マタハラから自分を守るために。知っておきたい、出産・育児に関わる法知識

「退職して育児に専念したらいいのに」
「産休中の人の仕事まで引き受けなくちゃいけないなんて...」
あなたの周りでも、こんな言葉を聞いたことはありませんか?マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠や出産、育児に関して、職場でいじめや嫌がらせに遭ったり、不当な扱いを受けたりすること。上司や同僚から嫌味を言われたり、不当に解雇されたりするなど、その事例はさまざまです。
職場の人間関係が良好でも、被害に遭う可能性はゼロとはいえません。いざというときのために、マタハラに関する基礎知識を、医療・美容記事を多く手掛ける編集者/ライターのライラさんに教わりました。
【PROFILE】
ライラさん(40歳)
医療・美容を多く手がける編集者/ライター。気になった健康法は試さないと気がすまない性質。「ストレスを明日に持ち越さない」をモットーに、日々体を動かすことを欠かさない。最近、ボルダリングに目覚めた。
それってマタハラ?働く女性が妊娠したら知っておきたいこと
大学からの友達である、カナミさんとランチに来たライラさん。妊娠8ヵ月を迎えるカナミさんですが、なんだか元気がないようです。
ライラさん 「カナミさん、お久しぶり!もうすぐ出産ね。そろそろ産休かしら?」
カナミさん 「そうなんだけど、ちょっと心配で...」
ライラさん 「どうしたの?」
カナミさん 「職場の女性の上司に『私が出産したときは、ギリギリまで働いて、すぐに復帰したわよ』なんて言われてね。育休を取ることで、周りにも迷惑をかけそうな気がして不安なのよ」
ライラさん 「カナミさん、それってマタハラよ。産休や育休は、男女雇用機会均等法や、育児・介護休業法などの法律で定められているわ。堂々としていていいのよ」
カナミさん 「そうなんだけど、私は契約社員だし、立場が弱いのよ」
ライラさん 「パートや派遣社員でも産休は取れるし、もしも、出産や妊娠を理由に、契約更新しないなんて言われたとしたら、それは不当なことなのよ。マタハラから身を守るためにも、今日はマタハラに関する基礎知識を学びましょう!」
厚生労働省が規定する2つのマタハラのタイプとは
「妊娠・出産・育児休業、介護休業などを理由とする解雇などの不利益な取扱い」は、法律で禁止されているわ。不当な扱いとは、例えば、妊娠や出産をしたことで解雇されたり、減給されたりといった扱いを受けること。マタハラにもさまざまなケースがあるけれど、大きく次の2つに分けられるの。
制度等の利用への嫌がらせ型
「制度等の利用への嫌がらせ型」とは、例えば「みんな残業しているのに、自分だけさっさと帰るなんてずるい」「男なのに育休を取るなんて信じられない」など、正当な理由で制度を利用しているにもかかわらず、周りから不満をぶつけられたり嫌がらせされたりするなど、精神的な苦痛を受けること。 解雇を示唆されたり、周りの言動によって制度の利用を断念せざるを得なくなったりする場合も、これにあてはまるわ。
状態への嫌がらせ型
「状態への嫌がらせ型」とは、妊娠や出産に伴う体調や生活の変化を理由に、不当な扱いや嫌がらせを受けること。例えば、つわりが原因で仕事が進まないことを責められたり、「うちの仕事はハードだから、子供がいたら仕事は続けられないだろうね」と退職するよう促されたり、本人の働く意欲の低下を招くような発言があてはまるわね。
マタハラは誰から受けることが多い?
日本労働組合総連合会が2017年に実施した「ハラスメントと暴力に関する実態調査」を見ると、職場でマタハラを受けた、または見聞きしたという人は21.4%。同調査によって「上司や先輩」からのマタハラが、半数以上を占めることが判明したわ。
例えば、上司に産休の報告をしたところ「正社員からパートになってもらう」と言われたり、つわりで吐き気や頭痛がするのに、会社に来るように言われたり。「医師からの診断書を提出しても、休職を受け付けてもらえない」なんていう事例もあるのよ。
上司や先輩以外の同僚から、マタハラを受けるパターンも多いみたい。産休が終わって職場に復帰してからも、子供が小さいうちは保育園のお迎えがあったり、子供が急に熱を出したりするなど、何かと手がかかるものよね。そんなときに、同僚に仕事の引き継ぎをお願いしても引き受けてくれなかったり、「あなたのせいで残業が増える」と言われたりするなど、同僚から協力が得られないのはつらいわよね。
マタハラを防ぐには?
妊産婦の働く権利は、法律によってしっかり守られているの。マタハラを防ぐためには、まず、法律の内容を知っておくことが大切よ。
男女雇用機会均等法では、妊産婦の健康を管理するための規定があるわ。
・保健指導または健康診査を受けるための時間の確保
・指導事項を守ることができるようにするための措置
・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
・紛争の解決
「指導事項を守ることができるようにするための措置」とは、妊産婦が健康診断で医師から指導を受けた場合、勤務時間の短縮や、軽易な業務への転換などを行うよう配慮すること。会社に医師からの指導事項を伝えるために、妊産婦は「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用しましょうね。
妊産婦の健康を管理するための規定は、労働基準法でも定められているのよ。
・産前・産後休業
・妊婦の軽易業務転換
・妊産婦等の危険有害業務の就業制限
・妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限
・妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限
・育児時間
・罰則
そのほか、育児・介護休業法でも、産前産後休業、育児休業、子供の看護休暇、転勤への配慮などが定められているわね。
2017年1月1日には、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法が改正され、育児休業の要件の見直しが行われたわ。それまで育児休業期間は、子供が1歳になるまでと定められていたけど、法改正後は1歳6ヵ月まで取得できるようになったの。会社から不当な扱いを受ける前に、このような法律をしっかり把握しておくことが大切ね!
もし、実際に職場でマタハラを受けたとしても、悩みを相談する場所はあるわ。味方になってくれる上司や先輩に相談してもいいし、社内にハラスメント対策室があればアクセスしてみて。自分の住んでいる都道府県の労働局でも、電話などでハラスメント相談を受け付けているわ。
悪質なマタハラを受けた場合は弁護士に相談を!
マタハラは法律違反。悪質なマタハラを受けた場合は、弁護士に相談して法的に訴えることもできるわ。その場合は、いつ、どこで、誰に、どんなことを言われ、自分にどんな被害があったかなど、詳しくメモに残しておいて。法廷で証拠として使えるように、メールを保存しておいたり、音声記録を取ったりするといいわね。 被害者として悔しい思いをしないように、自分の身はしっかり守りましょうね。
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。recommended
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