尿漏れや頻尿の原因?「骨盤底筋群」の重要性と鍛え方

咳やくしゃみをしたり、重い物を持ち上げたりした拍子に起こる尿漏れや、頻繁に尿意を催す頻尿の悩みは、30~40代の女性に多いといわれています。悪化するとトイレが気になって外出がままならなくなるなど、生活の質が大きく低下することも...。

こうしたトラブルの原因として、近年注目を集めている「骨盤底筋群」。骨盤底筋群は女性の生殖器を支える大切な部分ですが、ケアをしないと緩みやすく、悪化すると子宮や膀胱が外に押し出され、さまざまなトラブルを引き起こすこともあります。

ここでは、女性が一生を健康に過ごすために欠かせない骨盤底筋群の重要性とその鍛え方について、元助産師のリタさんに教えてもらいましょう。



【PROFILE】

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リタさん(53歳)

現在は看護師として活躍する元助産師。助産師時代には数多くの出産に携わった経験を持つ、出産のスペシャリスト。産前・産後のママの良きアドバイザーとして、今もたくさんの人たちから相談を持ち掛けられている。

骨盤底筋群の衰えは、出産前からのケアがものをいう

妊娠中の姪っ子・ユカさんの自宅を訪れたリタさん。初めての妊娠・出産ということで不安も多いらしく、家に着くなりリタさんは質問攻めになっているようです...。

ユカさん 「今のところ順調に育っているようなんですが、ちょっとした不調も気になっちゃって」

リタさん 「初めてのことで、さらに高齢出産となると気になることも多いわよね」

ユカさん 「そうなんです!でも出産して終わりではないから、その先の子育てのことも考えると、赤ちゃんに会えるのが楽しみな反面、心配事も多くて...」

リタさん 「そうよね。出産前の早めのケアで産後のトラブルを防げることもあるから、今はそれを意識したほうがいいわ。まず、骨盤底筋群を鍛えましょう!そこが衰えてしまうと、産後だけじゃなくその後の人生にも関わってくるの」

ユカさん 「骨盤低筋群?テレビや雑誌で名前は見たことがあるけど、それが出産と関連するの?詳しくおしえて!」

骨盤底筋群の働きと劣化の影響

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骨盤底筋群は、恥骨、坐骨、尾骨で構成される骨盤の底を覆うようにある複数の筋肉のこと。上向きにした両手のひらをお尻の下に置いて座ったとき、手のひらに感じる硬い骨と骨のあいだにあるのが骨盤底筋群です。

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この骨盤底筋群は、健康や美容はもちろん、暮らしの質を保つためにも、とても重要な役割を果たしているんです!



役割1 膀胱や子宮などが下がらないように支える

ひとつは、膀胱や子宮、直腸といった内臓が下がらないよう、下からハンモックのように支えること。骨盤の真下に骨はないので、骨盤底筋群が機能しなければ姿勢は崩れ、お腹のたるみにもつながります。



役割2 排泄をコントロールする

もうひとつは、排泄のコントロール。骨盤底筋群が閉まることで便や尿は中にとどまり、緩めることによって外に排出されます。骨盤底筋群が十分に機能しなくなると、尿漏れや頻尿になるのはそのためです。さらに悪化すると、骨盤の中の臓器が外に押し出される「骨盤臓器脱」になり、排便・排尿障害のほか、股のあいだの異物感・不快感などに悩まされるようになります。

よく聞く産後の尿漏れも、分娩時に骨盤底に大きな負荷がかかり、十分に収縮できなくなることが原因。通常は骨盤底が回復してくる2~3ヵ月ほどで自然に収まるので、それまでは専用パッドを当てるなどしてケアしましょう!

出産以外でも骨盤底筋群は衰える

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骨盤底筋群は、出産で伸びたり断裂したりするほか、年齢を重ねるごとに衰えていきます。その存在を普段意識することが少ない分、腕や足よりも衰えるスピードが速いので要注意。閉経して卵巣からの女性ホルモンの分泌が少なくなると、衰えはさらに加速して尿漏れや尿失禁が起きやすくなります。

しかも、産後の一過性の衰えと違い、自然な回復は見込めません。尿漏れや尿失禁が頻繁で症状が深刻な場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

とはいっても、骨盤底筋群の衰えに伴う症状はデリケートな問題だけに、医師はもちろん、家族にも打ち明けにくいものでしょう。できれば、衰え始める前に予防するか、緩み始めた段階で状態を改善したいですよね。まずは、自宅でできる簡単なトレーニングから始めてみましょう!

骨盤底筋群を鍛えるトレーニング

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骨盤底筋群を鍛えるには、肛門と腟、尿道を引き締めて緩めるトレーニングが有効です。私がおすすめする方法を教えましょう!

よく知られているのは、「ケーゲル体操」という、ひざを立てて仰向けになり、お腹とお尻をキュッと引き締めて5秒ほど維持してから緩めるエクササイズ。

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これは、仰向けにならなくても、椅子に座ってでも、四つん這いの姿勢でも、立ったままでもOK。骨盤底筋群の位置を意識しながら行うと、より効果的です。夜寝る前やテレビを見ているときなどでも気軽にできるので、日常生活に取り入れやすいと思いますよ。なお、妊婦の方は腰に負荷が掛かり過ぎてしまうので、腰の下に枕を置いて行ってください。

もうひとつおすすめなのが、トイレに行ったときにできるトレーニングです。尿を3秒間出したら一度止め、5秒待ってから普通に排尿するだけなので、とても簡単!毎回、トイレに行く度にこれを繰り返すだけで、確実に予防につながります。

早めのケアで骨盤底筋群を守ろう

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骨盤底筋群は、女性の泌尿器関連の疾患の多くに関わる部位であり、女性の健康な一生に欠かせない存在です。骨盤底筋群の衰えは、姿勢やプロポーションを低下させる原因にもなるので、美しく、ヘルシーに年齢を重ねたいなら早めのケアが肝心

ここで紹介したトレーニングをうまく取り入れて、骨盤底筋群の機能を維持しましょう。便秘で激しくいきんだり、骨盤底筋群を意識せずに腹筋を鍛えたりする行為は骨盤底筋群に負担をかけてしまうので、腹圧をかける動作には注意しましょうね!



この記事を監修した人

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野村 愛(のむら あい)さん

周産期医療センター勤務後、離島で出産前の妊婦健診、産後のお母さんケアなどを担当。現在は、ミッドタウンクリニック名駅の看護師などを経て、現在は再び助産師として活躍中。





ミッドタウンクリニック名駅

IMG_5219.jpg JR名古屋駅徒歩1分。JPタワー名古屋5階、立地・快適性を追求した男女別の健診施設。「女性に優しい」をコンセプトに、女性専用エリアやパウダールームの設置など様々なホスピタリティを用意。女性特有の検査には女性医師・スタッフが対応します。また、外来診療もおこなっているため、風邪などの疾患や身体の不調なども相談可能です。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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