家事も仕事もやりたいけど動けない...更年期の無気力感との向き合い方

コラム・心地よいわたし

やるべきこともやりたいこともたくさんあるのに、心と体がついてこない――40代に突入した人の多くが襲われる、謎の無気力感。やりたくないけどやらなきゃいけない、やらなきゃいけないのにやる気になれない状況は、「こんなこともできないなんて」と自分を卑下する気持ちを生み出し、意欲と気力をさらに奪っていくという負のループを招きます。

つらい無気力感からくる悪循環を断ち切りたいときに役立つのが、潜在意識に隠された無気力の原因に向き合い、見えないダメージを癒やしていく心理カウンセリングの手法です。動けなくなるほど心がすり減る前に知っておきたい、更年期の無気力との向き合い方について、心理カウンセラーの半澤久恵さんに教えていただきました。

蓄積されたダメージが爆発して、無気力状態になる

――40代になって、バイタリティがなくなったという声をよく聞きます。

それまでは何事にもエネルギッシュに取り組めていたのに、急に気力が衰えたと感じる人は多いですね。

具体的には、「開業したばかりで、ブログなどで情報発信をしなければならないと思いつつ放置してしまう」「転職したいと思っているけど、行動が伴わない」というように、特定の物事に対する意欲の減退を訴える方がいる一方、家事にしても仕事にしても「とにかく全てが面倒で、やる気にならない」という方が目立ちます。

無気力感がつらいのは、やらなければならない仕事や家事が山積するという現実的な問題に直面するうち、「こんなこともできないなんて、自分はなんてだめなんだろう」「ほかの人にできていることが、なぜ自分はできないんだろう」と自分を責めてしまうこと。

やるべきことができてない状況に落ち込み、落ち込んでばかりで何もできない自分を嫌悪するという悪循環に陥ると、なかなか断ち切ることができません

――なぜ、このように突然無気力になってしまうのでしょう。

無気力になる原因は人によってさまざまです。もちろん、40代以降の方の場合は世代に起因するホルモンバランスの乱れが影響している可能性もありますが、年齢で一括りにできるものではありません。

明らかな原因となっているであろう、その方にとって大きな出来事があった場合を除いて、社会情勢や環境の変化、人間関係、家族関係など何らかのストレスが少しずつ蓄積され、それを処理できずにいた結果、急激に気力を奪われてしまうケースが多いでしょう。

――知らず知らずのうちに積み重なったダメージが、あるとき一気に表出するんですね。

人間は、おもに動きが活発なときに働いている交感神経と、リラックスモードのときに働いている副交感神経がうまく切り替わることで、心身のバランスを保っています。しかし、この切り替えがうまくいかず、怒りや不安、恐怖といった感情で交感神経が過剰になった状態が続くと、ピークに達した反動で一気に副交感神経(背側迷走神経※)が優位になることがあります。これが無気力な状態ですね。

※背側迷走神経(はいそくめいそうしんけい)...自律神経系の仕組みを示した「ポリヴェーガル理論」によると、副交感神経は「腹側(ふくそく)迷走神経」と「背側迷走神経」の2つに分けられるといわれています。
腹側迷走神経が人とコミュニケーションをするときに働く体の部位の調整を司る一方、背側迷走神経は心身をリラックスさせたり、胃腸を活発に働かせたりなど、消化や排泄、睡眠などを司っています。

ここでお話しているのは体の状態ですが、心で例えるなら、一人にひとつ用意されている感情のコップに少しずつさまざまな思いが溜まっていって、気付いたら許容量を超えてあふれてしまったようなイメージです。

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無気力に陥った理由を知り、自分を許す

――無気力な状態から抜け出す方法はありますか?

まずは、「溜まった仕事や家事がありながら無気力で何もできない自分」という、頭で渦巻く自分への批判の声から少し離れて、今の自分を労わりましょう。そうして少し休んでから、「無気力になる前に何があったか」という過去に目を向けてみましょう。

ただ、感情のコップが溢れてしまう人は、往々にして自分の気持ちに無自覚です。なぜこうなってしまったのかを考えても、思い当たる理由がないという人も多いでしょう。そんなときは、

「いつ頃から無気力な状態になった?」
「無気力になる前はどんな過ごし方をしていた?」
「本当に今、一番したいけどできていないことはなんだろう?」

と自分に問いかけて、思うように動けなくなる前後の自分の心の動きを追ってみてください

そうすると、「そういえば、3ヵ月前からリモートワークになった」「少し前から子供の反抗期がひどくなった」「もっと一人の時間を取りたい」といったような、自分の心に負荷をかけている出来事が見つかるはずです。

それでもピンとこない場合は、長く続きすぎて我慢することが当たり前になり、もはや問題とすら思っていないことが原因かもしれません。

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――無気力になった理由がわかれば、解決の糸口が見つかる気がします。

そうですね。ただ、無気力な状態になった自分を責める気持ちがとても強い方は、まずはその自責の念を和らげてあげる必要があります

例えば、無気力になる前に起きた問題として、「子供の不登校」があったとしたら、「子供のつらい気持ちに寄り添って、自分のことをケアするのも忘れてがんばってきたから気力がなくなったんだよね。こうなったことが悪いわけじゃない」というように、今の自分を許してあげましょう

自責のプレッシャーはとても大きくて、根本的な問題に起因する悩み以上に激しく心を疲れさせてしまうもの。人によっては、「どうして自分はだめなんだろう」と自分を責めるあまり、「このままの状態が続いたら、自分はどうなってしまうんだろう」と、未来への不安に発展することもあります。

根本的な問題は解決していなかったとしても、自責の念が和らぐだけで、心はとても楽になるんですよ。

――最後に、無気力な状態に悩む人に、アドバイスをお願いします。

がんばり屋さんほど、「よくあることだから」「みんなそうだから」という枕詞を付けて、苦しい思いにふたをしてしまいがちです。気力が湧かなくて動けないのは、がまんを重ねているうちにひどく消耗し、心がすり減っている証拠。そうなる前に自分の中にセラピストを立てて、「自分のエネルギータンクを満たすものはなに?」「タンクに貯めたエネルギーを奪い去っていくものはなに?」と問いかけ、答えを書き出してみましょう。

タンクを満たすものは、その人自身の五感で「好きだ」「幸せだ」と感じること。無気力感が強いときは、どんなに小さなことでも、自分が「好きだ」と感じることをたっぷり味わう時間を作ってみてください。

例えば、チョコレートが好きな方なら、ただチョコレートをたくさん食べるのではなく、本当においしいと思えるチョコレートを大事に味わってください。適当に食べてごまかすのではなく、丁寧に「自分を満たす」感覚を知り、堪能することが大事なんです

そうすると、自分をもっと大切にしたいと思えるようになるはず。いわば、心の筋トレですね。つらくなる前に少しずつ心の筋トレをして、もっと素直に自分を愛しんであげてください。


お話を伺ったのは...

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半澤久恵(はんざわ・ひさえ)さん

心理カウンセラー/セラピスト

大学卒業後、出版社へ入社。体調を崩したことをきっかけに、興味のあった心と体に関わる仕事をするため、アロマセラピーの道へ。サロンでセラピストとして働きながら、整体やアロマスクールの講師も務める。2012年にOAD心理セラピストの資格を取得。現在は自身のサロン「AROHAM」にて心と体にまつわる個人セッションを行うほか、心理学の講師としてセミナーなども開催している。
https://www.aroham-kee.com/

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。

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