大豆製品・乳製品など
・鉄分...レバー・赤身の肉・赤身の魚・貝類・海藻類・豆類など
・ビタミンE...ナッツ類・卵・アボカド・大豆製品・カボチャなど
・イソフラボン(エクオール)...大豆製品
・ビタミンD...魚類・卵・乳製品など
・ビタミンK...緑葉色野菜・海藻類・緑茶・植物油など
・カルシウム...乳製品・小魚・大豆製品・野菜類・海藻など
良い睡眠をとる
睡眠を促し、眠りのリズムを整えるホルモン「メラトニン」がしっかり分泌されると、女性ホルモンの働きが高まります。
しかし、スマートフォンのブルーライトはメラトニンの分泌量を減少させるといわれているので注意が必要。寝る2時間前にはスマートフォンを手放し、寝室を暗めにして、メラトニンの分泌を促しましょう。
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デリケートゾーンのケアをする
女性のデリケートゾーンは、女性ホルモン(エストロゲン)が作ってくれる乳酸菌によって弱酸性に保たれ、子宮頸がんをはじめ多くの病気の発生に関与するHPV(ヒトパピローマウイルス)感染、さらには婦人科系がんのリスクからも身を守っています。
この状態を維持するには、必要な菌は残しながら汚れを落とすことが大切。ボディソープは使わず、お湯だけで洗うか、月経用品売り場でも販売されているデリケートゾーン専用のケア用品で洗うようにしてください。
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エクオール含有サプリをとる
大豆に含まれる成分「イソフラボン」が体内で変換されてできる「エクオール」には、女性ホルモン(エストロゲン)に似た効果があり、更年期の不調改善に効果的です。
ただ、大豆製品をとってイソフラボンを摂取し、体内でエクオールに変換できる日本人女性は、約3人に1人といわれるほど少ないとされています。そのため、エクオール含有サプリメントを活用して補うのがおすすめです。
エクオールやエクオール含有サプリメントについての詳しい説明は、次の記事をチェックしてください。
エクオールを作れる人の特徴とは?エクオール検査について解説
女性ホルモンマネジメントで、いつまでもすこやかに美しく
女性ホルモンは、生涯を通じて女性の心身に大きく影響を与えるため、ライフステージごとにどう体が変化していくのかを知ることが大切です。
特に、女性ホルモンの影響を受けやすくなる更年期以降は、心身の不調を感じる人が多い世代。ここで紹介した女性ホルモンマネジメントを意識して、心と体をすこやかに保ちましょう。