心身をしっかり休ませるには?休めない裏にある記憶を紐解いてみよう

私たちの心と体は、アクティブモードにあるときの交感神経と、リラックスモードにあるときの副交感神経が、1日の中で活発に切り替わることによって、すこやかな状態が維持されます。
しかし、激しいストレスを受けて緊張状態が続くと、この切り替えがうまくいかなくなり、ふとした失敗や後悔をいつまでも引きずって、メンタルが低下したまま立ち直れない...といったようなことが起こりやすくなるのです。

心と体を健康に保つには、活発な活動で交感神経が優位に働いた後、緊張やストレスから解放されたリラックスタイムをしっかりとって、副交感神経を働かせることが大切。しかし、「休んでいるつもりなのに疲れがまったくとれない」と悩む人が多いのも事実です。

そこで、本当の意味で心身を休めることができないメカニズムを紹介した前編に続き、今回は「休むことが苦手な人が上手に休めるようになる方法」を心理カウンセラーの半澤久恵さんに教えていただきます。

<前編はこちら>
がんばり屋さんは要注意!?休んでいるようで、実は休めていない理由

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セルフイメージを形成している過去の記憶を見つけよう

――前編では、休みたいのにうまく休めないメカニズムについて教えていただきました。

「休んだほうがいい」「休むべき」と頭でわかっていても心と体が落ち着かず、どうしても活動してしまうときは、無意識のうちにどんな気持ちが働いているのか、自分の心の声を聞くことから始めましょうとお話ししました。

――そわそわしてしまうなら「ソワソワちゃん」、不安になるなら「不安ちゃん」というように、自分の中にある気持ちをキャラクターに見立てて、「なぜ今やらずにいられないの?」などと聞いてみるのは、確かに心の声をくみ取りやすい方法だと思いました。

ソワソワちゃんが「今日中に洗い物を片付けないとだらしないから」と答えたなら、その人は「すぐに片付けない自分はだらしない」「シンクに食べ終わったお皿をそのままにするみっともない私」といったセルフイメージを持っているかもしれません。

でも、現実には「そこにお皿がある」だけ。そのお皿を見てだらしないと思うか、明日洗えばいいやと思うかは、その人のセルフイメージや自分なりのルールによって異なります。

――休める自分になるには、セルフイメージやルールに気付き、それらを形成した経験に寄り添うことが第一段階でしたね。

「今日はパソコンもスマホも見ない!」と決めて、それを実行できるなら問題ないです。ですが、自分を縛るルールやセルフイメージがある限り、焦りや不安が消え去ることはなく、本当の意味で休むことは難しいでしょう。

セルフイメージやルールには、何かしら過去の経験が紐付いているはずですから、それを見つけていくのが、解決に向かうためのひとつの手。

おそらく、片付けができないことを「だらしない」と叱責されていたとか、「こんなこともできないなんてダメだね」と言われ続けていたとか、過去のつらかった記憶がよみがえるかもしれません。

思い込みのセルフイメージから解放されれば、衝動も手放せる

――でも、忘れていたつらい記憶を掘り起こすのには抵抗があります...。

そうですよね。でも、これはつらかった記憶を掘り起こすことではなく、そのときに感じていた悲しみなどをちゃんと受けとめてあげるのが目的なんです。

いやだった出来事は自分にとって気持ちいい思い出ではないので、普段は思い出さないように心の奥底にしまい込んでいます。そのため、この記憶を自分との対話の中で上手に引き出せる方もいれば、セラピーなどを受けないと引き出せない方も。

ただ、「何かある」ことがわかって、明確に言葉にできなくても抑えていた感情が解放されたら、そこからがスタート。つらかったよね、苦しかったよね、と自分に寄り添い、わき出てくるすべての感情を「ふむふむ」と受け止めてあげてください

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――わき出る感情を受け止めるだけでいいのでしょうか。

これで何が変わるのかと感じる方もいるかもしれませんが、まずはよくわからないままで構いませんので、自分の心の声を聞いて、それを受け止めてください。それを何度も試すうちに、何となくでも「こういうことかな」と気付いたりするケースも多くあるんですよ。

そうするうちに心の奥深くで思っていたことがわかるようになって、自分を縛っているものが思い込みによるセルフイメージ、無意識に作った自分ルールだったことが見えてきます。そして本当の気持ちを理解できると、動く必要はないシーンでもつい動いてしまう「衝動」を手放して、自分のペースで休めるようになっていくんです。

――過去の自分を癒やしてあげるような感覚ですね。

そうですね。同時に、「休むってこういうことだよ」「休むとこんなに気持ちいいんだよ」と体に教えるためのアプローチもしていきましょう。実践しやすい方法をいくつか紹介します。


目を閉じる

集中して仕事をしているときや意気込んでいるときなど、神経が高ぶっているなと感じたら、肩の力を抜いて目を閉じてみましょう。目から入ってくる情報をシャットダウンして、視神経や脳を休ませます。数十秒から数分で構いません。


デジタルデトックス

スマートフォンやパソコンなど、デジタルデバイスの使用を自主的に控えるデジタルデトックス。大量の情報を浴び続ける状態から一時的に距離を置くことで、リアルなコミュニケーションや自然に意識が向き、ストレスが緩和されます

完全にオフにすると支障がある場合は、まずSNSの通知をオフにするところから始めてもいいと思いますよ。


深呼吸

吐く息を多めにして深呼吸するだけでも、リラックスにつながるんですよ。深呼吸は、自律神経を整える効果が期待できます


首のストレッチ

首には副交感神経に影響を及ぼす迷走神経が走っています。そのため、首を動かして凝りをほぐすと、心身の緊張がやわらぎます

■首のストレッチ方法「首の左右・前後伸ばし」

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1. 右手を頭の左側に添えて、ゆっくり引き寄せるように首だけを右真横に15秒程度傾ける。反対側も同様に2セットずつ行う。

2. 頭の後ろで両手を組み、軽く押しながら、あごを胸に付けるように15秒程度頭を下げる。

3. あごをゆっくり上げ、頭の重さを利用して首を後ろに15秒程度倒す。2と3を交互に2セットずつ行う。


顔ヨガ

首と同様に副交感神経を活発化させるのに役立つのが顔の筋肉。表情筋を動かして鍛え、ストレッチする顔ヨガも、簡単にできるのでおすすめです。

■顔ヨガ

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顔のパーツをギュッと中心に集めるようなイメージで全体をすぼめてから、パッと開くだけの顔ヨガが◎。表情筋をしっかり動かすことができて、気分もすっきりします。


一人になるor仲間と話す

リラックスできる環境は人によって違います。自宅で一人、好きなものに囲まれてぼんやりしていたいときもあれば、友人とワイワイするのが何よりのストレス解消になるときもありますよね。

どんなときに緊張感やプレッシャーがやわらぐのか、自分にとって最善の環境を見つけることもとても大切です。

試して、続ける。継続が大きな変化につながる

――本当の意味で休めていないかもしれないと思っている方に、メッセージをいただけますか。

「心の声を聞けばいいんだ、ふーん」「過去の自分に寄り添えばいいんだ、なるほど」で終わらせずに、ここでご紹介した方法のひとつで構いませんから、ぜひ実践してみてください。何年、何十年と心の奥底にしまい込んできた気持ちがすぐに出てこないのは当然。すぐに結果が出なくても、しばらく心の声を聞くことを続けてみてほしいです。

習慣化して感覚がつかめてくると、「もしかして、今のがセルフイメージを作っていた記憶かな」というように、心の声との対話もスムーズになっていくはず。小さな変化が大きな変化につながることを信じて、筋トレのように生活に取り入れてみてくださいね。


お話を伺ったのは...

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半澤久恵(はんざわ・ひさえ)さん

心理カウンセラー/セラピスト

大学卒業後、出版社へ入社。体調を崩したことをきっかけに、興味のあった心と体に関わる仕事をするため、アロマセラピーの道へ。サロンでセラピストとして働きながら、整体やアロマスクールの講師も務める。2012年にOAD心理セラピストの資格を取得。現在は自身のサロン「AROHAM」にて心と体にまつわる個人セッションを行うほか、心理学の講師としてセミナーなども開催している。
https://www.aroham-kee.com/

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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