更年期の睡眠は「量」より「質」にフォーカスしよう

更年期のよくある症状のひとつである「不眠」。単純に眠れないだけでなく、「朝起きたときに疲れが残っている」「夜中に何度も起きてしまう」「日中、強烈な眠気に襲われる」といった症状も、不眠の一種と考えられています。このような睡眠トラブルは、重症化すると日常生活に影響をきたすことも...。

そこで今回から、更年期世代の睡眠について、睡眠コンサルタントの友野なおさんに伺うシリーズをスタート!初回は、更年期の女性が不眠に陥りやすい原因や、睡眠状態のチェック法、良質な睡眠のために必要なアクションについて、友野さんに教えていただきました。

更年期世代の女性は慢性的な睡眠不足に陥っている

40~50代は、女性ホルモンの減少によって自律神経が乱れやすく、不眠や中途覚醒に悩まされがちです。また、ホットフラッシュや気分の落ち込み、イライラといった更年期の症状が、睡眠に影響することもあります。

「この年代の女性は、本当に忙しいんですよね。仕事や家事、育児、介護など、寝るギリギリまでやることが詰まっているだけでなく、ベッドに入ってからも明日やることを考えてしまう...。そうすると、寝付きが悪くなり、睡眠時間がますます削られてしまいます」

アメリカ国立睡眠財団では、成人の理想的な睡眠時間を7~9時間としています。しかし、毎日それだけの睡眠時間を確保するのは難しい人も多いでしょう。

「睡眠時間が確保できないときは、睡眠の質にフォーカスをあてることが大切です。いくら長い時間寝たとしても、疲れがとれていなければ意味がありません。睡眠時間が7時間未満であっても、質の良い睡眠をとれていたら、日中のQOL(生活の質)が高まるともいわれています」

自分の睡眠状態をチェックしよう

ところで、皆さんは、自分の睡眠状態を把握できていますか?友野さんによると、次のようなことが睡眠の質を測る目安になるそうです。

<睡眠の質を測る目安>
・前日の疲れが残っておらず、すっきりと起きられるか
・起床から外出までのあいだに排便があるか
・目の充血やクマ、肌のくすみ、フェイスラインのたるみがないか
・午前中に強い眠気に襲われないか
・日中に心身ともに意欲的に活動できるか

「その日の朝から日中の状態が、前日の睡眠の答えといっても過言ではありません。質のいい睡眠をとれていないと、体に疲れやだるさが残ったり、顔色がくすんで見えたりします。毎日の睡眠状態を確認するためにも、起床後30秒でいいので鏡をじっくり見て、顔の状態をチェックする習慣をつけるといいですよ」

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「また、睡眠と関係ないように思えるかもしれませんが、よく眠れていないときは脂っこい物を欲しがちになるなど、食生活も乱れてきます。その影響で、肌の乱れが起こるなど負のスパイラルに陥ってしまうんです」

逆を言えば、朝起きたときに「ぐっすり寝た」という熟睡感があり、日中にパフォーマンスを発揮できていれば、質のいい睡眠がとれている証拠。この状態に持っていくためには、入眠直後の3時間が非常に重要になってくるそうです。

「入眠直後の3時間、体内では、体をメンテナンスしてリカバリーしてくれる成長ホルモンという物質が大量に分泌されます。つまり、この時間に深く眠ることで、睡眠の満足度がアップするだけでなく、心身の健康を保つことにもつながるんですよ」

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良質な睡眠をとるために意識したい「睡眠五感」

質のいい睡眠をとるためには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。「私は"睡眠五感"と呼んでいますが、視覚・聴覚・嗅覚・温熱感覚・触覚からのアプローチが、質のいい睡眠をもたらします」と、友野さん。具体的には、次のようなアプローチが有効だといいます。


視覚

朝から日中のあいだは明るく、夜は少し暗めにするなど、室内の光のメリハリをつけます。また、スマートフォンやテレビ、パソコンの画面が発する人工的な光は、眠気を促すメラトニンの分泌や体内時計を乱してしまうため、遅くとも寝る1時間前から見ないように心掛けましょう。寝具やカーテンなど大きな面積を占めるファブリックは、やさしい色合いを選ぶのがおすすめです。


聴覚

寝ているあいだは、室内がなるべく静かになるよう環境を整えましょう。時計や外の音などが気になって眠れない場合は、1時間だけ音楽が流れるようにタイマー設定し、雨の音や川のせせらぎ、鳥の声などの環境音楽を流すといいですね。反対に、テレビやラジオといった人の話し声は、情報を処理しようとして脳が活性化してしまうので避けましょう。


嗅覚

睡眠時にアロマオイルなどの香りをかぐことも、睡眠の質を高めるためのアクションのひとつ。睡眠にいいとされるのはラベンダーやオレンジスイートですが、これに限らず、自分の好きな香りでOKです。

アロマを焚くのが面倒なときは、フレグランススプレーを寝室や枕カバーにプッシュしたり、お風呂にお気に入りの入浴剤を入れたりするだけでもいいですよ。

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温熱感覚

四季がある日本では、夏の暑さ対策、冬の寒さ対策が必須。寝具は夏と冬で衣替えをするようにしましょう。

冬の寝具は、羽毛布団でしっかりと外気を遮断するのがマストです。エアコンは、夏はつけたままでOK。冬は乾燥するので、オイルヒーターなどを使うといいですね。

電気毛布を使う場合は、寝る直前までつけておき、寝ているあいだはオフにして、暑さによる中途覚醒を防ぎましょう。


触覚

寝具やパジャマは、自分がふれたときに気持ちいいと感じる素材を選びましょう。

人は一晩で平均20~30回程度寝返りを打つといわれており、パジャマと枕カバーは特に慎重に選びたいもの。肌や髪の摩擦防止、吸水性といった観点から、シルクなど天然素材のアイテムを選ぶことをおすすめします。

入眠儀式を作って眠りやすい体質に

寝たいのになかなか寝付けなかったり、途中で起きてしまったりすることが続いて、睡眠に対してプレッシャーを感じている人も少なくないと思います。

「不眠を解消するためにも、自分なりの『入眠儀式』を決めるといいですね。パジャマに着替える、ベッドに入って本を読むなど、寝る前に必ず行うことを決めておくと、それが入眠のスイッチになり、眠りにつきやすい状態を作ることができます」

ホルモンバランスだけでなく、ストレスなど精神状態にも大きく左右される睡眠。忙しい世代だからこそ、質のいい睡眠をとれるように、自分が心地いいと感じる睡眠環境を整えましょう。


お話を伺ったのは...

友野なおプロフィール画像-min.JPG

友野なお(ともの・なお)さん

睡眠コンサルタント。自身が睡眠を改善したことにより、15kgのダイエットと重度のパニック障害の克服、体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会の正会員。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とし、全国での講演活動、企業の商品開発やコンサルテーション、執筆活動などを行う。
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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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この記事は、働く女性の医療メディア
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