更年期の基礎体温はどう変わる?高温期と低温期の変化と閉経の関係性

基礎体温を記録する習慣は、体の変化を知るという意味でも役に立ちます。特に、女性ホルモンが減少し始める30代後半以降の女性にとっては、更年期のサインにいち早く気付くことができるというメリットも。
そこで、更年期を迎える女性の基礎体温や生理周期の変化、閉経と基礎体温との関係性、基礎体温の記録が更年期の早期発見につながる理由などについて解説します。

[2021年5月27日更新]

更年期の基礎体温はどう変化する?

加齢による女性ホルモンの減少や卵巣の働きの低下などが見られる更年期は、基礎体温にも変化が表れる時期です。

■年代別、基礎体温の変化

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20代から30代半ば頃まで、低温期と高温期が0.5℃くらいの差できれいに二相に分かれていたものが、30代後半以降は高温期が短くなったり、低温期が長くなったりし始めます

また、低温期から高温期へと切り替わる際も、20~30代半ばまでは排卵後1~2日で急激に体温が上がっていたものが、30代以降ではなだらかに上昇していくようになります。さらに、高温期の体温が不安定になったり、低温期と高温期に明確な差がなくなったりすることもあるでしょう。

そして、多くの人が50歳前後で迎える閉経後の基礎体温は、高温期がなくなって低温期のみになり、安定した状態で推移します。

そもそも基礎体温とはどういうもの?

基礎体温とは、朝起きて体を動かす前に測る、安静時の体温のこと。毎日計測してグラフにすることで、自分が今「高温期」にいるのか、「低温期」にいるのかを判断することができます。正常な場合、女性の体温は0.3~0.5℃のあいだで周期的に変化します。

こうした体温の変化には、女性の体内で分泌されている女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロンが関係しています

低温期にはエストロゲンの分泌量が増え、ピークに達すると排卵が起きます。排卵を境に、今度はプロゲステロンの分泌量が増えていき、基礎体温は上がって低温期から高温期へ。このサイクルを約2週間ごとに繰り返すため、基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれていれば、排卵がきちんと行われているといえます。

更年期に起こる生理周期の変化

更年期になると、基礎体温のほかに生理周期にも変化が表れます。周期が短くなったり長くなったり、これまでと違う周期が続くようであれば、それは更年期の始まりのサインかもしれません

<更年期の生理周期>
・~40代前半

生理周期が28日周期だった人は、26日周期くらいに短くなります。経血の量も次第に少なめに。やがて、45歳くらいを目安に、排卵を伴わない月経が増えていきます

・40代後半
生理周期が定まらなくなって、1ヵ月に1回だったものが2ヵ月に1回、4~5ヵ月に1回と、次第に間隔が空くようになります。

・50歳前後
生理周期が長くなり、1年以上生理が来なければ閉経となります。閉経前後は、大量出血したり、生理とはいえないような少量の出血が続いたりといった不安定な出血を伴うこともあります。

基礎体温を知っておくメリット

普段から基礎体温をつけておくと、自己管理の目安になるだけでなく、生理周期が乱れたり不正出血が起きたりして婦人科の診察を受ける際にも役立ちます。ここでは、基礎体温をつけるメリットを5つ紹介します。


1 病気発見の手助けになる

基礎体温をつける際、体温のほかに生理の周期や出血量、おりものの量、便の状態、肌の状態や体調なども併せて記録しておくと、ちょっとした変化から黄体不全や子宮内膜症といった病気のサインを発見できる可能性が高まります。不正出血には、子宮筋腫や子宮体がん、子宮頸がんが隠れている疑いもあるので、早めに婦人科を受診してください。


2 早発閉経の兆候に気付きやすい

基礎体温の動きから、日本人の平均閉経年齢より早い40歳未満で閉経する「早発閉経」の兆候も早期に発見することができます。早発閉経になると、ほてりやイライラ、めまいなどの若年性更年期障害が現れるほか、骨粗しょう症や動脈硬化のリスクも高まるため、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。

<こちらもCHECK>
30代で生理が来なくなる?「早発閉経」の原因と対策


3 医師への症状の説明がしやすい

更年期症状の疑いで婦人科を受診する際、「いつ頃から、どんな変化があったのか」をわかりやすく説明するためにも、基礎体温の記録は有用です。

基礎体温が不安定になったからといって基礎体温の計測をやめてしまうのではなく、記録し続けることをおすすめします。

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4 心身のリズムが把握できる

基礎体温は、体や心のリズムと密接に関わっています。イライラする、落ち込むといった心の不調、便秘や肩こり、乳房の張り、吹き出物が出やすくなるといった体の不調が、ひと月の中でいつ頃起きているのかがわかれば、排卵や生理開始のタイミングを目安にしてトラブルに備えることができるでしょう。


5 太りやすい時期がわかる

高温期は、水分を蓄える作用があるプロゲステロンの影響でむくみやすくなります。食欲が増すほか、メンタルの不調から過食ぎみになる時期でもあるので、ダイエットには不向き。

効果的にダイエットをするなら、エストロゲンが分泌される低温期がおすすめです。

監修者・婦人科医の吉形玲美先生より

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基礎体温は、ホルモンの影響を受けやすい女性にとって、体の中で起きていることを教えてくれる重要なバロメーター。特に、女性ホルモンが減少し始める30代後半以降は、基礎体温の変化から早めに更年期のサインをキャッチすることで、自分に合った対策ができ、すこやかな毎日を過ごせるでしょう。

婦人科の診療を受ける際の判断材料として、より的確な治療を選択する手助けにもなりますので、自分の体と向き合うために基礎体温をつけることを習慣化してください。


SUPERVISERこの記事を監修した人

吉形先生

PROFILE

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。

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「レミ先生の診療日記」監修の吉形玲美医師も診療をおこなっているハマサイトクリニック。内科、婦人科などの外来診療から、定期健康診断・人間ドック、子宮がん検診、乳がん検診まで幅広い診療を展開中。特に女性のライフステージに合わせた健診メニューが充実。その世代の特徴を踏まえた検査治療、予防対策の相談が可能です。

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