高齢出産は母乳が出にくいってホント?気になる年齢と母乳の関係

女性の社会進出や不妊治療の進化などを背景に、増加を続ける高齢出産。今や、40歳を超えての妊娠・出産も珍しくなくなりました。しかし、高齢出産には、母体や胎児へのリスクのほか、産後の体力面や若いママとの人間関係など、さまざまな不安が付き物であることには変わりありません。

そうした不安のひとつが、「母乳が出にくい」というもの。母親学級などで母乳のメリットを聞く度に母乳育児への憧れが強まる一方、「無理かもしれない」という心配も募ってつらい...という方もいるでしょう。
果たして、母乳が出る量と年齢は比例するのでしょうか。元助産師で看護師のリタさんに教えてもらいました。

【PROFILE】

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リタさん

現在は看護師として活躍する元助産師。助産師時代には数多くの出産に携わった経験を持つ、出産のスペシャリスト。産前・産後のママの良きアドバイザーとして、今もたくさんの人たちから相談を持ち掛けられている。

母乳の量と年齢は関係がある?

仕事を終えたリタさんの元に、助産師時代に出産に立ち会ったマナさんから電話がかかってきました。

マナさん 「ちょっと相談したいことがあるんです。40歳で妊娠した妹が、高齢出産なのでいろいろ不安があるみたいで...」

リタさん 「まずはおめでとう!とはいえ、高齢出産にはいろいろ悩みもあるわよね」

マナさん 「やっぱり高齢出産だと、母乳って出にくいんですか?」

リタさん 「よく言われるんだけど、実はそんなことないのよ!母乳の出る量は、もっとほかの要因で決まるの。出産前に知っておくといい母乳の秘密、教えてあげるわ!」

なぜ「高齢出産は母乳が出にくい」と言われるの?

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ただでさえ不安がいっぱいの高齢出産。「高齢で産んだから母乳が出にくくて」なんて話を聞くと、「もしかして自分も?」と思ってしまいますよね。結論からいうと、母乳の量と年齢は無関係。母乳の出には、年齢にかかわらず個人差があるものなのです。

では、なぜ「高齢出産は母乳が出にくい」というイメージがあるのでしょうか。高齢出産の場合、若いときの出産に比べて体力の消耗が激しく、回復にも時間がかかります。しかも、産後しばらくは満足な睡眠がとれない生活が続くため、肉体的・精神的な疲労は増すばかり。

30代後半から40代は、ただでさえ基礎代謝が落ちたり血行が悪くなったりして体の不調が出やすい年代。母体を十分に充電する時間がないと、母乳を作る力が落ち、結果として出にくくなってしまう...ということはありそうです。

母乳の量を増やすためにできること

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では、母乳の量を増やすために、日常生活でできることはあるのでしょうか。ポイントを4つ挙げてみましょう。





1 「赤ちゃんとのスキンシップタイム」として授乳する

出産と慣れない育児、さらに不規則な時間の授乳が続いて疲れ果てているお母さんにとって、あまり出ないオッパイを赤ちゃんに吸わせることは精神的につらいかもしれません。それでも、出る・出ないにかかわらず、赤ちゃんとのスキンシップタイムだと思って授乳をするようにしましょう

生後間もない赤ちゃんはオッパイを吸う力が弱い上、お母さんの乳腺も出産直後では開通しきっていないことが多いため、何度も吸わせることで母乳の出が良くなる可能性があります。

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2 食事内容を見直す

母乳の元となる血液を作るのは、毎日の食事です。血液の量を増やし、質を良くするために、食事の内容を見直しましょう。油っぽい物や甘い物ばかり摂取していると、乳腺が詰まり、母乳が出にくくなる原因になります。

また、母乳の出は血流の良さに左右されるため、キュウリやトマトといった体を冷やす特性のある食べ物や、冷たい飲み物は控えましょう。若いころに比べて冷えやすくなったと感じる方は、生姜やネギなど、体を温める効果がある食べ物や飲み物を積極的にとることをおすすめします。



3 睡眠時間を確保する

母乳は、母体が寝ているあいだに作られます。体力を回復するためにも、「寝られるときは寝る」ことが大切。「夜中も頻回授乳が続いているのに、まとまった睡眠なんかとれるわけがない!」というお母さんは、昼間でも赤ちゃんといっしょに寝てしまいましょう。

赤ちゃんが寝ているあいだしか家事ができないと、無理して動いてしまいがちですが、短い仮眠でも母乳の出は確実に良くなります。家族に協力してもらったり、家事代行サービスを利用したりして、意識して体を休ませるようにしましょう。

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4 ストレスを溜めない

母体がストレスを感じると、母乳の流れを促す「オキシトシン」というホルモンが影響を受け、一時的に母乳を止めてしまうことがあります。心配事があるときは、できるだけ早く家族や助産師さんなどに相談し、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

問題がないとわかったらどっしり構えて、周囲の言葉や一方的な情報に惑わされない心の強さを持つことも大切です。

母乳育児に大切なのは「母体の健康」

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高齢出産で心配なのは、睡眠不足、体力不足、母乳不足が重なって気持ちが落ち込み、育児自体がつらくなってしまうことです。20代に比べて、倍近い年齢での出産はただでさえたいへんなもの。体と心を整え、「最高の状態」で出産を迎えることが育児を楽しむコツだといっても過言ではありません。

いきいきとした楽しい母乳育児を目指すなら、まずは検診で母体の状態を知り、できるだけ「安心して出産」ができるよう、体と心を整えましょう。



この記事を監修した人

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野村 愛(のむら あい)さん

周産期医療センター勤務後、離島で出産前の妊婦健診、産後のお母さんケアなどを担当。ミッドタウンクリニック名駅の看護師などを経て、現在は再び助産師として活躍中。





ミッドタウンクリニック名駅

IMG_5219.jpg JR名古屋駅徒歩1分。JPタワー名古屋5階、立地・快適性を追求した男女別の健診施設。「女性に優しい」をコンセプトに、女性専用エリアやパウダールームの設置など様々なホスピタリティを用意。女性特有の検査には女性医師・スタッフが対応します。また、外来診療もおこなっているため、風邪などの疾患や身体の不調なども相談可能です。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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