【医師監修】働きながら治す乳がん|早期発見を叶える検診ガイド

東京女子医科大学 外科学講座 乳腺外科学分野 教授
グランドハイメディック倶楽部 乳腺科 セカンドオピニオン担当医師

明石 定子(専門分野:乳腺外科)

乳がんは、年間約9万人の日本人女性が新たに診断されており、女性の部位別がん罹患者数でトップとなっています。胃がんや肺がんなど他の多くのがんが年齢とともに増加するのに対し、乳がんは30代後半から増え始め、40代後半で最初のピークを迎えるのが特徴です。この年代は仕事で責任ある立場に就いていたり、子育てに忙しかったりと、社会や家庭の中心を担う世代に発症しやすく、罹患による社会的影響が非常に大きい病気といえるでしょう。
また、乳がんは卵巣で作られる女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受ける期間が長いほどリスクが高まるため、初産の年齢が35歳以上となる高齢初産(高齢出産)の増加や、出産経験がないことなども発症を増やす要因となっています。
このように聞くと不安に感じるかもしれませんが、乳がんは決して不治の病ではありません。早期発見できれば比較的治癒しやすいがんといえます。

日本人女性の約9人に1人。乳がんの現状と早期発見の重要性

/2026/07/uploads/breast_cancer_1.jpg

乳がんの治療においてもっとも重要なのは、早期発見です。乳がんステージ I 期(しこりの大きさが 2 cm 以下で脇の下のリンパ節には転移していない状態)までの早期発見であれば、10 年生存率は約 90 %。乳がんは早期発見で 9 割が治るとされているがんなのです。
日本乳癌学会のデータによると、乳がん検診によって見つかった方のうち、約7割がこのステージ0期ないしステージⅠ期の早期がんであることがわかっています。実際に、2cm以下の早期がんのほとんどは、自覚症状ではなく検診によって発見されています。
乳がんの罹患率は30代後半から増加し始め、40代後半で1回目のピークに達します。そのため、40歳を超えてからは定期的な乳がん検診が非常に重要であり、強く推奨されています。しかし、日本の乳がん検診の受診率は42.3%にとどまっており、70〜80%台に達している欧米諸国と比較して非常に低い水準にあるのが現状です。早期発見によって乳がんから命を守るためにも、まずは一人ひとりが定期的に検診を受けることが大切です。

100%の検査はない?複数の乳がん検査を組み合わせる理由

breast_cancer_2B.png

残念ながら「この検査だけをすれば100%がんを発見できる」という完璧なものは現在のところ存在しません。それぞれの検査には、得意・不得意があるため、各検査の強みを活かして複数の検査を組み合わせる複合検診が、診断の精度やがんの発見率を格段に向上させる鍵となります。
検査の得意・不得意に大きく関わるのが、個人の「乳房の特徴」です。乳房は主に脂肪と乳腺から構成されていますが、日本人をはじめとするアジア人の女性には、乳腺の割合が多い「高濃度乳房」と呼ばれるタイプの方が多い傾向があります。
マンモグラフィ検査では、乳腺組織が白く写し出されます。乳がんの病変も同様に白く写るため、高濃度乳房の方がマンモグラフィ単独で検査を受けると、白い背景の中に白いがんの影(もしくはしこり)が埋もれてしまい、見落とされやすくなるという弱点があります。
こうした高濃度乳房の弱点をカバーし、がんを検出しやすくするのが、超音波検査(エコー検査)です。しかし石灰化をみつけるのはマンモグラフィの方が得意です。

breast_cancer_3.jpg

画像引用元: 再発転移がん治療情報

乳房の性質によって適した検査は異なるため、マンモグラフィ検査と超音波検査など、お互いの弱点を補い合うように複数の検査を併用することが、乳がんを早期に発見する上で非常に重要なポイントとなります。

乳がんの早期発見を実現する3つの最新検査機器

乳がんの検診精度を高めるためには、複合的な検査を受けることが重要です。ここでは、乳がんの早期発見を実現する代表的な3つの検査機器と、その特徴について解説します。

breast_cancer_4.jpg

3Dマンモグラフィ

乳がん検診の基本となるマンモグラフィですが、近年はより高精度な3Dマンモグラフィが注目されています。2D撮影とは異なり、乳房を複数の方向から撮影し、収集したデータを三次元的に再構成する仕組みです。連続した複数の画像を撮影できるため、乳腺の重なりなどに隠れて見つけづらかった病変も発見しやすくなる他、乳腺の重なりかしこりかどうかがわかりづらいものをしっかり確認できるので、乳腺の重なりを誤ってがんの疑いとしてひっかける(偽陽性)を減らせるメリットもあります。

乳房用PET

乳房用PETも、早期発見に非常に有効な最新の検査機器です。最大の特徴は、専用の寝台にうつ伏せになり、検出器のホールに乳房を入れるだけで検査ができる点です。マンモグラフィのような痛みはなく、全身のPET検査では発見が難しかった極小の病変や、乳頭直下にあるがんも高感度で発見することが可能です。豊胸術後にも有用です。

超音波検査

超音波検査(エコー検査)は、日本人に多い「高濃度乳房」の方のがん発見に欠かせない検査です。放射線による被ばくがないため、40代以下の若い世代や、妊娠中の方の検診にも向いています。

月に1度のブレスト・アウエアネス

breast_cancer_5.jpg

医療機関での定期的な検診に加えて、日頃から自分の乳房の状態に関心を持つ「ブレスト・アウエアネス」(乳房を意識する生活習慣)を身につけることが近年推奨されています。
これまでの自己触診は、しこりなどの異常を自分で探す意味合いが強く、継続しにくい側面がありました。一方、ブレスト・アウエアネスは、あくまで生活習慣として「自分の乳房の状態を知り、変化に気をつける」ことに注目しています。

入浴や着替えの時など、ちょっとした機会に自分の乳房をチェックして、「いつもと変わりないかな」と確認してみてください。個人差はあるものの、閉経前の方なら胸の張りが少ない生理開始後10日目頃に、閉経後の方なら毎月ご自身で日を決めてチェックすることをおすすめします。特にお風呂で身体を洗うときに、石鹸をつけて撫で洗いすると肌の滑りが良く、しこりなどの変化に気づきやすいでしょう。

日頃の乳房の状態を知っておくことで、乳房のしこりや皮膚のくぼみや引きつれ、乳頭からの分泌物などの変化に気づきやすくなります。

もし、見つけたしこりが2~3センチ程度になっていたとしても、多くの乳がんは進行がそれほど早くなく、生存率も高い病気です。生理の影響による良性のしこりの可能性もありますので、生理終了後に消えていれば問題ありませんが、しこりが変わらず存在する場合は大丈夫だろうと安易に自己判断せず、次の検診を待つことなく速やかに乳腺外科などの専門医を受診しましょう。

breast_cancer_6.jpg

SUPERVISERこの記事を監修した人

PROFILE

明石 定子 (あかし さだこ) 医師

医学博士
専門分野:乳腺外科

医学博士日本外科学会 専門医・指導医日本乳癌学会 専門医・指導医マンモグラフィ読影認定医日本乳腺甲状腺超音波医学会理事長日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会理事

東京女子医科大学 外科学講座 乳腺外科学分野 教授グランドハイメディック倶楽部 乳腺科 セカンドオピニオン担当医師

明石 定子先生のメッセージはこちら

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
ドクターズコラム
この記事をシェアする

この記事は、働く女性の医療メディア
ILACY(アイラシイ)の提供です。

“おすすめ記事recommended

CATEGORYカテゴリー