大人がかかると怖い「風疹」「麻疹」、その違いや症状、治療法とは?

コラム・心地よいわたし

近年、流行している風疹と麻疹(はしか)。子供の病気と思われがちですが、大人が感染する可能性もゼロではありません。特に、妊婦が感染した場合は重篤な症状を引き起こすことも。こうしたリスクは知っていても、発熱と発疹という類似した症状を持つ風疹と麻疹について、その違いがわからないという人も多いと思います。

そこで今回は、東京ミッドタウンクリニック ・感染症専門医の源河いくみ先生に、風疹と麻疹について話を伺いました。

感染症の中でも特に感染力の強い風疹と麻疹

――ともに発疹を伴う風疹と麻疹ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

風疹は「風疹ウイルス」、麻疹は「麻疹ウイルス」によって引き起こされる感染症です。どちらも発疹が出ることは同じですが、初期症状や発疹の形状、出方には異なる点があります。

――では、まずはそれぞれの特徴を教えてください。

風疹は飛沫感染で、14〜21日間の潜伏期を経て発症します。発熱や淡い紅色の小さい発疹が出るほか、人によっては耳介後部(耳の裏側)や後頭部、頸部のリンパ節の腫れが見られることもあります。

一方、麻疹の感染力は非常に高く、空気感染、飛沫感染、直接接触感染があります。潜伏期はおよそ10〜12日。発疹が出る前にカタル期と呼ばれる初期段階があり、最初に38℃前後の発熱が3日前後続き、その熱が下がったころ、口腔内の粘膜に白い小さな斑点(コプリック斑)が出ます。このカタル期を経た後に再び高熱が出て、発疹も伴うのが特徴です。

発疹はまず頸部や額から出始め、徐々に顔面、腹部などの体幹部、上腕へと拡大。その翌日には、全身にまで広がってしまいます。発疹の形状も、最初は赤くてポツポツと単体だったものが、徐々に発疹がくっついて斑状となり、色も暗赤色へと変化していくのが一般的です。

とはいえ、病院で受診されるタイミングによってはどちらも似た症状が見られるため、風疹なのか麻疹なのか、はっきりとした診断は医師でも難しいというのが正直なところです。

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麻疹発症から3日後の腹部の皮膚
出典元:Centers for Disease Control and Prevention

妊娠中の女性は要注意!

――医師でも判断しにくいという風疹や麻疹ですが、それらの疑いで病院に行った際にはどのような診察が行われるのでしょうか。

問診では症状の経過、風疹や麻疹の患者さんとの接触歴や、予防接種歴の有無を確認します。続いて発疹の状態や、風疹で出やすいリンパ節の腫れ、麻疹に特徴的なコプリック斑がないかなどを診ますが、これらの問診と診察だけで判断がつかないときは、血液検査を実施します。

――風疹または麻疹と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。

風疹や麻疹には、特別な治療はありません。そのため、症状をやわらげる対症療法を行います。また、麻疹の場合に中耳炎や肺炎といった細菌性合併症を起こした場合は、抗菌薬を処方します。

――風疹や麻疹は大人になってからかかるとさまざまなリスクがあるといいます。具体的にはどういったことでしょうか。

風疹で特に気を付けなければいけないのが、妊婦さんです。もし妊娠中に感染した場合には、風疹ウイルス感染が胎児にまで及び、先天性心疾患、難聴、白内障、色素性網膜症といった先天性風疹症候群が出現する可能性があります。また、新生児期には低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、黄疸、髄膜脳炎などの状態になることもあります。さらに、大人が風疹にかかると基本的に予後は良好ですが、血小板減少性紫斑病、急性脳炎といった合併症を引き起こしたり、関節炎を伴ったりすることがあります。

一方、大人が麻疹にかかった際には、肺炎や中耳炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎などの重篤な合併症にかかるリスクがあります。

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一番の予防は「ワクチン接種」

――風疹や麻疹を予防するには、どういった対策が有効でしょうか。

どちらもワクチンを接種することが最適です。ワクチンは生涯のうちに2回接種するのが有効で、現在は1歳以降に2回接種することになっていますが、年代によっては1回しか受けていないこともありますので、母子手帳などで自分が何回受けているかを確認してみてください。もし、1回しか接種していないようでしたら、新たに接種することをおすすめします

――予防接種を受けるときに気を付けるべきことはありますか?

風疹と麻疹は、ともに生ワクチン(※)であるため、妊娠中の方は接種することができません。また、妊娠していない場合でも、先程お話ししたような胎児への影響を考え、接種後2ヵ月のあいだは避妊が必要になります。

※生ワクチン...病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱め、病原性をなくしたものを原材料として作られるワクチン。毒性の弱まったウイルスや細菌が体内で増殖して免疫力を高めるため、接種回数が少なくて済みます。

ワクチン接種の副反応として、風疹や麻疹にかかったような発疹やリンパ節の腫れなどが出ることがありますが、自然に軽快するので心配はいりません。とはいえ、たまたまワクチンが合わず、じんましんや呼吸困難など、強いアレルギー反応が出る可能性もあります。こうしたケースは非常にまれですが、念のため接種後、30分くらいは体調の様子を見るようにしてください。

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――近年、風疹や麻疹が大流行というニュースをよく目にします。流行のきっかけになる原因には、何があるのでしょうか。

昨年からの風疹患者の多くは30〜50歳代の男性です。その理由としては、この年代の男性は風疹ワクチンの接種が十分でないことが多く、風疹患者が発生すると感染しやすいためと考えられます。

一方、麻疹のほうは、日本国内土着の麻疹ウイルスが2013年から出現していないため、2015年にWHOから麻疹撲滅国に認定されました。それにもかかわらず最近でも流行しているのは、まだ撲滅していないインドネシアやフィリピンといった国からウイルスが持ち込まれたケースが多くなっているためです。

特にフィリピンでは、現在麻疹が流行しており、海外から日本に入ってくる麻疹患者の感染国もフィリピンが多くなっていますので、フィリピンへ渡航の際は事前に麻疹の予防接種を受けることをおすすめします。WHOによると2019年5月現在はヨーロッパ(特にウクライナ)でも流行しています。海外旅行時に渡航予定国の情報を確認するようにしてください。

――風疹も麻疹も感染力が強いとのことでしたが、例えば、同じ職場に罹患した人がいた、子供が感染したなど、自分も感染の疑いがある場合、発症させないためにできることはありますか?

麻疹にかかった方と接触した場合には、72時間以内に麻疹ワクチンを接種することで発症を予防できる可能性があります。
とはいえ、一番大切なのは感染しないこと。風疹も麻疹もワクチンで予防できる病気です。ご自身の接種歴を把握し、受けていない方はなるべく早く接種するようにしてください。


お話を伺ったのは・・・
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源河いくみ(げんかいくみ)医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本感染症学会 感染症専門医、国際旅行医学学会認定医
専門分野:内科、感染症
日本大学医学部卒業後、国立国際医療研究センターでの感染症科・渡航者外来勤務を経て2007年より東京ミッドタウンクリニック・トラベル外来医師として活躍中。渡航前後の健康診断から予防接種、予防薬の処方などの渡航者の健康管理を日々サポートしている。


※掲載している情報は、記事公開時点のものです。

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