精液に着目して未知の世界に挑む!萩原啓太郎氏に聞く、チャレンジを楽しむコツ

輝く人

一度しかない人生だから、設計図のない仕事がしたい――父の背中を追って研究者を志し、九州の産業医科大学で助教として教鞭をとっていた株式会社ダンテの代表取締役・萩原啓太郎さん。研究者時代に培われた未知なるものへの探求心は、みずからの人生にも及び、研究職からビジネスの領域へという、稀有な転身を遂げました。

「未知こそ自分の行動原理である」と話す萩原さんは今、精液の成分に着目した、他に類を見ないビジネスに取り組んでいます。それが、郵送でできる妊活のための男性向け検査「BUDDY CHECK(バディチェック)」です。

リスクを背負って新たな世界に飛び込み、先駆者として悩みながら前進を続ける萩原さんに、チャレンジを楽しむためのヒントを伺いました。

一度きりの人生だから――アカデミックの世界からビジネスの世界へ

――研究者として充実した毎日を送りながら、転職を決意されたきっかけを教えてください。

萩原啓太郎さん(以下、萩原):助教として大学で教鞭をとっていたとき、教えることにやりがいを感じる一方で、ふと「人生の設計図が見えた」と思ってしまったんです。うまくいけば教授になって、定年を迎えて...という。

そこで、一度しかない人生なのに、これでいいのかと自分に問いかけました。新しい発見があったときこそ刺激的でしたが、研究自体は次第にルーティンワークになりつつあり、マンネリを感じていたことも一因だったと思います。

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――設計図のない未来を探して、ビジネスの道を選ばれたわけですね。ビジネスとは、どこかで接点があったのでしょうか。

萩原:大学時代、築地の国立がん研究センターで研究をしていました。研究室では、研究者だけでなく、医師や企業人もいたので、初めて異業種とふれ合い、研究以外の視点や考え方を学びました。

そのとき、ある人が「研究者より、企業で働いたほうが輝くんじゃないか」と言ってくれたんです。それまでは、研究者になることが自分にとって最善であると信じていたので、人生に別の選択肢が示された瞬間でした。

心のどこかに残っていたこのときの記憶が、30歳を前に「このままでいいのか」とみずからに問いかけたとき、一気に発露したような気がします。

――実際に転職してみて、いかがでしたか?

萩原:ビジネスをまったく知らない中でのチャレンジだったので、ゼロからいろいろなことを学べるところがいいと考えて、名古屋大学発のベンチャー企業である株式会社ヘルスケアシステムズに入社しました。毎日が新しいこと、知らないことの連続で、自分の未熟さを痛感させられましたね。

ただ、未知なるものへの探求心が満たされる喜びは大きく、ポジションが上がるとともにスキルも磨かれているという実感も自信になりました。リスクを恐れず未経験の分野に飛び込めるのは、私の強みだと思います。常に先駆者として挑戦し続けた研究者時代の経験が、活きているのかもしれませんね。

未開拓の分野には、リスク以上に可能性がある

――株式会社ダンテでも、精液の成分という新しい分野にチャレンジしていらっしゃいますね。

萩原:精液に関する研究は、ヘルスケアシステムズ社内でプロジェクトとして取り組んだ後、ブランディングのために別会社として立ち上げが決まりました。現在は、精液成分から男性の健康とコンディションを調べる、BUDDY CHECK™という郵送検査キットを販売しています。

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精液成分検査「BUDDY CHECK™」。精子のパフォーマンスや体のコンディションにかかわっていると考えられる、精液成分を調べることが郵送でできます。

また、そもそも男性不妊という概念自体が一般にあまり浸透しておらず、みずから進んで検査をしようという男性が少ないことから、情報発信やソリューションの提供に利用できる場として「男未来研究所」というラボのようなものも立ち上げました。いずれは、医師や企業など、さまざまな人が集うプラットフォームとして活用したいと考えています。

――精液というのは、一般的には廃棄されてしまうものですよね。なぜ、そこに注目しようと思われたのでしょうか。

萩原:これまで、価値あるものとして精液が注目されることはほとんどなく、この分野の研究は大きく立ち遅れていました。しかし、実際に調べてみると、精液中には精子の数を増やす成分や、精子の運動性を高める成分など、精子が受精するために必要な物質がたくさん含まれていることがわかったのです。

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ほぼ、誰も手をつけていない分野だけに、リスクや課題はあるにせよ、それ以上にビジネスチャンスになる可能性が大きいと考えました。現時点では、「精液中の成分を調べることによって男性が自分の体の中の状態を知ることができる」という段階にとどまっていますが、今後はより検査の価値を高めていきたいと思っています。

――男性の意識が高まれば、パートナーとの関係にも良い影響がありそうです。

萩原:男性の多くは、不妊が気になっても「知るのが怖い」という理由で、病院に行かないといわれています。しかし、BUDDY CHECK™なら、自宅で精液を採取して郵送するだけで良く、結果もスマホでチェックできますから、上手に活用していただきたいですね。

購入しにくいという方のためにウェブでも販売していますし、提携医療機関にも拡大しています。継続的に使用してコンディションの変化をチェックし続ければ、パートナーに向けて「いっしょにがんばっている」というメッセージにもなるのではないでしょうか。

課題をひとつクリアする度に自分をほめる

――男性の意識を変えると同時に、企業や医療機関に検査の意義を知ってもらうことも重要ですね。

萩原:前例がないので採用しにくいという壁を、いかに切り崩していくかが喫緊の課題です。先駆者ならではの悩みといえるかもしれません。一方で、自分たちが新しいパラメーターを作っているという感覚と、少しずつ私たちの目的を理解してくれる企業や医療機関が増えつつあることは大きなやりがいです。

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これから、さらに研究を進めていけば、ED(勃起不全)のマーカーとして活用したり、前立腺がんや男性更年期をはじめとする男性特有の疾患の発見・治療に役立てたりといった、未来を提示できるかもしれません。私にとって、仕事は自分の可能性にチャレンジできる場所であり、自分に何ができるのかを表現できる場所ですね。

――萩原さんのように、人生の変化やチャレンジを楽しめたら素敵ですね。ご自身が前向きになるために心掛けていることを教えてください。

萩原:私は、常に「このままでいいのか」「次に何をすべきか」を考えて行動することを心掛けています。悩み続けるのは苦しいので、「ひとつ課題をクリアする度に自分をほめる」のが継続のコツですね。

悩む度に一つひとつクロージングしていく意識を持つと、いつも「今」の自分に集中できるようになり、その瞬間を楽しめるようになりますよ。

<プロフィール>
萩原啓太郎(はぎわら・けいたろう)

1986年東京生まれ。東京工業大学の博士課程卒業後、九州の産業医科大学にて助教授として研究開発に携わる。2016年、ヘルスケアシステムズ入社。名古屋本社の責任者、取締役を経て、2019年1月から関連会社である株式会社ダンテの代表取締役に。転職に際して「好きなように生きていい」と背中を押してくれた妻の存在が最大のモチベーションであり、「自分はどんなに苦労しても、妻だけは幸せにしたい」と話す愛妻家。

(取材・文:藤巻史/写真:垂水佳菜)

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。

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