【専門家監修】風呂キャンセル界隈に注目 | 入浴で認知症リスクの低下!?

      

「仕事や家事でクタクタ...今日はお風呂を沸かす気力なんてない」「シャワーで十分でしょ?」
忙しい毎日を送る現代女性にとって、お風呂は癒やしの時間であると同時に、面倒なタスクになりがちです。最近では「風呂キャンセル界隈」なんて言葉も聞こえてくるほど。しかし、もしその長引く疲れや冷え、なんとなく続く不調が「シャワーで済ませていること」が原因だとしたらどうでしょうか?
今回は、温泉療法専門医であり、お風呂研究の第一人者である早坂信哉先生にインタビューしました。医学的根拠に基づいた本当に疲れが取れる入浴法や、更年期世代の揺らぐ体調を整えるバスタイムの過ごし方について詳しく伺いました。忙しくて時間がないという日のための裏技も含め、今日からできる「医学的に正しい入浴」の新常識をご紹介します。

東京都市大学教授

早坂 信哉(専門分野:温泉療法専門医)

なぜシャワーだけでは疲れが取れないの?3大効果がもたらす体の変化

シャワーで済ませる人と、入浴してしっかり体を温める人とでは、翌日のコンディションに差があったりします。「なんだか疲れが抜けない」と感じるなら、もしかしたらシャワーで済ませているのが原因かもしれません。

なぜシャワーだけでは不十分なのか、医師が詳しく解説します。

「汚れは落ちるけれど......」シャワーと入浴では体温上昇がこんなに違う

忙しいと、つい「シャワーで汗を流せば十分」と思ってしまうのですが、やはり体への効果は違うのでしょうか?

早坂先生:はい、まったく違います。「風呂キャンセル界隈」という言葉も聞きますが、現代女性にこそ、改めて湯船に浸かっていただきたいですね。シャワーでも体の表面の汚れは落ちますが、入浴の最大のメリットである「温熱・水圧・浮力」の3大効果は、ほとんど受けられません。
特に決定的な違いは、体温の上昇です。私たちが推奨している「40度で10分間」という入浴法だと、体温は約0.5〜1度上がります。しかし、シャワーだと10分浴び続けても0.1度程度しか上がりません。

10分浴びても0.1度ですか!それではほとんど温まっていないのと同じですね。

早坂先生:シャワーだけだと血流改善が見られず、お風呂の健康効果がほぼ得られないということです。体をきれいにする効果はありますが、体温を上げて血流を良くするという疲れを取るために一番重要な効果は、シャワーではあまり期待できないのが現実です。

血流・むくみ・リラックス。3大効果が全身の細胞を元気にする

血流が良くなると、具体的に体の中で何が起きているのでしょうか?

早坂先生:人間の体には37兆個もの細胞があると言われていますが、それら一つひとつに酸素や栄養を運び、老廃物を回収しているのが血液です。お風呂の温熱作用で体が温まり血管が広がると、血流に乗って栄養が全身に行き渡り、細胞が活性化します。そして、次のようなメリットが生まれます。

疲労回復 老廃物が流れ、エネルギーが作られる
痛みの緩和 神経の過敏状態が落ち着き、肩こりや腰痛が和らぐ
肌の再生 肌の奥(基底層)で新しい皮膚が作られる

なるほど、37兆個の細胞すべてをメンテナンスしているんですね。

早坂先生:温熱作用以外にも、入浴にはシャワーでは得られない大きな恩恵があります。

  • 水圧作用:体を締め付ける力です。足のむくみがある場合、血液やリンパ液が心臓に戻ってくるように働きかけます。
  • 浮力作用:肩まで浸かると体重が10分の1になります。体を支える必要がなくなるので、体が楽になりリラックスできます。

これらの温熱・水圧・浮力の3つが揃って初めて、全身の細胞が元気になり、疲れがリセットされます。

【40℃で10分】内側から美肌を作る基本の入浴ルールとは?

健康だけでなく、美容面でも大きなメリットがある入浴。血流が良くなれば、肌のターンオーバーに必要な酸素や栄養が隅々まで届くようになります。しかし、入り方を間違えると肌を乾燥させたり、自律神経を乱したりする原因にもなります。医師が推奨する美肌とリラックスを両立する黄金ルールについてまとめました。

熱すぎるお湯はNG?交感神経を刺激しない適温について

42度くらいの熱いお湯に入ってしまうのですが、これは良くないのでしょうか?

早坂先生:お気持ちはわかりますが、リラックスや美肌を考えるとおすすめできません。これまでの研究では、42度以上のお湯になると交感神経のスイッチが入ってしまうことがわかっています。交感神経はいわば戦いの神経なので、体が興奮状態になり、血管が収縮します。

疲れを取りたいのに、逆に体を戦闘モードにしてしまっていたんですね。

早坂先生:その通りです。さらに、熱いお湯は皮膚の保湿成分を奪い、肌荒れの原因にもなります。これらを防ぐための正解は、「40度のお湯に全身浴で10分」です。
40度程度のぬるめのお湯なら、副交感神経が刺激されてリラックスでき、血流もしっかり改善されます。また、長く入れば良いというわけでもありません。20分、30分と入るとのぼせて熱中症になるリスクがあるので、適切な温度と時間を守ることが大切です。

乾燥を防ぐカギはお風呂上がり10分以内の保湿

お風呂上がりの乾燥に悩む女性も多いです。スキンケアのコツはありますか?

早坂先生:勝負は、お風呂から上がって10分以内です。入浴直後は肌の水分量が増えていますが、何もせずに10分が経過すると過乾燥の状態になり、入浴前よりも水分量が減少します。お湯に浸かることで皮脂膜が流れたり、肌の保湿成分(セラミドなど)がお湯に溶け出したりするためです。なので、タオルで拭いたらすぐに、10分以内に保湿ケアをしてください。

体の洗い方についても、気をつける点はありますか?

早坂先生:「洗いすぎないこと」が重要です。毎日ゴシゴシとナイロンタオルで擦ったり、石鹸をつけすぎたりすると、必要な皮脂まで奪って肌がガサガサになってしまいます。湯船にしっかり浸かるだけで多くの汚れは落ちるので、お湯に浸かることを前提とすれば、手足の先などは毎日石鹸を使う必要はなく、2〜3日に1回程度でも十分清潔を保てますよ。入浴中は「保湿成分配合の入浴剤」を使って肌を守るのも良い方法ですね。

【湯船でできる簡単ケア】デスクワークのむくみもスッキリ

立ち仕事や長時間のデスクワークで、夕方には足がパンパン......。そんな時こそ、お風呂の水圧と浮力を味方につけましょう。ただ浸かるだけでもむくみは解消されやすいですが、少しの工夫で翌朝の足の軽さが変わります。湯船の中で誰でも簡単にできるケアを教えていただきました。

足の疲れにはリンパ流し&アキレス腱伸ばしがおすすめ

むくみが気になる時、お風呂の中でできる簡単なマッサージはありますか?

早坂先生:末端から体の中心に向かって流すイメージで、足先から太ももの方へさすり上げるだけで十分です。末端に溜まったリンパ液や血液を、心臓に戻してあげる感覚です。私がおすすめしているのは、手のひらで輪っかを作る方法です。輪っかに足を通し、手を動かすのではなく、足を伸ばすようにします。

これだと少しの力で効率よく圧をかけられますし、手も疲れません。回数は10回程度ですが、心地よい範囲で行えばOKですよ。

湯船の中だと体も温まっているので、ストレッチもやりやすそうですね。

早坂先生:お湯の中だと関節や筋肉が温まって柔らかくなっているので、安全に効率よくストレッチができます。私は関節が硬いので、よくお風呂の中でアキレス腱伸ばしや、足首回しをやっています。お風呂でのストレッチは、わざわざ時間を取らなくても「入浴のついで」にできるのがメリットです。ただし、浴室は滑りやすいので、転倒しないように注意しながら無理のない範囲で行ってください。

入浴の前後に水分補給してドロドロ血液を防ごう

入浴中の水分補給も大切だと聞きますが、具体的にどのくらい飲めば良いのでしょうか?

早坂先生:入浴の前後が大切です。

  • 入浴前→コップ1杯以上の水分を補給
  • 入浴後→コップ1〜2杯の水分を補給

お風呂に入る前にも飲む必要があるんですね。

早坂先生:はい。入浴して汗をかくと体内の水分が失われ、血液の粘り気が増してドロドロ状態になりやすくなります。血液の流れが悪くなると、せっかくの入浴効果が下がるだけでなく、最悪の場合はヒートショック(心筋梗塞や脳卒中など)を引き起こすリスクも高まってしまいます。

入浴前に水分を摂っておくことで、入浴中も血液をサラサラの状態に保てます。美容のためにも、命を守るためにも、「お風呂と水はセット」と覚えておきましょう。

どうしても時間がない日は?3分で温まる足湯シャワーがおすすめ

「今日はどうしても10分も浸かっていられない!」そんな多忙な日は、無理に湯船に溜めなくても大丈夫です。シャワー派の人でも、少しの工夫で温まり方が劇的に変わる時短テクニックを教えていただきました。

湯船に浸かれない日の裏技は「くるぶし足湯」で全身を温める方法

忙しくて時間がない日でも、少しでも温まりたい......。そんな時の裏技はありますか?

早坂先生:そんな日は、足湯シャワーを試してみてください。とても簡単にできます。

お湯を溜めきるのを待たなくていいんですね!

早坂先生:はい、体を洗っている間に、足元までお湯が溜まるぐらいで大丈夫です。シャワーだけだと、お湯が当たっている部分しか温まりませんが、足湯をしながら浴びると、足元で温まった血液が全身を巡るようになります。シャワー単体より効率よく、短時間で体がポカポカになります。
お湯の温度は、少し熱めの42〜43度くらいでも良いでしょう。ビジネスホテルなど、ユニットバスでゆっくり浸かれない時にもおすすめの方法です。もしシャワーを浴びる時間もない時は、洗面器にお湯を張って手浴をするだけでも、体が温かくなってきます。

朝風呂派は熱めで短時間が正解

「朝風呂派」の人もいますが、入り方のコツはありますか?

早坂先生:朝と夜では自律神経の働きが違うため、目的に合わせて温度を変えるのがおすすめです。

  • 朝:活動するためのスイッチを入れたい時間帯なので、42度ぐらいの熱めのシャワーを2〜3分浴びるか、お湯に5分程度サッと浸かるのがおすすめ。
  • 夜:リラックスするため「40度で10分」をおすすめ。

朝は熱めのお湯のほうが良いのですね。

早坂先生:熱いお湯が体を刺激すると、交感神経のスイッチが入って目が覚めます。特に低血圧で朝が苦手な方や寝起きがすっきりしない方は、熱めの朝風呂を試してみると、活動モードにスムーズに切り替えられますよ。

更年期の「冷え」や「自律神経」の乱れを入浴で整える

40代・50代になると、「急に汗が出る(ホットフラッシュ)けれど、手足は冷たい」「なんだかイライラして眠れない」といった不調を感じることも増えてきます。こうした更年期特有の悩みにも、お風呂は強い味方になります。自律神経の専門家でもある早坂先生が、大人の女性の入浴法について解説しました。

ホットフラッシュがあるのに冷えている?芯の冷えを解消するメカニズム

更年期世代の方から「上半身はカッと熱くなるのに、お腹や手足の芯は冷えている」という悩みをよく聞きます。

早坂先生:そこには自律神経とホルモンが深く関係しています。更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少し、体のアクセルである交感神経が過剰に働きやすくなります。そして、交感神経が強く働くと、血管がギュッと収縮して血流が悪くなります。これが「冷え」の正体です。ホットフラッシュで表面は熱く感じても、体の中や末端は血が巡らずに冷えていることが多いです。

だからこそ、温める必要があるんですね。

早坂先生:はい、交感神経が高ぶっている状態を逆方向のリラックス状態に戻すことが必要です。そこで効果的なのが、「40度で10分の入浴」です。ぬるめのお湯に浸かることで、ブレーキ役の副交感神経を優位にし、縮こまった血管を広げて血流を改善することが、不調の悪循環を断ち切るカギになります。
「暑いからお風呂に入りたくない」と感じる方もいるかもしれませんが、長期的に見れば、お風呂で自律神経を整えることが症状の軽減につながります。まずは2週間ほど続けてみると、体の変化を感じられると思います。

発汗やデトックスを意識するなら「ソルト・炭酸系」の入浴剤を味方に

冷えの改善やデトックス(発汗)を意識した場合、どのような入浴剤を選べば良いでしょうか?

早坂先生:体を芯から温めて発汗を促したいなら、以下の2つのタイプがおすすめです。

ソルト(無機塩)系・温泉ミネラル系 塩類の成分が皮膚の表面にベールを作り、汗の蒸発を防いでくれます。お風呂上がりもポカポカとした温かさが持続するのが特徴です。
炭酸系 お湯に溶けた炭酸ガスが皮膚から吸収され、血管を広げてくれます。血流を良くする効果が非常に強いので、更年期の冷えや肩こりにもピッタリです。

食塩をそのまま入れてはダメですか?

早坂先生:はい、それは避けてください。食塩や岩塩は給湯器の配管やセンサーを傷める可能性があるためです。同じ塩でも、市販の入浴剤に使われている硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなどであれば、給湯器への影響が抑えられているので安心です。選び方に迷ったら、パッケージに「医薬部外品」と書かれているものを選ぶと良いでしょう。効果・効能が認められている証拠ですので、より高い温浴効果が期待できます。

医師が実践するバスタイムは何もしない?お風呂の極意を伝授

お風呂研究の第一人者である早坂先生ご自身は、普段どのようにお風呂時間を過ごされているのでしょうか。最高の入浴法を熟知する先生が実践しているのは、意外にもデジタルとは無縁の「アナログな習慣」でした。

スマホではなく「ラジオ」を持ち込む理由

先生ご自身は、10分間の入浴中に何をされていますか?最近はお風呂でスマホを見る人も多いですが......。

早坂先生:私はスマホではなく、あえて防水のアナログラジオを持ち込んでいます。スマホを持ち込むと、どうしてもSNSを見たり、メッセージを返したりしてしまいますよね。それでは日中やっていることと変わらず、脳が休まらないですし、スマホを使っていると手が浴槽に入らず温まりません。お風呂は、家の中で唯一「情報を遮断できる場所」だと思っているので、私はあえて操作が面倒なアナログラジオを選んでいます。チャンネルを変えるのも手間なので、つけっぱなしにして流れてくる音声をただ聞いているだけですが(笑)。

あえて不便を選ぶことでリラックスするんですね。

早坂先生:歴史の話や古典の話など、自分が普段選ばないような話題が偶然流れてきて聞き流す時間が案外楽しいです。手もお湯に浸けてリラックスできますし、ぼーっとする時間を持つことで、ふと新しいアイデアが浮かぶこともあります。

毎日入浴するだけで将来の認知症リスクが26%下がる

最後に、ライフステージの変化に戸惑う読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

早坂先生:お風呂は単に体を洗うだけの場所ではありません。私たちの研究グループが、65歳以上の高齢者約1万4千人を対象に行った調査では、毎日湯船に浸かる人はそうでない人に比べて、要介護リスクが29%も低くなることがわかりました。さらに、別の研究では、認知症のリスクも26%下がるという結果が出ています。

26%も下がるのですか!それは驚きです。

早坂先生:はい。理由はやはり血流にあると考えています。入浴によって全身の血流が良くなれば、当然、脳への血流も良くなります。それが脳内に溜まった不要なゴミ(アミロイドベータなどのタンパク質)を洗い流し、脳を健康に保ってくれるのではないかと推測されています。

若いうちから入っておいたほうが良いのでしょうか?

早坂先生:そうですね。40代、50代のうちから入浴習慣をつけておけば、血管の老化(動脈硬化)を防ぎ、将来の病気のリスクを減らすことにつながります。毎日入るのが大変なら、まずは週末だけでも構いません。好きな香りの入浴剤を入れたり、照明を少し暗くしてリラックスしたり。お風呂を自分をいたわる楽しい場所にして、無理なく続けていただければと思います。

まとめ:お風呂は自分だけの避難所。まずは週末だけでも湯船に浸かろう

仕事や家事、育児に追われる女性にとって、お風呂は家の中で唯一、誰にも邪魔されずに一人になれる自分だけの場所でもあります。「毎日40度で10分入らなきゃ!」と義務にしてしまうと、それがまたストレスになってしまいます。

  • 温度は40℃、時間は10分
  • 上がって10分以内に保湿
  • 忙しい平日は「足湯シャワー」でもOK

まずは今夜から、照明を少し落としたり、好きな香りの入浴剤を使ったりして、37兆個の細胞を癒やす極上のリラックスタイムを楽しんでみてください。その積み重ねが、数年後のあなたの元気な体を作ってくれるはずです。


SUPERVISERこの記事を監修した人

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早坂 信哉(はやさか しんや)先生

早坂 信哉(はやさか しんや)先生

東京都市大学教授/博士(医学)/温泉療法専門医

東京都市大学教授/博士(医学)/温泉療法専門医。医師の経験から入浴の重要性に気づき25年にわたり7万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。テレビや講演など多方面で活躍中。著書「入浴 それは、世界一簡単な健康習慣」(アスコム)、「医師が教える温泉の教科書」(朝日新聞出版)、「かんたんお風呂ヨガ」(創元社)など。



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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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この記事は、働く女性の医療メディア
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