歯垢(プラーク)って何?放置することで起こる体への悪影響

歯を舌でさわったとき、ベタベタ、ヌルヌルした感覚がありませんか?それは、口内環境を悪化させ、全身の健康にも影響を及ぼす可能性がある「歯垢(プラーク)」かもしれません。
今回は、歯垢が溜まることによって起きることと、放置せず取り除くことの重要性について解説します。

歯垢とは?

歯垢はむし歯菌、歯周病菌などの細菌や、その代謝物のかたまりです。「プラーク」や「バイオフィルム」とも呼ばれ、歯垢1mgの中には、1億個以上の細菌が存在しているといわれています。
歯垢は歯と歯肉の境目や、歯と歯のあいだに付着しており、舌でさわるとベタベタ、ヌルヌルした感触が。ねばつきが強く水に溶けにくいので、うがいで落とすことはできません。

歯垢が発生するのはなぜ?

歯垢は、細菌が歯の表面で増殖することによって形成されるものです。口内環境が悪化していたり、口内に残った食べ物が歯の表面に付着していたりいると、そこで細菌が繁殖して雑菌の巣を形成し、多様な細菌を取り込んで成長。成熟した巣が歯垢となり、むし歯や歯周病の原因となります。

特に、下記のような習慣があると、歯垢が発生しやすくなるといわれています。


1 間違った歯磨き

歯垢は、磨き残しやすい歯と歯のあいだや、歯と歯肉の境目にできやすいものです。しっかり磨いているつもりでも、実は同じ所ばかり磨いていたり、ブラッシングの仕方が間違っていたりすると、口内に残った食べ物が元になって細菌が増えていきます。


2 歯磨きの頻度が低い

理想的な歯磨きの頻度は、毎食後と就寝前の1日4回。特に、就寝前の歯磨きは就寝中の細菌の数を減らし、繁殖した細菌を体内に取り込まないために重要なタイミングです。
このタイミングを逃していたり、歯磨きの頻度が低かったりすると、口内が十分にきれいになっておらず、細菌の増殖を招くでしょう。


3 食べてから歯磨きをするまでが長い

歯垢は、食事をしてから4~8時間後くらいにでき始めるもの。食事や間食をしてから歯磨きまでの時間が空くと、細菌は次第に増え、歯垢ができるといわれています。

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歯垢が溜まると何が起きる?

歯垢が溜まると、さまざまなトラブルが起きますが、それは口内にとどまりません。続いては、歯垢が原因で起こるトラブルについて見ていきましょう。


むし歯や歯周病を引き起こす

食後の口内は、乳酸菌などの働きで酸性に傾き、歯のカルシウムが溶け出す「脱灰(だっかい)」が起こります。このとき、すみやかに歯磨きをすれば、脱灰を唾液の働きで中和する「再石灰化」が起こって歯は再生しますが、歯垢が付着した状態が長く続くと再石灰化が妨げられて脱灰が進行。やがて歯に穴が開き、むし歯に発展します。

また、歯と歯肉の境目に溜まった歯垢は、歯肉の中に入り込んで歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきや歯の根を支える骨)にダメージを与える歯周病を引き起こします。特に、女性ホルモンの分泌が低下する更年期以降は唾液の分泌量が減少し、口内の自浄作用が低下して、歯周病の原因となる歯周病菌が活動しやすくなるのです。歯周病を進行させないためにも、プラークコントロール(口内環境を正常に保つこと)が大切です。

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口臭の原因になる

プラークに含まれる細菌は、食べかすなどに含まれるたんぱく質を分解する過程で、硫化水素やメチルメルカプタンといった、強烈で不快なにおいのするガスを発生させます。これが口臭の大きな原因と考えられています。
歯垢を放置してむし歯や歯周病が進行すると、口臭はさらに強くなることがあるでしょう。

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全身疾患のリスクを高める

歯垢が原因でむし歯や歯周病になることで、大量に増殖したむし歯菌や歯周病菌の毒素が歯肉から血管に入り込んで全身に回ったり、気管に入ってしまったりすることがあります。このことから、さまざまな疾患を引き起こす原因になり、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病、認知症、肺炎といった疾患のリスクを高めることがわかっています。

歯垢を溜めないためにできること

歯垢は、口内はもちろん、全身の健康にも大きな影響を与えます。正しいケアを行って、歯垢を溜めないようにしましょう。歯垢をケアする方法は、下記の2つあります。


毎日のセルフケア

歯垢の蓄積を防ぐために何よりも重要なのは、毎日の歯磨きです。歯垢が溜まりやすい歯と歯のあいだ、歯と歯肉の境目にはデンタルフロスや歯間ブラシを使いながら、1本1本しっかりブラッシングして汚れを落としましょう。

歯や歯肉を傷付けず歯垢だけを除去できるよう、歯の隙間に合ったサイズのデンタルフロスや歯間ブラシを選ぶことも大切です。

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歯科クリニックでの定期的なケア

歯磨きが届きにくく汚れが溜まりやすい部分や、磨き方の癖でどうしてもブラッシングがおろそかになりがちな部分は、歯科クリニックで取り除くことも可能。
歯科クリニックでは、特別な器具を使って口内を清掃してくれるほか、磨き方のコツや必要な器具の選び方も教えてくれるので、正しいセルフケアにつなげる意味でも、定期的な受診がおすすめです。

ちなみに、歯垢を放置していると、唾液に含まれるリンやカルシウムが歯垢に付着してどんどん硬くなり、石灰化して「歯石」と呼ばれる状態になってしまいます。歯石になると、自分で取り除くことは難しくなります。このような場合も、歯科クリニックで除去してもらう必要があります。

セルフケアと歯科クリニックでのケアで、歯垢になる前に対策を!

口内に歯垢を発生させないようにするには、毎日の地道なケアが欠かせません。
正しいセルフケアと、歯科クリニックへの定期的な受診をうまく組み合わせ、歯垢が固まって歯石になる前に、早めの対処を心掛けましょう。



この記事を監修したのは...
大西 孝宣(おおにし たかのり)歯科医師

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東京ミッドタウンデンタルクリニック
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