夏の不調はなぜ起こる?女性ホルモンとの関係も解説
夏になると、ただでさえ暑さで身体が悲鳴を上げ、体調を崩してしまうことも少なくありません。
さらに年齢を重ねるにつれて、こうした夏の不調を感じる機会が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
夏になると、ただでさえ暑さで身体が悲鳴を上げ、体調を崩してしまうことも少なくありません。
さらに年齢を重ねるにつれて、こうした夏の不調を感じる機会が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、暑さゆえに起こる夏の不調と、女性ホルモンの関係を解説します。
すぐに取り組める対策方法もお伝えしますので、夏のときめく時間を思い切り過ごしたい方は、ぜひご覧ください。
夏の不調とは?
夏になると、身体が気温の高さに対応しきれずに不調を起こすことがあります。これが、夏の不調です。
夏の不調と聞くと「なんとなく身体が重い」「すぐに疲れる」など、何をするにもつらくなるような症状を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。このほかにも、夏になると頻繁に現れる症状があります。その具体的な例を、以下にまとめました。
夏に現れることの多い不調
- 頭痛
- 首の痛み
- ほてり
- めまい
- 息切れ
- 気分の落ち込み
- 物忘れ
上記のように暑い季節では、身体だけではなく、ときにはメンタル面にも不調が起こり得ます。
夏の不調の原因
暑くなるにつれて身体の不調が起こるのは、気温や気圧など、身体の外側での変化、つまり"外的ストレス"を受けたことによる、自律神経の乱れが原因です。
外的ストレスが生じると、それを解消するために身体の防御反応がはたらきます。暑さによる外的ストレスを受けても、体温や血圧を一定に保っていられるのは、私たちが生まれながらに、このような性質をもっているためです。
この性質は"ホメオスタシス(恒常性)"とよばれており、自律神経と内分泌、免疫の3つのシステムの相互作用で維持されているといわれています。なかでも、自律神経が気温の高さや室内外の温度差などによって疲弊すると、身体の不調につながるとされています。
それでは、自律神経に影響を与える、夏の不調の具体的な原因を以下で見ていきましょう。
室内外の温度差
まず、夏の不調を引き起こす原因として挙げられるのが、室内外の温度差です。
夏真っ盛りの時期である7月中旬から8月上旬にかけては、気温が40℃近くまで上がることも珍しくありません。そのほかの時期であっても、夏のあいだは30℃を超える日が続きますから、室内はどこも冷房が効いています。
暑い日に冷たい風にあたると気持ちが良いものです。しかし、短時間のうちに暑さと涼しさを感じると身体が疲れたり、だるくなったりと、不調を引き起こす可能性があります。
これは、室内外の温度差の影響を受けつづけることにより自律神経が乱れてしまうためで、それだけ室内外の温度差による身体への影響は大きいと考えられます。
湿度や気圧の変化
夏に起こりがちな湿度や気圧の変化も、不調を引き起こす外的ストレスとなり得ます。
日本の夏は、"高温多湿な気候"であるがゆえに、ただ気温が高いだけではなく、湿度が75%を超える日がほとんどです。くわえて、夏は大気の状態が不安定になることから、ゲリラ豪雨や台風が頻繁に発生します。その影響による湿度や気圧の変化も、私たちの身体にとってはストレスのもととなるわけです。
体内の状態を一定に維持しようとホメオスタシスがはたらくものの、湿度や気圧によるストレスがかかりすぎると対応しきれなくなってしまいます。こうした状態に陥った場合、自律神経が乱れて身体の不調へとつながるのです。
さらに、自律神経が酷使されると、脳に疲労が蓄積するとも考えられています。脳の疲れは、身体に現れる不調だけではなく、精神的な不調の引き金となるかもしれません。
更年期では、今までよりも夏の不調を感じる機会が増えるのか
「年々、夏を乗り越えるのがつらくなってきた......」と感じる方もいらっしゃるでしょう。特に更年期の女性の方ですと、更年期症状がきっかけで夏の不調を実感する場合もあります。
個人差はありますが、更年期は閉経を迎える前後10年程度の時期といわれ、一般的には、40代半ばから50代半ばに該当する方が比較的多いとされています。
更年期は、気分の落ち込みや苛立ち、多汗など、さまざまな身体の変化が現れるのが特徴です。こうした症状が現れるのは、ホルモンバランスの乱れが原因の一つとなっています。
実は、このホルモンバランスの乱れにも自律神経が密に関係しているのです。というのも、女性ホルモンの分泌や自律神経は、どちらも脳の中にある"視床下部"という部位でコントロールされています。そのため、どちらかが乱れれば、もう片方も乱れてしまう可能性があります。夏の外的ストレスによって自律神経が乱れると、更年期の症状がさらに悪化したように感じることもあるかもしれません。
特に多くの女性を悩ませるのが"汗"です。更年期の症状の一つでもある多汗は、夏の暑さによってさらに強く現れるとも考えられています。更年期の方が夏の不調を感じる機会が多いのは、こうした背景があるわけです。
夏には、誰もが汗をかきますから、気にしすぎずに「大丈夫」と思って過ごすことも大切です。最近では、首元を冷やすリングや手持ちの扇風機など、夏を快適に乗り越えられるグッズも増えてきています。そういったものを適切に取り入れて、汗の悩みを解消するのもおすすめです。
快活な毎日を送れる、夏の不調の対策方法
日ごとに暑さが増し、だんだんと身体の不調を感じることが多くなる夏を、快適に過ごすためにできることはあるのでしょうか。
ここからは、今日から取り組める、夏の不調の対策方法を解説していきます。
質の良い睡眠をとる
暑い夏を健やかに過ごすために、最低でも6時間の睡眠時間は確保したいところです。なぜなら、睡眠には夏の不調や、メンタル面の疲れにくわえて、乱れた自律神経のバランスを回復する役割があるからです。ただし、適切な睡眠時間には個人差がありますので、あくまでも目安としてご参考ください。
そして、睡眠時間を見直す際は、質の高さにも目を向けたいものです。良質な睡眠は、心身の疲れをとるだけではなく、あらゆる病気の予防にもつながります。イキイキとした毎日を送るためにも、質の高い睡眠が不可欠です。
睡眠の質の高さは、眠りにつく前に"リラックスする時間を確保できるかどうかで変わる"といえます。脳が興奮している状態だと「なんだか寝つけないな......」という事態に陥るかもしれません。そのため、寝る1時間前には"スマートフォンの使用を控える""家事を終わらせておく"など、脳の興奮を鎮め、落ち着いて過ごす時間を確保するとよいでしょう。
また、少しぬるめのお湯に浸かって、適度に身体を温めるのもおすすめです。ホッとひと息ついて、心をほぐせる方法をぜひ探してみてください。
参照元:厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド 2023』
https://www.mhlw.go.jp/content/001282101.pdf
栄養バランスの良い食事をとる
栄養バランスの良い食事も、健康を維持するうえでは欠かせません。
「暑くて食欲がわかず、1日1食の生活を送っている」「食事をとる時間がばらばら」といった不規則な食生活は、自律神経の乱れにつながるとされています。
さらに夏は、冷たい麺類をはじめとする、さっぱりとした食事をとる機会が増え、栄養が偏りがちです。結果として、疲労回復に欠かせない栄養素が不足し、より不調を感じてしまいます。ですから、たとえ少量であっても、毎日、栄養バランスの良い食事を3食とることが大切なのです。
そもそも、栄養バランスの良い食事とは、三大栄養素とよばれる"たんぱく質""脂質""炭水化物"に、ビタミンやミネラルをくわえた食事を指します。これらをバランス良く摂取することが理想ですが、いきなり食事をすべて変えるのは難しいかもしれません。身体に必要な栄養が偏りすぎないように、できるところから日々の食事を見直していきましょう。
また、更年期の方は"大豆イソフラボン"が含まれる、大豆製品を摂取するのがおすすめです。大豆イソフラボンの構造は、女性ホルモンであるエストロゲンと似ており、同様のはたらきが期待できるといわれています。
女性ホルモンや更年期について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「女性ホルモン「エストロゲン」とは?更年期もセルフケアで快適に」
参照元:農林水産省『ちょうどよいバランスの食生活』
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wakaisedai/attach/pdf/balance-8.pdf
適度に運動する
暑い日に動くのは億劫になりがちですが、適度な運動も夏の不調の対策として有効です。身体を動かすと血流が良くなることから、自律神経が正常な状態で保たれます。その結果、ホルモンバランスも整えられるというわけです。
また、運動をすると汗腺のはたらきを整えることもできます。
暑い日が続くと、涼しい部屋で過ごす機会が増えがちです。涼しく快適に過ごせる一方で、"汗をかく機会"が失われてしまいます。そうすると、暑くても汗をかけなくなったり、体温の調節が難しくなったりと、身体に悪影響を及ぼすといわれています。そのため、運動をして汗をかき、汗腺が正常にはたらける状態を作ることが大切なのです。
運動といっても、いきなりハードなものに取り組む必要はありません。まずは、気軽に始められるものとして、夏の景色を見ながらのウォーキングはいかがでしょうか。青い空や季節の花などを見ながら歩けば、心身ともにリフレッシュできること間違いなしです。
歩く時間帯を変えれば、また違った楽しみ方ができるでしょう。ウォーキングをする際は、比較的気温が低い早朝や、夕方の時間帯がおすすめです。
しかし、突き刺すような日差しが降り注ぐ日は、早朝や夕方でも気温が下がらないことがあります。その場合には、無理してまでウォーキングに出かけるのではなく、室内でストレッチやスクワットなどの自宅でできる簡単な筋トレに取り組んでみるのもよいでしょう。
夏の不調は、女性ホルモンの分泌量が変化する更年期の症状と似ている
今回は、夏の不調と女性ホルモンの関係性を、対策方法とともにお伝えしました。
夏の不調は、室内外の温度差や、気圧の変化などの外的ストレスによって引き起こされます。こうした外的ストレスは、自律神経が乱れるきっかけとなります。
自律神経と女性ホルモンの分泌をコントロールしている脳の部位が同じであることから、夏の不調を引き起こすと、ホルモンバランスも崩れてしまうわけです。
質の高い睡眠や栄養バランスの良い食事をとり、不調を感じることなく、暑い夏も楽しみながら乗り越えていきましょう。
この記事を監修した人
間瀬 有里(ませ ゆり)医師
医学博士。東京ミッドタウンクリニック、浜松町ハマサイトクリニックに勤務。日本医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医。日本産科婦人科学会指導医。日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。東京ミッドタウンクリニックと同フロアでは、管理栄養士が常駐し、より健康でより美しい生活をサポートするためのヘルスケアショップ TMMC Plus(ティーエムエムシープラス)が展開。
東京ミッドタウンクリニック:https://www.tokyomidtown-mc.jp/
浜松町ハマサイトクリニック:https://www.hamasite-clinic.jp/
TMMC Plus(ティーエムエムシープラス):http://www.tmmcplus.com/