
「基礎体温」というと、妊娠に向けて排卵の有無やタイミングをチェックするというイメージが強いかもしれません。ですが、実は基礎体温をつけることで気付くことのできる体の変化はたくさんあります。特に、女性ホルモンが減少し始める30代後半以降の女性にとっては、更年期のサインにいち早く気付くことができるというメリットも。
そこで今回は、ダイアナさんが更年期の基礎体温の特徴や、基礎体温から推測できる体の不調や病気の可能性について解説します!
【PROFILE】

ダイアナさん(51歳)
更年期をテーマにした記事を多く手掛け、さまざまな女性の悩みにも耳を傾けてきた医療ジャーナリスト。趣味はジャズ鑑賞、乗馬。安らぎのひと時は、なじみのカフェでお茶をすること。
更年期に入ってからも基礎体温チェックは必要?
休日を利用して、友人のカホさんと1泊旅行にやってきたダイアナさん。明日の予定に備えて寝る準備をしていたところ、カホさんの枕元に体温計が置いてあることに気付きました。
ダイアナさん 「カホさん、基礎体温をちゃんとつけているのね!」
カホさん 「そうなんです。若いころからの習慣で」
ダイアナさん 「それはいいことね。基礎体温をつけていると、体温の変化によって排卵のタイミングや生理の周期、ホルモンバランスの状態がわかったりと、たくさんのメリットがあるから」
カホさん 「でも、40代に入ってからは、以前ほど体温に変化が見られなくなってきて、毎日つけている意味があるのかなと思っているんです」
ダイアナさん 「いやいや、やめちゃダメよ。基礎体温をつけておくと、そこから更年期に入ったかどうかもチェックできるんだから!」
そもそも基礎体温とはどういうもの?
基礎体温とは、朝起きて体を動かす前に測る、安静時の体温のことを指すの。毎日計測してグラフにすると、女性の体温は0.3~0.5℃のあいだで周期的に変化することがわかるわ。それによって、自分が今「低温期」にいるのか、「高温期」にいるのかが判断できるようになるの。
低温期と高温期の境目は何かといえば、排卵。例えば、生理が28日周期の場合、生理初日から排卵までの約2週間は低温期で、排卵が起こると、今度は低温期より基礎体温が高い高温期が約2週間続き、それを繰り返していくのが正常な状態よ。
こうした体温の変化が起こる理由は、女性ホルモンの分泌が関係しているの。女性の体内ではエストロゲンとプロゲステロンが分泌されていて、低温期にはエストロゲンの分泌量が増えていき、それがピークに達すると排卵が起きる。そして排卵後、今度はプロゲステロンの分泌量が増え、基礎体温が上がるのが一般的よ。基礎体温が、低温期と高温期の二相に分かれていれば、排卵がきちんと行われていると考えていいわ。
更年期の基礎体温はどう変化する?
加齢による女性ホルモンの減少や卵巣の働きの低下などによって、基礎体温に変化が見られるようになってくるわ。
例えば、20~30代半ば頃までは、低温期と高温期が0.5℃くらいの差できれいに二相に分かれていたのが、30代後半以降になると高温期が短くなったり、低温期が長くなったりするといった変化が起こり始めるように。また、低温期から高温期に切り替わる際も、20~30代半ばまでは排卵後1、2日で急激に体温が上がっていたものが、30代後半以降ではなだらかに変化するようになるのよ。
そして、50歳前後に多くの人が迎える閉経後の基礎体温は、高温期がなくなり、低温期のみの安定した状態になるわ。
基礎体温を知っておくことのメリット
婦人科に行ったときに、先生から「基礎体温はつけていますか?」と聞かれたことがある人も多いんじゃないかしら。実際、基礎体温をつけておくことで、診察や治療に役立つことはもちろん、普段の自己管理の目安になるなど、メリットはたくさんあるのよ。
ここでは基礎体温をつけるメリットを5つ紹介するわね。
1 排卵日と生理のタイミングがわかる
低温期と高温期の差がきちんとあれば、正常に排卵している証拠。さらに、低温期と高温期の周期から、生理が始まるタイミングを予測することもできるわ。
もしも、基礎体温の値に変化がなく、低温状態が続く場合は無排卵月経の可能性もあるので、早めに婦人科に相談しましょうね。
2 心身のリズムが把握できる
基礎体温をつけることで、ひと月のあいだに起こる体や心のリズムがわかりやすくなるわ。イライラする、落ち込むといった心の不調、便秘や肩こり、乳房の張りなどの体の不調が、それぞれいつごろ起こるかの目安になるわよ。
3 肌トラブルが起こりやすい時期がわかる
高温期の中でも、特に生理前の1週間は皮脂の分泌が増え、吹き出物ができやすくなる傾向が。よって、この時期は甘い物やアルコールを控えめにすると、肌トラブルを回避しやすいわよ。
4 太りやすい時期がわかる
高温期に分泌されるプロゲステロンには水分を蓄える作用があるため、体がむくみやすくなるの。さらに、この時期は食欲が増すほか、イライラしやすいといったメンタルの不調から過食に走りがちになるので、ダイエットには不向きな時期といえるわ。
逆に、エストロゲンが分泌される低温期は食欲も落ち着くので、ダイエットも効果的に行えるわよ。
5 病気発見の手助けになる
基礎体温をつける際、体温のほかに生理の周期や出血量、おりものの量、便の状態、肌や体調の変化なども併せて記録しておくのがおすすめ。なぜなら、ちょっとした変化が病気のサインである可能性もあるから。
例えば、高温期が極端に短い場合や、高温期の途中で一時的に基礎体温が下がるといった場合は、黄体機能不全の疑いがあるの。ほかにも、生理が始まったのに高温期が続いたり、生理が終わっても下腹部が痛んだり、排便痛が生じる場合は子宮内膜症の可能性も。
さらに、不正出血には、子宮筋腫や子宮体がん、子宮頸がんの疑いも隠れているわ。少しでも気になる症状があったら、早めに婦人科の診察を受けましょうね。
基礎体温をつけて自分の体と向き合いましょう
ホルモンの影響を受けやすい女性にとって、基礎体温は体で起こるさまざまなことを教えてくれる重要なバロメーター。特に女性ホルモンが減少し始める30代後半以降は、基礎体温の変化から更年期のサインを早めにキャッチすることで、自分に合った対策をとることができるわ。
さらに、婦人科の診療を受ける際は診断材料にもなるので、より的確な治療を選択する手助けにもなるのよ。年齢とともに少しずつ変わっていく自分の体と向き合うためにも、基礎体温をつけることを習慣化しましょうね。

「レミ先生の診療日記」監修の吉形玲美医師も診療をおこなっているハマサイトクリニック。内科、婦人科などの外来診療から、定期健康診断・人間ドック、子宮がん検診、乳がん検診まで幅広い診療を展開中。特に女性のライフステージに合わせた健診メニューが充実。その世代の特徴を踏まえた検査治療、予防対策の相談が可能です。
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