大人の水ぼうそう「帯状疱疹」は、重症化しやすいって本当?

水ぼうそうは、水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスによって発症する、感染力の強い病気です。大人でも、疲労やストレスによって体の免疫力が低下し、体内に潜んでいたウイルスが再活性化すると、水ぼうそうのような症状が出ることがあります。
これは、「帯状疱疹」と呼ばれる病気であり、子供の頃にかかる水ぼうそうに比べて、重症化しやすいのが特徴です。ここでは、大人の水ぼうそうが重症化しやすい理由や、症状の現れ方、予防の仕方についてご紹介します。

大人の水ぼうそう、帯状疱疹とは?

水ぼうそうは、10歳以下の子供に多く見られる感染力の強い病気であり、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症します。発熱と同時に、胸やおなか、顔、足、口の中などに、2~3mm程の赤く小さい発疹が現れるのが特徴。また、倦怠感や食欲不振を伴うことも多くあります

発疹は、1週間程かけて、強いかゆみや痛みを伴う水ぶくれ、かさぶたへと変化していきます。発疹の出る期間は数日にわたるため、発疹と水ぶくれ、かさぶたが混在することもあります。

水ぼうそうは、一度感染したら生涯を通じてその感染症にはかからない「終生免疫」を獲得するため、再発の可能性は極めて低いといわれています。しかし、治った後も、水痘・帯状疱疹ウイルスが消滅するわけではありません。

ウイルスは、体内の神経節に潜んでいて、加齢や病気、またはストレスなどの外的要因で免疫力が低下すると、活動を再開します。このウイルスが神経に沿って体内を移動し、皮膚に到達することによって、帯状疱疹を発症するのです。

帯状疱疹の発症率とその症状

帯状疱疹の発症率は50代から急激に高まり、患者の約7割が50歳以上というデータもあります。日本人の成人のおよそ9割が水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがあり、体内にウイルスを持っているため、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています(※)。

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対象・方法:1977〜2011年に宮崎県の46施設で帯状疱疹と診断された
75,789例について年代別に帯状疱疹の患者数及び発症率を算出

症状には個人差がありますが、一般的には、皮膚に違和感や痛み、かゆみが生じた後、水ぶくれの混じった赤い発疹が帯状に現れます。その後、水疱が現れて破れ、皮膚がただれ、かさぶたになります。

発疹は、腕や胸、背中など上半身を中心に、神経の流れに沿って体の左右どちらかに現れることがほとんど。大人の場合、発疹が出る前から倦怠感や発熱が見られることもあります。

帯状疱疹は、免疫力が低下したときに発症するため、子供の水ぼうそうに比べて重症化しやすい傾向があります。重症化すると、肺炎や髄膜炎(ずいまくえん)、脳炎を引き起こす可能性も。また、目や鼻、耳の周りなどに出た発疹を放置すると、失明や難聴など、重い合併症につながるおそれもあります。

痛みがひどく眠れない、仕事ができないなど、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。治った後、後遺症として長期にわたり痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」に悩まされる人も多いため、予防や早期治療が大切です。

※国立感染症研究所 感染症疫学センター IASR. 2013, 34, p. 298-300

帯状疱疹を予防するために意識したい4つの行動

免疫力の低下は、水痘・帯状疱疹ウイルスの活性化を招きます。帯状疱疹を予防するためにも、次の4つを意識して生活しましょう。


1 バランスのとれた食事

「これだけ食べていれば免疫力は万全」といった食材は存在しません。特定の栄養素に依存しすぎず、幅広い食品からさまざまな栄養素をバランス良くとるよう心掛けましょう。不足しがちな栄養素は、サプリメントなどで補うことも大切です。


2 適度な運動

適度な運動は、免疫力アップに効果的。運動習慣がない人や、忙しくて時間が取れない人は、いきなり激しいスポーツに取り組む必要はありません。自宅まで1駅歩く、エスカレーターやエレベーターの代わりに階段を使う、週末に散歩をする、ラジオ体操をするなど、取り組みやすい運動を見つけて習慣化しましょう。


3 睡眠時間の確保

睡眠不足は、人間の心と体、免疫力に大きく影響します。仕事が忙しく、睡眠がなかなかとれない人は、帯状疱疹の発症リスクが特に高いといえるでしょう。

適切な睡眠時間には個人差があり、短時間ですっきりと元気になれる人もいれば、長時間眠らないと疲れがとれない人もいます。自分にとってベストな睡眠リズムを見つけ、質の高い睡眠を得ることが、帯状疱疹の予防につながります。


4 ストレスの軽減

ストレスも、免疫力を低下させる大きな要因になります。没頭できる趣味を見つける、1人になれる時間を作るなど、自分なりのストレス解消法を見つけて、イライラを溜め込まないようにしましょう。

50歳以上の人はワクチンで予防を!

2016年3月から、50歳以上の人は、水痘ワクチンを帯状疱疹ワクチンとして使用できるようになりました。ワクチンの接種によって帯状疱疹を確実に防げるわけではありませんが、発症率を低下させ、もし発症しても症状が悪化するのを防いで、軽症にとどめる効果があるといわれています。

年齢とともに低下していく免疫をワクチンで強化し、ウイルスの増殖を抑えましょう。

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重症化しやすい帯状疱疹、日頃の節制が予防のカギ

大人の水ぼうそうは、免疫が低下したときに帯状疱疹として発症するものであり、子供に比べて重症化リスクが高いため注意が必要です。

食事、睡眠、ストレスといった日常生活における免疫力低下の要因に気を配り、免疫力の低下を防ぎましょう。


※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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