閉経の前兆かも?月経(生理)が終わる際の兆候やサインとは(2025年更新版)

「更年期を迎えて月経不順が起きてきたら、一度婦人科で相談してほしい」というのが多くの産婦人科医の意見のようです。しかし、「今月はたまたまこなかっただけ」「年齢的に閉経にはまだ早い」などと思って、やり過ごしてしまう女性は少なくありません。
そこで、更年期症状との関連性も深い閉経について、そのメカニズムと、閉経の前兆として気を付けたいサインについて解説します。
※本記事は、2018年11月27日公開版を更新したものです
そもそも月経(生理)はどのようにして開始するのか
閉経についてスムーズに理解するために、改めて、月経(生理)のメカニズムをおさらいしましょう。
そもそも月経とは、約1か月に1回、子宮内膜がはがれて体外に排出される現象のことです。
女性には受精する準備のために、卵巣から卵子が排出される時期(排卵期)があり、この間に子宮内膜も厚くなり、受精卵を受け入れる体制が整っていきます。ところが、卵子が受精しなかった場合には子宮内膜が不要になり、体外に排出されます。これが月経(生理)です。
こうしたサイクルに大きく関わっているのが、女性ホルモンです。思春期になり卵巣から排卵が始まると月経が開始します。そして妊娠しないと月経が来る。このサイクルの中で女性ホルモンの分泌は常に変動(増減)しています。
閉経とはどういうもの?
女性にとって、月経は初潮を迎えて以降、毎月当たり前のようにやってくるもの。ところが、年齢を重ねると卵巣の機能が徐々に消失して月経が不規則になり、やがて閉経を迎えます。
また、2012年に徳島大学の安井敏之医師らが発表した論文(※)では、平均閉経年齢は50~52歳とされています。
※Toshiyuki Yasui, Kunihiko Hayashi, Hideki Mizunuma, Toshiro Kubota, Takeshi Aso,Yasuhiro Matsumura, Jung-Su Leef, Shosuke Suzuki :Factors associated with premature ovarian failure, early menopause and earlier onset of menopause in Japanese women,Maturitas, 72, 249-255, 2012
閉経の年齢には個人差がある
ここで認識しておきたいのは、上記の52.1歳というのは、あくまでも閉経の平均年齢であり、閉経の年齢には個人差があるということです。実際には、45歳よりも前に閉経する方や、60歳近くまで月経が続く方もいらっしゃいます。
閉経の年齢に個人差があるということは、更年期が到来する時期も人によって異なることを意味します。ネット上の情報や同年代のご友人の話だけで判断するのではなく、自分の体ときちんと向き合い、自身の閉経時期やそれに伴う更年期に備えてみてはどうでしょうか。
閉経と更年期、女性ホルモンの関係って?
女性の卵巣機能は40歳を過ぎた頃から衰えはじめ、排卵期に卵子を排出する卵胞も次第に減り、月経のサイクルが乱れて閉経に向かっていきます。
そして、更年期とは閉経の前後約10年にあたる期間のことをいい、閉経の平均年齢から考えると、40代半ばから50代半ばまで。卵巣の機能低下によって女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少する時期で、ホルモンバランスが崩れて心身にさまざまな症状が現れるようになります。中には、30代後半から40代半ばの、まだ若いうちから更年期症状に似た症状を経験する人もいます。
更年期前後の女性ホルモンの分泌量は、次のように変化していきます。
■女性ホルモンの分泌量の変化
プレ更年期:(目安の年代)30代後半~40代半ば
年齢的にはまだ更年期ではないものの、20〜30代といわれる女性ホルモンの分泌のピークは超えており、心身のゆらぎが出始めます。この時期を、プレ更年期とも呼びます。
更年期:(目安の年代)40代半ばから50代半ば
卵巣の衰えとともに、卵巣から分泌される女性ホルモンの分泌が減り、ホルモンバランスが乱れて更年期症状が現れるようになります。症状の種類は多岐にわたり、のぼせや発汗(ホットフラッシュ)、肩こり、めまいなど、身体的なものに加え、イライラのような精神的な症状が出る場合も。
さらに下記のように、月経にも変化が現れるでしょう。
・月経周期が短くなる
・月経量が極端に多かったり少なかったりする
・月経日数が減る
そのうち月経周期が長くなり、やがてこなくなって閉経に至ります。
ポスト更年期:(目安の年代)50代半ば以降
閉経を迎えた50代半ば以降は、心身ともに落ち着きを取り戻す時期。
一方で、体が女性ホルモンに守られなくなるため、皮膚や粘膜の乾燥が進行したり、血管が弱くなって心血管系の疾患になりやすくなったり、骨密度が低下して骨粗しょう症のリスクが高まったりするため、注意が必要です。
その症状の原因、更年期障害/症状ではないかも?
「更年期による不調だろう」と思い病院に行ってみたものの、実は違う原因によるものだった、というケースも少なくありません。ここでは、更年期に似た症状を引き起こす3つの原因を紹介します。
なお、原因によって効果的な改善方法も異なるので、更年期症状のような不調がみられる場合は婦人科を受診することをおすすめします。
PMS(Premenstrual Syndrome)
PMS(月経前症候群)とは、月経前の精神的、身体的不調のことです。精神的症状としてはイライラや抑うつ、身体的症状としては頭痛や倦怠感、むくみなどが挙げられます。
PMSが起きる要因は、女性ホルモンの変動が影響していると考えられています。排卵後に分泌が増える黄体ホルモンによる症状、また、女性ホルモンの変動による脳内のホルモンや神経伝達物質のバランスが乱れにより不調が現れるとされています。
PMSの緩和には、リラックスする時間を設けたり、運動してストレスを発散したりなど、薬に頼らない方法も勧められますが、症状がひどい場合には婦人科を受診し、低用量ピルなどホルモン治療による対策を検討するのもよいでしょう。
甲状腺疾患
バセドウ病や橋本病といった甲状腺機能異常が、更年期の不調と似た症状を引き起こしているかもしれません。
甲状腺機能異常は、甲状腺ホルモンの乱れによって発症する疾患です。発症者は20~50代の女性に多く、発汗や体重減少、一方では冷えやむくみ、月経不順といった症状が現れます。多様な症状がみられるので、更年期障害に似た不調以外にも、心臓病やうつ病などさまざまな病気と誤認されることもあります。
甲状腺機能異常の治療には、薬の投与で甲状腺ホルモンを安定させる薬物療法が主体ですが、まれに甲状腺の部分切除、ないし全摘出手術などがあります。甲状腺の病気と診断された場合でも、適切な治療を受ければ、健康な方と同様の生活を送ることができます。
貧血(鉄欠乏性貧血)
女性が陥りがちな鉄欠乏性貧血も、更年期障害と似た症状を引き起こす原因の一つです。
鉄欠乏性貧血になると、体内に酸素が十分に行き渡らなくなり、全身が酸欠状態になります。その結果、倦怠感やめまい、耳なり、肩こり、頭痛などの症状が現れるのです。
女性の場合、鉄欠乏性貧血の多くは過多月経や鉄分の摂取不足に起因します。治療法としては、不足した体内の鉄分を補うために、鉄剤の内服や静脈注射による投与といった方法をとるのが一般的です。また、食事のみで症状を改善することは難しいものの、肉や魚など鉄分の含まれた食材を取り入れたバランスの良い食事を心がけることも、鉄分の摂取不足を緩和するために欠かせません。
閉経の前兆ってあるの?
誰もがやがては迎える閉経ですが、そこに至る過程は人によってさまざまで、一概にはいえません。
多くの人が経験する閉経までのパターンをご紹介しますので、参考にしてみてください。
月経周期が短くなる
更年期を迎えると、それまで通常なら25〜38日周期で訪れていた月経の周期が早まります。同時に、月経量が少なくなり、月経が続く日数も短くなる傾向があります。
少ない量の月経が8日以上続くようになる
卵巣機能が低下してホルモンバランスが崩れると、月経の周期が短い・長いにかかわらず、少ない量の月経が8日以上続くようになることがあります。長い人では、2週間〜1ヵ月続くケースもあるようです。
基礎体温の変動がなくなる
日ごろから基礎体温を記録している方は、それを参考にすることで閉経の前兆を掴めるかもしれません。
正常時の基礎体温は、月経が始まってから排卵日までの約2週間は低温期、排卵日から月経直前までは高温期と2つの体温変動があります。ところが閉経が近づいてくると、女性ホルモンの分泌量の減少に伴い、月経から排卵日までの期間が短くなったり、排卵後の高温期の時期が短くなるなどの変化が出てきます。
そうして高温期と低温期の区別がつかなくなり、月経のこない状況が1年以上続くようであれば、閉経したといえるでしょう。
月経周期が長くなる
続いて見られるのが、月経の周期が2ヵ月に1度、3ヵ月に1度...というように、長くなっていく状態です。
大切なのは、ここで「更年期だから」と自己判断しないこと。何らかの病気による不正出血の可能性もあるので、一度産婦人科に相談しましょう。
こういった出来事を経て、最終の月経開始から1年経っても月経がこなかったら、閉経と診断されることになります。ただ、こうした月経の変化はあくまでも一例に過ぎません。
ほかにも閉経の前兆として、経血の色が茶色や黒っぽい色になる、おりものの量が少なくなるなどが挙げられます。
医療検査で閉経のタイミングを調べる方法
閉経のタイミングは、婦人科で受けられるホルモン検査によってある程度予測が可能です。
ホルモン検査とは、血液中に含まれるホルモン量を測定する検査です。閉経のタイミングを知るためにはエストロゲンと卵胞刺激ホルモンの数値を確認します。
エストロゲンは排卵周期があることで維持される女性ホルモンで、この数値が低い場合には、閉経の可能性が考えられます。
卵胞刺激ホルモン(FSH)は排卵の準備を促す下垂体(脳)ホルモンです。検査にあたっては卵巣機能を確認するために用いられ、エストロゲンより早期に変化がはじまります。この数値が基準値を超えてくると、閉経が近いと判断できます。
閉経に関するQ&A
最後に、閉経に関する疑問にお答えします。
ピルを服用していても閉経したことはわかる?
ピルを服用している場合には、閉経の判別がつきにくくなります。というのも、服用中は、体内の女性ホルモン量が安定した状態が続くからです。そのため更年期に入っても不調を感じるようなことは起こりづらく、基礎体温の変化もありません。
ただし何も変化がないというわけではなく、「今までと何かが違う」と感じたり、気分や体調が安定しなかったり......といったことは起こりえます。このような場合には主治医に相談することが大切です。
子宮を摘出したら月経はこなくなる?
手術により子宮を摘出した場合には、月経はこなくなりますが、卵巣を残しており、それが機能している場合には排卵周期は保たれ、エストロゲンの分泌は依然として行われます。つまり、子宮の摘出がホルモンレベル上は閉経に直接つながるというわけではないため、排卵周期がある間は更年期の不調を感じることは本来ありません。閉経の確認には前述の基礎体温記録やホルモン検査が有用です。
更年期による体調不良と思われる症状や基礎体温の変化を確認したら、婦人科の受診を検討してみてください。
監修者・産婦人科医の吉形玲美先生より
閉経は、女性の体にとって大きな節目。月経がなくなるだけでなく、閉経後は病気のリスクも高まります。
とはいえ、これらは閉経したから起こるものではなく、女性の体は30代半ばを過ぎたあたりから、少しずつ変化が始まっています。特に、ホルモンバランスが崩れる更年期を迎えたら、ちょっとした不調も見逃さないようにすることが大切。気付いた時点できちんと対処し、解決しておけば、必要以上に恐れることはありません。
女性の中には、閉経を迎えるのに抵抗感を持つ人が少なからずいます。しかし、閉経は、長年わずらわしく思っていた月経の不快感や月経痛から解放されるということでもあります。閉経後の体に何が起きるかを把握し、閉経を知らせるサインに早めに気付いて、「第2の人生」を楽しく、すこやかに過ごしましょう。
『40代から始めよう!閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』
今回、お話を伺った吉形玲美医師の著書
『40代から始めよう!閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』には、
更年期前後の時期を心晴れやかに過ごすための方法がギュッと詰まっています。
閉経のしくみから、更年期を迎えたあとの不安を解消する術まで、
女性の健康を守るための情報が満載です。
フェムゾーンの悩みを解決するヒントを得るためにも、ぜひ手に取ってみてください。
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。recommended
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