更年期は痩せることもある?その原因と対処法を紹介(2025年更新版)

更年期以降は、基礎代謝を上げ、内臓脂肪の燃焼をサポートしてくれる女性ホルモン(エストロゲン)が減り始めます。そのため、「食べる量は変わっていないのに、なぜか太る...」と悩む人が多い印象があるでしょう。しかし一方で、しっかり食べているのに、反対にやせてしまう人も。

ここでは、更年期にやせる理由と、やせることによるデメリット、対処法について紹介します。

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太りやすくなるはずの更年期に、なぜやせていく?

更年期は、加齢による活動量や筋力の低下、エストロゲンの低下に伴う内臓脂肪の蓄積、相対的なテストステロンの上昇、エネルギーの消費量を上回る摂取量の増加などにより、一般的に太りやすくなるといわれています。ところが、中には「更年期に入ってやせた」「体重がどんどん落ちる」といった真逆の悩みを抱える人も。

体のメカニズム的には太りやすくなるにもかかわらず、なぜ体重が減ることがあるのでしょうか。考えられる原因をいくつか次に挙げます。

食欲低下 ~更年期は心配事がつきない~

心と体が大きく揺らぐ更年期は、同時に社会的・環境的要因によるさまざまな悩みにも直面し、これからの生き方を考える人生のターニングポイントでもあります。

自分の体調に端を発する健康不安や、パートナーとの関係、老後の過ごし方、子供の将来や自立、親の介護、キャリアに関すること。さまざまな心配事と真剣に向き合う時間はとても大切ですが、心には思いのほか大きな負担がかかるもの。

自分では前向きに課題解決を図っているつもりでも、知らず知らずのうちにストレスを抱え込んで食欲が低下し、体重減少につながる場合があります。うつ病を来しやすい時期でもあるので、早めに周囲や医療機関に相談しましょう。

胃腸機能の低下 ~更年期症状のひとつ!?~

更年期症状は多岐にわたり、人によって症状の現れ方が異なります。ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れにより消化力が低下し、胃がもたれたり、下痢や便秘を繰り返したりすることがあります。

以前に比べて食事量が落ちている、胃や下腹部が張って苦しいといった自覚症状があったら、胃腸の働きが低下しているサインかもしれません。

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エネルギー消費の亢進 ~何らかの病気が潜んでいることも~

ダイエットをしているわけではないのに、6ヵ月から1年程度で元の体重から5%以上減った場合、何らかの疾患が隠れている可能性が否定できません。

食欲はあるのに体重が減り、汗をかく、動悸がする、疲れやすいなどの症状が同時に現れているなら「甲状腺機能亢進症」、多尿・頻尿、喉の渇き、疲れやすさを感じるなら「糖尿病」などが疑われます。また、体内で炎症を引き起こす物質が増えるために体がエネルギーをたくさん使ってしまう悪性腫瘍や感染症、膠原病などの可能性も考えなければなりません。

急激な体重減少が見られるときは、早めに病院を受診しましょう。

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そもそも更年期に太りやすくなるのは何故?

ここで、更年期に体重が増えてしまう原因についてもおさらいしておきましょう。瘦せる理由とともに把握することで、健康的な毎日の実現に一歩近づくことができます。


ホルモンバランスの変化

女性ホルモンの一種である"エストロゲン"の減少は、更年期の体重増加を引き起こす原因の一つであると考えられています。

エストロゲンには悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすといった脂質代謝改善作用があります。従って、更年期になるとこのエストロゲンの分泌量が減少し、脂質代謝異常が起きやすくなり、結果として体重が増加してしまいます。また、女性ホルモンの減少による相対的な男性ホルモンの上昇が、内臓脂肪の増加に関与しているとも言われています。

このような脂質代謝異常は動脈硬化の原因にもなりますので脂質の管理が重要になります。

加齢に伴う運動量と、筋肉量・基礎代謝の低下

加齢による運動量と筋肉量の減少は基礎代謝量の低下も引き起こしますが、これもまた更年期の体重増加の原因となります。

基礎代謝とは、体温を保つ、心臓を動かす、呼吸をするといった生命を維持するために必要な最低限のエネルギーで、安静時に消費されるエネルギーのことです。一般的に、年齢が若く、筋肉量があるほうが基礎代謝量は多く、歳を重ねるごとに減少していきます。

基礎代謝量が低下すると、毎日の生活で消費されるエネルギー量が減少するので、更年期以降に若い頃と同じような食生活をすると太ってしまう方がいらっしゃるのはこのためです。

また筋肉が落ちて動きが鈍くなると、体を動かす意欲が低下して、さらに運動をしなくなってしまうかもしれません。こうした悪循環が、さらなる体重増加を招く原因となる場合もあります。

食欲の変化

体重が増加する原因としては、更年期に訪れる食欲の変化も挙げられます。

更年期は、身体・心理・社会的に不安定で、ストレスを受けやすい時期と言われています。このようなメンタルの不調が、甘いものやしょっぱいものの過食や、アルコールの過剰摂取につながることがあります。

さらに、暴飲暴食は体重増加を招くのみならず、自己嫌悪や無力感も引き起こしかねません。そのため、更年期には体だけではなく心も労わってあげることが大切です。

太りすぎ・痩せすぎに注意

更年期に、健康的ではない痩せ方で体重が大幅に減ると、皮膚の乾燥やしわにより年齢より老けて見えたりすることがあります。栄養が不足している場合、免疫力の低下や、骨の脆弱化などの恐れもあります。また、閉経後はおもに脂肪組織でエストロゲンの産生が行われるため、適度な皮下脂肪はあった方がよいでしょう。とはいえ、脂肪組織で産生されるエストロゲンは閉経前に卵巣で産生されていたものとは異なります。
肥満は子宮体がんや乳がんのリスクになるため、更年期には、太りにくく痩せすぎない体づくりを意識し、適正体重の維持に努めましょう。

具体的には、下記のような習慣を日常生活に取り入れると◎。

自身の体質を理解する

定期的に健康診断を受けて、脂質検査や骨密度検査など、現状を知り、ご自身の体についての理解を深めることは非常に大切です。

また、普段の体調の変化をノートに記録するのもおすすめです。体重や体脂肪率、食事内容、運動、睡眠などについて記録をとれば、体調の波や更年期症状のパターンを把握できるようになります。

定期的な運動

年齢を重ねると筋肉量が減って、しぼんだようなやせ方をすることがあります。筋肉量を維持して、メリハリのある魅力的な体を目指しましょう。

ウォーキング、ランニング、水泳、エアロビクスなどの有酸素運動と、筋トレなどの無酸素運動を組み合わせると、全身を健康的に引き締めることができます。
また、体を痛めてしまわないように、運動前後には適切なストレッチを取り入れましょう。

無理な食事制限をせず、よく噛んでバランス良く食べる

食事を抜いたり、同じ食材ばかり食べたりする偏った食生活は体に負担をかけ、急激な体重減少を招きます。たんぱく質やビタミンを含む食材をバランス良くとることを心掛け、よく噛んでゆっくり食べましょう。

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ストレスを溜め込まない

ストレスが溜まると、活動的な交感神経と、心身をリラックスさせる副交感神経を上手に切り替えることができなくなり、心身のバランスが崩れて食欲が落ちてしまいます。

自分なりのストレス解消法を見つけ、心の負担を取り除きましょう。規則正しい生活を送り、お風呂にゆっくりつかるだけでも、リラックス効果がありますよ。

エクオールなど、更年期におすすめのサプリメントをとる

体重減少が更年期症状によるものであれば、女性ホルモン(エストロゲン)と似た働きをする、「エクオール」を含有したサプリメントを取り入れるのも一案です。

「エクオール」は大豆イソフラボンが腸内細菌で代謝されて産生されます。しかし、大豆を食べてもすべての人が「エクオール」を産生できるわけではなく、日本人女性では半数ほどの人が産生できていないと言われています。これまでに紹介したことを実践しながら、サプリメントも活用されるとよいでしょう。

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更年期症状の治療をして根本的な解決を図る

更年期症状が重くつらいようなら、迷わず医療機関へ。専門医と相談して漢方療法やホルモン補充療法(HRT)などを選択してみるのもよいでしょう。

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更年期に関するよくある質問

最後に、更年期について多くの方が疑問に思っていることに、お答えしていきたいと思います。更年期についての知識を身につけておけば、健やかな毎日を送るためのヒントが得られるかもしれません。


何歳から更年期になるのですか?

閉経の前後5年ずつ、計10年間が"更年期"と呼ばれます。平均的に日本人女性が閉経する年齢は50歳前後といわれていますが、個人差が大きく、早い方だと40代前半、遅い方だと50代後半で閉経を迎えます。

更年期になると、女性ホルモンの分泌量が大きくゆらぎながら減少していきます。この変化に伴って表れる症状がいわゆる更年期症状で、本記事で解説した体重の増減もそのうちの一つです。そのほかの代表的な症状としては、急な顔のほてりや発汗、肩こりや手足の冷えなどが挙げられます。

もし気になる症状がおありでしたら、それは更年期の訪れかもしれません。時には症状が重く日常生活に支障をきたすこともあります。そのような状態は"更年期障害"であり、医療機関で治療を受けることをおすすめします。


女性ホルモンのはたらきとは何ですか?

女性ホルモンの主な役割は、妊娠、出産などに備えるほか、体の健康を維持することです。

女性ホルモンには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)があります。それぞれ次のようなはたらきをしています。

エストロゲンとプロゲステロンの主なはたらき

エストロゲンのはたらき
  • 子宮内膜を増殖させ妊娠に備える
  • 腟に潤いを与える、腟の細菌増殖を防ぐ
  • 乳房を発育させる
  • 骨量を保持する
  • 血管の健康を保ち動脈硬化を予防する
  • 脳を健康に保つ
  • 発毛を促進する、肌のつややはりを保つ
プロゲステロンのはたらき
  • 子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整え、妊娠時に子宮内膜を維持する
  • 体温を上昇させる
  • 子宮内膜の増殖を抑え、子宮体癌の予防に働く
  • 乳腺を発達させる

これらのホルモンは、月経周期によっても変動しますが、更年期には、特にエストロゲンは大きくゆらぎながら減少するので、女性に様々な症状をもたらします。更年期を理解し、更年期に備えて、健康的な生活を実現したいところです。

適正な体重を維持して、揺らぎやすい体を整えよう

更年期は、放っておくと太ったり痩せたり、どちらかに大きく振れやすい時期。この時期、太るのは仕方ないとあきらめて、食事や運動に気を配らずにいると、生活習慣病のリスクを高めてしまいます。反対に、痩せすぎも心身に大きな影響を及ぼします。

更年期ならではの体の変化と上手に付き合って、太りすぎず、痩せすぎないすこやかな体を目指しましょう。

SUPERVISERこの記事を監修した人

針金先生

PROFILE

針金 永佳 (はりがね えいか) 医師

医学博士
専門分野:婦人科

東京ミッドタウンクリニックに勤務。日本医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医。周産期新生児医学会周産期専門医。女性医学学会女性ヘルスケア専門医。新生児蘇生法「専門」コース修了。由利組合総合病院産婦人科、日本医科大学武蔵小杉病院 女性診療科・産科を経て現在に至る。

東京ミッドタウンクリニック:https://www.tokyomidtown-mc.jp/

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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