おりものの色やにおいが更年期で変化?女性のデリケートな悩み対策(2025年更新版)

おりものは、腟内の自浄作用を助けたり潤いを保ったりするだけでなく、健康状態を示すサインの役割もあります。そして更年期になると、おりものの色やにおいなどに変化が生じます。
こうした変化は、なぜ起こるのでしょうか。

本記事では、おりものの色やにおいが変わる要因や、変化があった際に考えられる疾患についてもお伝えします。
「おりものの色が前と変わった気がする......」とお思いの方は、ご一読ください。

※本記事は、2019年7月26日公開版を更新したものです

そもそも、おりものとは

おりものは、子宮や腟の分泌物が混じった粘性のある液体です。

おりものに含まれているもの

  • 子宮内膜・子宮頸管・腟壁の分泌物
  • 卵巣や腟内の古い細胞などが集まった粘液
  • バルトリン線・皮脂腺・汗腺からの分泌液

主な役割は、腟に細菌が侵入するのを防ぐ自浄作用と、受精の手助けです。
色・量・においが以下の状態であれば正常といえます。

おりものの正常な状態



  • 透明か乳白色
  • 下着に付着して乾くと黄色になる
  • おりものシートでカバーできる量
  • 排卵の時期には量が増える
におい
  • ほとんどにおわないが、酸っぱいにおいがすることがある
  • 月経前に強くなることがある

上記の状態から変化するケースについては、以下で解説いたします。

おりものの量や性状は世代によって変化する

おりものとの長い付き合いの中で、その色や量、粘度が定期的に変化することを感じている女性は多いはず。実際、おりものは女性ホルモン(エストロゲン)と密接な関係があり、年代によって量や状態に変化が表れます。

特に、女性ホルモンが減少し始める40代以降は、これまでとはちょっと違った変化が見られやすい時期。まずは年代ごとに、おりものに表れる一般的な変化を確認しておきましょう。

■年代別・おりものの変化

<20代・30代>
女性ホルモンの分泌がピークを迎える時期で、おりものの量は多く、周期も安定している。

<40代>
女性ホルモンの減少に伴い、おりものの量が徐々に減ってくる

<閉経後>
閉経から2~3年経つと女性ホルモンの分泌がほとんどなくなるため、おりものが出なくなる。腟内が乾いて自浄作用が弱まり、腟炎を起こしやすい。炎症によって、これまでと異なる黄褐色のおりものが出ることも。

おりものの正常なにおい・危険なにおいの違いとは?

おりもののにおいは、健康な状態であれば、腟内は酸性に保たれているため、少し酸っぱいようなにおいがすることがあります。これは、特に気にする必要はありません。

ただし、においが通常よりも強く感じられる場合は、何らかの原因で免疫力が低下して雑菌が繁殖していたり、尿や便などの汚れが落ちていなかったりする可能性があります。

いつもと明らかに違うにおいや悪臭がするときは、細菌性腟炎や性感染症などの病気が潜んでいるかもしれません。生臭さや刺激臭を感じたら、できるだけ早く婦人科を受診してください。

更年期の女性が注意したいおりものの変化

おりものの状態には個人差があるため、正常かどうかを明確に判断する基準はありません。しかし、変化の中には病気のサインが隠れている場合もあるため、日頃から自分のおりものの状態をチェックしておき、変化にいち早く気付けるようにすることが大切です。

特に、更年期の女性に多いのが「萎縮性腟炎(老人性腟炎)」です。発症すると、おりものに変化があらわれ、悪臭がしたり、色が変化したりすることがあります。

萎縮性腟炎とは?

健康な腟は、肌と同じように細胞の新陳代謝によって自浄され、酸性の状態を維持しています。このとき、グリコーゲンという物質が粘膜とともにはがれ落ち、腟の常在菌によって乳酸に変わることで腟内のpH(ペーハー)を酸性に保ったり、細菌の侵入や増殖を防いだりしています。

ところが、年齢とともに女性ホルモンの分泌量が減ると、腟粘膜の萎縮や腟の乾燥が起こるほか、グリコーゲンも減って、腟は次第に酸性を維持できなくなってしまいます。こうして腟の自浄作用が低下し、炎症が起きた状態が萎縮性腟炎です。

萎縮性腟炎になると、腟壁が薄くなって乾燥したり、腟自体が萎縮したりして、痛みやかゆみといった症状が起こります

さらに、腟を守るグリコーゲンが減ることでバリア機能が失われて抵抗力が落ちるので、フェムゾーン周辺に常在している大腸菌などの雑菌が腟に入り込んで繁殖し、おりものから強い異臭がする細菌性腟炎に発展する場合もあります

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どんなときにおりものは変化する?

月経の直後は一時的におりものの量が減りますが、排卵期に向けて少しずつ量が増えるようになります。その後、約2~3日間の排卵期にピークを迎え、透明のゼリー状のよく伸びるおりものが分泌されます。これは、受精の手助けをするためです。
排卵期が終わり、生理前の黄体期という期間に入ると、白~黄っぽい粘り気のあるおりものが出ます。

このようなサイクルでおりものが出るのは、女性ホルモンが正常に分泌されている証拠であり、自然な現象です。

おりものの色でわかる体の危険信号

萎縮性腟炎以外にも、注意したいおりものの色があります。いつもは透明から乳白色のおりものが、茶褐色やピンク・赤に近い色、黄色~緑っぽく変化した場合は、病気が隠れている可能性も

更年期の女性が気を付けたい萎縮性腟炎では、先に挙げたおりものの量の増加や悪臭のほか、色もグレーや黄緑色に変化することがあります。

明らかな色の変化があるときは疾患の可能性を疑い、腹痛や発熱、不正出血などがないかといった体調の変化も見ながら、婦人科を受診しましょう。

■おりものの色から見る病気の可能性

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なお、おりものは下着について乾くと黄色っぽく変化するため、下着につく前のおりものの色を確認するようにしてください。

おりものに異常が出る病気の詳細

おりものの色や見た目に違和感がある場合、何らかの病気を発症しているかもしれません。
以下では、おりものに異変がみられたときに考えられる病気について解説いたします。

トリコモナス腟炎

トリコモナス腟炎は、原虫が性器内に入り込むことで引き起こされる炎症です。主に性交渉により感染しますが、ほかにも下着やタオル、便器や浴槽によって感染する場合もあるので、性交渉の経験がなくとも発症することがあります。

トリコモナス腟炎を発症すると、おりものに以下のような変化がみられます。

トリコモナス腟炎によるおりものの変化

  • 悪臭が強くなる(魚の腐敗臭のようなにおいになることがある)
  • 泡状になる
  • 褐色または黄緑色に変色する

また、自覚症状はおりものの変化だけではありません。排尿時・性交時の痛みや、腟内の激しいかゆみなどの症状もあります。

カンジダ腟炎(カンジダ症)

カンジダ菌とよばれる真菌(カビ)が異常に増殖することで起きる炎症を、カンジダ腟炎(カンジダ症)といいます。性交渉による感染もありますが、疲れているときや強いストレスを感じているときなど、抵抗力が弱まっているときにカンジダ菌が増えて発症します。
目立つ症状は、腟や外陰部のかゆみとおりものの変化で、激しく強いかゆみがあるのが特徴です。

腟カンジダ(カンジダ症)によるおりものの変化

  • 白く濁ってポロポロとした状態になる
  • 量が増える

おりものの変化も特徴的で、酒かすやカッテージチーズのような状態になります。

クラミジア感染症

クラミジア感染症もまた、陰部のかゆみやおりものの変化がみられる症状として挙げられ、主に性交渉によりクラミジア・トラコマチス菌に感染することで発症します。

初期段階では自覚症状が目立たないことが多いですが、陰部の軽いかゆみや痛み、下腹部痛のほか、おりものに以下のような変化が起きることがあります。放置してしまうと、長期的には卵管炎を引き起こし不妊症の原因となることがあります。

クラミジア感染症によるおりものの変化

  • 白や黄色っぽく変色する
  • 量が増える

感染していることに気づかない女性も多いのですが、特に症状がなくても妊娠を希望する方は一度検査を受けることをお勧めします。また、少しでも「おかしいな」と思ったら早急に医療機関を受診してください。

淋菌感染症(淋病)

淋菌感染症(淋病)は、クラミジアに次いで感染者数の多い性感染症です。女性は自覚症状が軽いため、無自覚のうちにパートナーに感染させてしまうことがあります。
自覚症状がある場合は、外陰部の軽いかゆみや排尿時の痛み、下腹部痛が起こることがあります。

そのほか、おりものでみられる異変は以下です。

淋菌感染症によるおりものの変化

  • 黄色っぽく変色する
  • 量が増える

感染がすすむと、クラミジア感染症と同様に子宮頸菅炎や卵管炎を起こすことがあり、不妊症の原因になります。

細菌性腟炎

腟内の菌のバランスが崩れ、雑菌が多い状態になると、細菌性腟炎とよばれる疾患が起こることがあります。先ほど解説したカンジダ腟炎との違いは、さまざまな雑菌が増加して起きるという点です。

細菌性腟炎によって起きるおりものの変化については以下をご覧ください。

細菌性腟炎によるおりものの変化

  • 量が増える
  • 黄~茶色に変色する
  • 生魚やイカのようなにおいになる

気になるフェムゾーントラブルをケアするには?

おりものの変化に伴うフェムゾーンのトラブルの中でも、「周りの人に気付かれてしまうのでは?」と心配になるのがにおいです。

におい予防の基本は、常にフェムゾーンを清潔に保つこと。自分のフェムゾーンをよく見て、腟や肛門の位置を把握し、汚れを残さないようにしましょう。

ただし、洗いすぎると腟のバリアがはぎ取られ、萎縮性腟炎と同じ状態になってしまう可能性も。洗浄力が強いボディソープではなく、フェムゾーン専用の洗浄剤を使って、優しく洗うことをおすすめします。

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フェムゾーンの正しい洗い方

洗うときは、つま先を外側に広げて腰を落とし、アンダーヘアから順に尿道口、腟口、肛門という順番で、前から後ろへ、雑菌や汚れが多いほうに向かって洗い進めていきましょう

特に、大陰唇と小陰唇のヒダの内側は汚れが溜まりやすいので、丁寧に洗ってください。

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洗い終わったら、フェムゾーン専用のジェルやクリームを使って、しっかり保護することも忘れずに。

なお、清潔にしていてもにおいが気になる場合は、おりものシートを利用し、こまめに取り替えて使いましょう。生理中は蒸れや経血によってにおいがきつくなることもあるので、通気性の良い下着やナプキンを選ぶことで改善が期待できます

ただし、萎縮性腟炎などによるトラブルは、ホルモン補充療法(HRT)、もしくは女性ホルモンが含まれている腟坐薬などで、根本的な解決を図る方法もあります。

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監修者・産婦人科医の吉形玲美先生より

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更年期を迎えると、一般的におりものの量は少なくなります。だからこそ、急に量が増えたり、色やにおいに変化が表れたりした場合は、体の中で何かしらのトラブルが起きているサインであることも考えられます。

気になる変化は放置せず、早めに婦人科の医師に相談すること。その際、おりものの量が増え始めた時期や、色やにおいの状態をきちんと伝えられるようにしておくと、診察がスムーズに進みますので、日頃からチェックするようにしましょう。

『40代から始めよう!閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』

今回、お話を伺った吉形玲美医師の著書
『40代から始めよう!閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』には、
更年期前後の時期を心晴れやかに過ごすための方法がギュッと詰まっています。
閉経のしくみから、更年期を迎えたあとの不安を解消する術まで、
女性の健康を守るための情報が満載です。

フェムゾーンの悩みを解決するヒントを得るためにも、ぜひ手に取ってみてください。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
ドクターズコラム
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