いつか子供が欲しい人の新たな選択肢、「卵子凍結保存」のギモン

妊娠・出産は、女性の人生における一大イベント。しかし、医学的な妊娠適齢期とされる25~35歳前後は、働く女性がキャリアの土台を築く時期に重なります。
子供は欲しいけどキャリアも失いたくないと、「生み時」に悩む女性も多いでしょう。今、そんな女性たちの注目を集めているのが「卵子凍結保存」です。
今回は、卵子凍結保存の条件からリスク、費用まで、気になるあれこれをオリビアさんに解説してもらいました。

【PROFILE】

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オリビアさん(43歳)

自身も妊活を経験して授かった1児を育てながら、今も現役で働く医療系ライター。さまざまな学会にも足を運び、ドクターと仲良くなるのが得意。産後に始めたヨガにハマり、最近のリフレッシュ方法はもっぱらヨガスタジオに通うこと。



卵子凍結保存をすれば、キャリアと出産を両立できる?

ある日の仕事終わり、オリビアさんは前の会社の後輩・チホさんと待ち合わせて飲みに行くことにしました。バリバリ働くチホさんの姿は、昔の自分と重なります。

オリビアさん 「相変わらず、仕事がんばってるみたいね!」

チホさん 「でも、このまま管理職を目指せといわれて悩んでるんですよ。キャリアを考えると今が一番大事な時期だけど、子供も欲しいし......。まあ、卵子を保存しとけばいいかなと思ってはいるんですけど」

オリビアさん 「確かに、卵子凍結保存は選択肢のひとつね。でも、それについてよく調べた?」

チホさん 「大きい病院でお願いすれば大丈夫なんじゃないですか?卵子を取って保存するだけですよね」

オリビアさん 「凍結保存した卵子が受精できる保証はないのよ。それに、高齢出産のリスクは変わらないわ。知っておいてほしい卵子凍結保存の基礎知識、説明しておくわね!」

そもそも、卵子凍結保存とは?

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卵子凍結保存とは、将来的な妊娠や出産に備えて、卵子が老化したり減少したりする前に体外に取り出して、冷凍保存しておく方法

元々は、卵巣機能への影響が避けられない化学療法や抗がん剤治療のダメージから卵子を守り、治療後の妊娠・出産の可能性を残す方法として認められたものですが、近年は「自分らしく生きる」ことを追求する女性の選択肢としても注目されるようになりました。

「将来的には子供が欲しいけど、今はキャリアを優先したい」「パートナーが現れたときに備えたい」といった理由で、卵子凍結保存を検討する人も増えています。

卵子凍結保存を行う条件と流れ

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日本生殖医学会は、卵子の採取については40歳以上、凍結保存した卵子の使用については45歳以上に対して「推奨できない」とする方針を提示しています。卵子凍結保存を行う際は、こうした指針に基づいて、各施設が設定している年齢などの条件のほか、婦人科検診をクリアする必要があります。

施設によって差異はありますが検査で問題がなければ、おおよそ以下の手順で卵子の採取と保存を進めていきます。

1. 卵巣を刺激して排卵を促す

一度の手術でたくさんの卵子を採取できるよう、注射や内服薬を使って卵子を成長させます。

2. 卵子を採取する

腟から卵巣にストロー状の針を刺し、卵子を1つずつ採取します。

3. 卵子を保存する

採取した卵子を液体窒素に浸して凍結し、保存します。

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なお、卵子凍結保存は自費診療のため、診察から採卵、保存まで、総額60万~100万円ほどかかります。保存期間を1年延長するごとに更新料がかかる場合もあるので、各施設に確認しましょう。

リスクを十分検討した上で決断を

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「自分で生み時を決めたい」という女性にとって、卵子凍結保存は生き方の可能性を広げる選択肢のひとつです。しかし、日本産科婦人科学会は、卵子を採取する際に卵巣に傷がつくなど体に負担がかかること、凍結保存した卵子を使っても高齢出産のリスクは変わらないことなどを理由に、健康な女性の卵子凍結保存は推奨しないとしています。

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また、質の高い卵子を保存したからといって、必ず妊娠できるとは限りません。ホルモン剤で卵巣を刺激することによる副作用の懸念もあります。卵子凍結保存は決して万能ではないという事実を踏まえ、起こりうるリスクを十分検討した上で決断することをおすすめします。


※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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