【医師監修】今すぐできる脳ケア|脳の健康と認知症予防に効果的な日常習慣

東京ミッドタウンクリニック

田口 淳一(専門分野:循環器内科)

仕事や子育てがひと段落し、自分の時間が持てるようになったはずなのに、「前ほどやる気が出ない」「新しいことに踏み出すのがおっくう」などと感じることはありませんか?その気持ちの変化には、「脳の健康」が関係しているかもしれません。

やる気が出ない...新しいことへの挑戦が面倒... 脳の老化が原因?

年齢を重ねると、経験が増える一方で「失敗したくない」「面倒を避けたい」という気持ちも強くなりがちです。
脳は加齢とともに機能が低下しますが、特に「前頭前野」の働きが衰えてくると、やる気や新しいことへの挑戦意欲が下がりやすくなります。結果として、いつも同じお店、同じ道、同じテレビ番組......と、無意識のうちに新しい選択を避ける生活になることがあります。
脳にとって「慣れた刺激」ばかりの単調な毎日が続くと、さらに脳にサボりぐせがついて注意力や記憶力など認知機能低下のリスクを高めてしまうかもしれません。

田口先生からの一言

私たちの調査結果では、40歳以降で、脳の萎縮が見られる人がいます。脳の体積が大きく減ると認知症のリスクが高まるため注意が必要です。

研究から分かってきた"認知症リスク"を高める要因

世界的に権威のある医学雑誌『The Lancet(ランセット)』の専門家グループは、社会的な孤立、運動不足、肥満、喫煙、難聴、うつ、高血圧、飲酒のし過ぎなど、認知症の発症リスクを高める14の要因を公表しています。
なかでも、中年期以降に「人を会わない」「家にこもりがち」「歩く距離が減った」、こんな生活になっていたら要注意。今の生活を見直してみましょう。

3つの健康習慣「話す・歩く・小さな挑戦」で脳を育てて若々しく

年齢を重ねるほど、「なるべく脳を若々しく保ちたい」と感じる瞬間が増えてきますよね。しかし、特別なトレーニングや難しい勉強をする必要はありません。日常の中で行動をほんの少し変えるだけで、脳はしっかりと活性化します。
そこで、今日からすぐに実践できる"脳を元気にする3つの習慣"をご紹介します。

①人と話すだけで脳が活性化!毎日の"ちょい会話"習慣で認知機能を守る

買い物のときに一言添える、友人に近況をメールするなど、ささやかな会話でも脳はしっかり働きます。難しいことをしなくても、日常の中に"ちょっとした会話"を増やすだけでOK。まずは、買い物のときのお会計で「ありがとう」からはじめてみましょう。

②"あと5分歩く"だけで脳の血流アップ!手軽にできるウォーキング脳トレ

早歩きや少し息が弾む程度のウォーキングは、血流を促し、脳に新鮮な酸素と栄養を届けてくれます。普段と違う道を選んでみたり、少しだけ遠回りするだけでも、目に入る景色が変わり、脳への「新しい刺激」に。

③小さなチャレンジが脳を若返らせる!新しいことを習慣化するコツ

行ったことのないカフェに入る、いつもと違うジャンルの本を読む、簡単なオンライン講座を受けてみるなど、こうした小さな"初めて"の積み重ねや好奇心をくすぐる行動は、脳の新しい回路づくりに役立ちます。

1日のタイムライン|毎日の"プラス1習慣で老化予防

朝の習慣:ひとことの挨拶から脳を働かそう

家族や近所の方に目を合わせて挨拶をしましょう。ちょっとしたコミュニケーションが気分を明るくしたり、孤独感の軽減にもつながり、毎日の小さな挨拶が、心と脳の健康づくりに役立ちます。

昼の習慣:5分の遠回りウォークが脳の老化防止への刺激

買い物のときに少し回り道をするだけでも脳には刺激になります。見慣れた景色とは違う道を歩くと、周囲の情報を新しく認識しようと脳が活発に働きます。また、歩数が増えることで血流が良くなり、脳への酸素供給も高まります。

夕方の習慣:小さな新しいチャレンジで脳の活性化

いつもは作らないレシピに挑戦してみたり、普段とは違うジャンルのニュースや番組を見たり聞いたりすることも◎。無理なく楽しめる「新しいこと」を少しずつ取り入れるだけで、日常が脳のトレーニングになります。

夜の習慣:一日を振り返る脳トレで記憶の整理

今日を振り返って、うれしかったことを1つ思い出してみましょう。「コーヒーが美味しかった」「天気が気持ちよかった」など、ほんの小さな"うれしいこと"をひとつ思い出すだけでOK。一日の情報を頭の中で整理し、ポジティブな記憶に意識を向けることで、脳の安心感や幸福感に関わる領域が自然に活性化します。気持ちが落ち着き、就寝前のリラックスにもつながります。

田口先生からの一言

決して完璧を目指す必要はありません。今日できることを1つだけ、気楽に始めてみましょう。積み重ねが認知症の予防にもつながり、これからの10年、20年を支える「イキイキ脳」を育ててくれるはずです。

認知症予防のための"脳活"習慣

医学雑誌『The Lancet(ランセット)』によると、リスク因子を改善することで、認知症の約40%を予防または発症を遅らせる可能性があるとされています。
認知症の原因となる物質の脳への蓄積は、若い頃から始まっており、早期から予防に取り組むほど効果が高く、また、中年期以降に始めても十分な効果が期待できます。特に重要な予防策は以下のとおりです。

血圧の管理|運動の習慣をつける

血圧管理は認知症予防の重要な柱の一つです。適切な管理により認知症リスクを大幅に軽減できます。

血圧管理の基本は生活習慣の見直しと薬物療法の組み合わせです。生活習慣では、塩分の摂取を控えめにして、定期的な運動を実践することが重要です。
運動療法では、ウォーキングやスロージョギングなどの有酸素運動が推奨されます。習慣的な有酸素運動には血圧を低下させる効果が期待でき、認知症リスクの軽減につながります。

タバコをやめる|喫煙による脳への影響

喫煙は百害あって一利なしの代表例で、認知症リスクを確実に高める因子です。
ニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は酸素運搬能力を低下させます。これらの作用により、脳への酸素供給が慢性的に不足し、脳へ悪影響をもたらします。

効果的な禁煙方法として禁煙外来の利用が有効で、禁煙外来を利用すると約7割の方が成功しているという報告もあります。禁煙は、認知症予防以外にも心疾患や脳卒中の予防にもつながるため、何歳から始めても遅すぎることはありません。

難聴を放置しない|聴力の低下が認知症につながる

難聴は認知症のリスク因子の一つでありながら、軽視されがちな問題です。聴力の低下は段階的に進行するため、定期的な検査による早期発見が重要です。
難聴への具体的な対処法は、以下のとおりです。

  • 定期的な聴力検査による早期発見(特に50歳以降は年1回)
  • 適切な補聴器の使用
  • 耳垢除去などの基本的なケア
  • 騒音環境や大音量での音楽鑑賞を避ける

社会とのつながりを保つ|孤立を防ぎ認知機能を守る

人との交流は脳を刺激し、認知機能を活性化させる重要な要素です。社会的孤立は、認知症の発症にとどまらず、心身の健康にも大きく関わります。家族や友人との定期的な交流や、仕事を引退した後でも趣味のサークルやクラブ活動、地域のボランティア活動への参加するなど、社会とのつながりを持つようにしましょう。

認知症の発症リスクは生活習慣や改善行動で下げられる

認知症は、私たちの日常生活や環境と深く関わる病気です。高血圧、喫煙、運動不足などのリスク因子は、意識的な行動で改善が可能です。

今回示した生活習慣に気を付けることで将来の発症リスクを大きく減らせる可能性があり、仮に認知症状が出始めた後でも、改善行動を取ることで進行を遅らせたり、正常な状態に戻ることができる可能性もあります。
今できることから始めてはいかがでしょうか。

SUPERVISERこの記事を監修した人

PROFILE

田口 淳一 (たぐち じゅんいち) 医師

医学博士
専門分野:循環器内科

東京大学医学部卒業。1993年ワシントン大学(シアトル)へ留学。東京大学医学部附属病院助手、元宮内庁侍従職侍医などを経て、2007年東京ミッドタウンクリニック院長、2024年より東京ミッドタウンクリニック総院長に就任。同年9月に「脳の健康を守る」をテーマに、認知症の発症予防から診断・治療法、介護ケアまで最新の研究に取り組む一般社団法人脳の健康を守る総合研究所 代表理事に就任。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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