海外旅行前に要チェック!トラベルクリニックの役割と予防接種の種類

2019年のゴールデンウィークは10連休となり、海外旅行を計画している方も多いと思います。観光先やアクティビティの計画も大切ですが、忘れてはならないのがワクチンの接種。海外では、日本にはない感染症が発生・流行している場合があるからです。

接種すべきワクチンは、渡航先や滞在期間によって異なります。海外旅行時のワクチン情報を得ることができるトラベルクリニック(渡航外来)の役割や、一般的なワクチンの種類について、医療・美容記事を多く手掛ける編集者/ライターのライラさんに教わりました。



【PROFILE】

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ライラさん(40歳)

医療・美容を多く手がける編集者/ライター。気になった健康法は試さないと気がすまない性質。「ストレスを明日に持ち越さない」をモットーに、日々体を動かすことを欠かさない。最近、ボルダリングに目覚めた。

短期の海外旅行でも予防接種すべき?

ある日の昼下がり、ライラさんはライター仲間とカフェでランチ中。食後の紅茶をいただきながら、ゴールデンウィークの予定について話し合っています。

ななみさん 「ライラさんはゴールデンウィークどうするの?」

ライラさん 「最近、体がなまっているから、ジムで思いっきり体を動かす予定よ。ななみさんは?」

ななみさん 「私は連休が取れたから、海外旅行をする予定なの」

ライラさん 「いいわね!それなら、そろそろワクチン接種も済ませないとね」

ななみさん 「えっ、数日の旅行でもワクチンが必要なの?どこで打ってもらえばいいのかしら」

ライラさん 「海外では、感染力の強い病気が局地的に流行している場合もあるの。トラベルクリニックで相談すれば、渡航先の感染症や医療事情の情報を教えてもらえるわよ。トラベルクリニックの役割や、代表的なワクチンの種類について、簡単に説明するわね!」

トラベルクリニックの4つの役割

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トラベルクリニック(渡航外来)は、海外へ渡航する前や帰国後に受診する専門外来のことよ。日本国内のトラベルクリニックの一覧は、「日本渡航医学会」のウェブサイトに掲載されているから、最寄りのトラベルクリニックを探すときは参考にしてね。2019年1月22日時点で、37都道府県125施設が掲載されているわ。

トラベルクリニックには、大きく分けて次の4つの役割があるの。



1 ワクチン接種とワクチン接種証明書の作成

トラベルクリニックで相談すれば、渡航先に応じたワクチンを接種してもらえるわ。ワクチン接種は原則自由診療となり、公的医療保険の適用対象にはならないから気を付けて。

ワクチン接種証明書の提示が求められる国に渡航する場合は、証明書も発行してもらえるわよ。



2 渡航先の感染症や医療事情の情報提供

トラベルクリニックでは、渡航先の国でどんな感染症が流行しているか、その国の医療事情などの情報提供も行っているのよ。

どのワクチンを接種すればいいかわからなければ、渡航先や滞在日数についてトラベルクリニックで相談してみて。予防接種と併せて、渡航先で病気にかからないための健康指導も受けられるから安心ね。

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3 予防内服薬の処方

マラリアや高山病の危険性がある地域に渡航する場合は、トラベルクリニックで内服薬を処方してもらえるわ。登山をする予定がなくても、標高が高い場所にある空港や観光地は案外多いのよ。



4 帰国後に症状がある人への診療

トラベルクリニックでは、海外から帰国後に症状が出た人への診療も行っているわ。もしも帰国後に、発熱や発しん、体の痛みなど、気になる症状が出たら、なるべく早めに受診してね。

日本国内で行われている一般的な予防接種

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ここからは、日本国内で行われている一般的な予防接種について紹介するわ。推奨されるワクチンの種類は、渡航先や滞在日数によって違うから、詳しくはトラベルクリニックで確認してね。



黄熱

黄熱は、蚊によって媒介されるウイルス性の感染症。アフリカや南米の熱帯地域に渡航する際は、ワクチンを接種するのが望ましいわね。入国時や乗り継ぎ時に黄熱予防接種証明書を要求する国もあるわ。黄熱予防接種証明書は、接種後10日目から生涯有効よ。



A型肝炎

A型肝炎は、アジア、アフリカ、中南米に広く存在し、食べ物から感染する病気よ。発症すると倦怠感が強くなり、重症化すると1ヵ月以上の入院が必要になる場合もあるわ。ワクチンは2~4週間隔で2回の接種が必要。60歳以下の人は抗体保有率が低いため、接種が望ましいわね。



B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされるウイルス性肝炎よ。母親から新生児への感染以外では、性行為(唾液や体液の濃厚接触)を通じた感染がおもな原因となっているわ。

健康な成人の場合は、ほとんどが一過性感染で、その中で劇症化して死亡する例は約2%といわれているわ。ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに20~24週間後に1回接種が必要よ。



破傷風

破傷風菌は世界中の土壌に存在していて、傷口から感染するわ。ケガをする可能性のあるアクティビティをする場合や、1ヵ月以上の滞在の場合は、接種が望ましいわね。

破傷風ワクチンは3種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき)に含まれているから、定期予防接種で12歳のときに受けていれば、20代前半までは免疫があるため接種は不要よ。

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狂犬病

狂犬病は、犬だけでなく、キツネやアライグマ、コウモリなどに噛まれることによって感染の可能性がある感染症よ。発病すると、ほぼ100%死亡するといわれているわ。長期滞在や、動物と接触する可能性のある場合は接種が望ましいわね。

ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに6ヵ月から12ヵ月後に3回目の接種が必要。事前にワクチンを接種していても、噛まれた場合は追加接種が必要だから、必ず医療機関を受診しましょう。



ポリオ(急性灰白髄炎)

ポリオは、ポリオウイルスによって急性の麻痺が起こる病気よ。WHO(世界保健機関)では、患者が発生している国に渡航する場合、過去にポリオの予防接種を受けていても追加の接種をすすめているわ。

日本では2012年以降、生後3ヵ月から12ヵ月のあいだに、不活化ポリオワクチン(IPV)を3回接種する定期接種が導入されたの。それより前は、生後3ヵ月から12ヵ月のあいだに、経口生ポリオワクチン(OPV)を2回投与していたのよ。

ところが、1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)生まれの人が接種したポリオワクチンは、抗体の獲得率が悪く、ポリオに対する免疫が低いことがわかっているわ。生まれ年がこれらの年代にあたる人は、渡航先がポリオの流行国でなくても、追加接種を検討する必要があるといえるわね。



日本脳炎

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることによって起こる急性脳炎。死亡率が高く、後遺症が残る場合も多いそうよ。

流行地域は、東アジアから東南アジア、南アジアにかけての温帯・熱帯地域。ワクチンは1~4週間隔で2回接種し、1年後に追加接種をすることで基礎免疫が完了するわ。



麻疹(はしか)・風疹

麻疹(はしか)・風疹は、感染力の強い急性のウイルス性発疹性感染症よ。通常は自然に治るけれど、まれに脳炎や肺炎になって入院が必要になることもあるの。現在は、定期の予防接種で2回接種が行われているわ。

WHOでは、接種していない人や1回しか接種していない人は、海外渡航前に接種の検討をすすめているわね。

出発3ヵ月以上前から計画的なワクチン接種を

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海外出張の場合は、会社が費用を負担してくれるけど、個人の負担でトラベルクリニックを利用する人は日本ではまだ少ないの。でも、自分の体を守るだけでなく、ほかの人への感染を防ぐためにも、とても大切なことなのよ。

ワクチンの種類によっては、期間を空けて数回接種しなくてはいけないものもあるから、ギリギリではなく出発3ヵ月以上前から計画しておきたいわね。トラベルクリニックがない県もあるから、その場合は検疫所や近くの医療機関で相談しましょう。

【トラベル外来のあるクリニック】

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東京ミッドタウンクリニック(東京・六本木)

内科、婦人科、神経内科(頭痛・めまい)、リウマチ科、整形外科など患者様のニーズに応じた診療科を多数設置。風邪や消化器疾患、慢性疾患、健診の二次検査など幅広く対応しています。トラベル外来では、ワクチン接種だけでなく、渡航先での食事や過ごし方のご注意点、そして帰国後に気をつけるべき点などもアドバイスしています。渡航先や時期によってワクチンの種類や対策法も異なります。ワクチンの効果が出るまでに2ヶ月程度かかるものもありますので、早めに相談ください。

〒107-6222 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー6F
TEL. 03-5413-0080(代)
※診療スケジュールは科によって予約の要不要、受付時間が異なりますので、詳しくはHPをご覧ください。
東京メトロ日比谷線/都営地下鉄大江戸線「六本木駅」より直結
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