【体質タイプ診断】更年期の症状を緩和する漢方を知るには?

理由もなくイライラする。気温にかかわらず、のぼせて汗をかく。いつも手足が冷えていて冷たい――「もしかして更年期?」という症状を感じたら、症状緩和のために漢方に頼るのも手。
漢方薬を活用するには、「更年期の心と体の悩みにも◎「漢方」ってどう使うの?」でもご紹介したとおり、自分の体質や心身の状態を表す「証(しょう)」を見極め、それに応じた漢方薬を服用することが大切です。
そこで、まずは自分の「体質タイプ」を知りましょう。そのチェック方法を、漢方・薬膳の専門家である杏仁美友(きょうにん・みゆ)さんに解説していただきます。
自分の体質はどのタイプ?
――体質のタイプを知る方法を教えてください。
漢方では、心身に現れる諸症状は、心身のバランスを保つ「気」「血」「水」の乱れや、肝・心・脾・肺・腎の「五臓」の衰えが影響していると考え、「四診(ししん)」という診察方法によって一人ひとりの「証(しょう)」を探っていきます。
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いわゆるホットフラッシュをはじめ、頭痛、めまい、息切れといった更年期症状を疑う兆候があるときは、心身のバランスを司る気・血・水が乱れているか、五臓のいずれかの機能が低下しています。
「何かいつもと違うな」と感じたら、自分の体質タイプを確認し、体のバランスを見極めて漢方を選ぶのが症状改善のコツ。
まずは、簡単なチェックでご自身の体質タイプを把握しましょう。8つのタイプそれぞれで、3つ以上チェックが入った物があなたの体質タイプです。
Aタイプ:気虚(ききょ)
気虚は、全身を巡って活力の元になる生命エネルギー、「気」が不足しているタイプ。内臓機能や免疫力、消化吸収などに異常が現れるため、息切れ、動悸、免疫力や消化機能の低下による症状が出やすくなります。
気は汗や血流をコントロールする働きがあるので、気の不足によって多汗になったり、不正出血が起こったりする場合も。
Bタイプ:気滞(きたい)
気滞は、生命エネルギーである「気」の流れが滞り、スムーズに全身を循環していないタイプ。自律神経がうまくコントロールできず、感情の浮き沈みが激しくなってイライラしたり、ふさぎこんだりします。頭が張るような痛みやゲップ、おならが出たり、お腹の張りを感じたりすることも多いでしょう。
Cタイプ:血虚(けっきょ)
血虚は、全身の栄養となる潤いを届け、精神を安定させる効果もある「血」が不足しているタイプ。全身に血液が行き渡らないので、肌のツヤが失われたり、髪がぱさついたりするほか、貧血や物忘れなどの症状が出ます。自律神経が乱れて心が不安定になることもあります。
Dタイプ:瘀血(おけつ)
瘀血は、全身に栄養を送る「血」の流れが滞っているタイプ。血行不良になるので、肩こりや腰痛といった症状が出やすくなります。生理痛やかたまりのような経血が出るなど、婦人科系のトラブルが目立つのも特徴です。
Eタイプ:陰虚(いんきょ)
陰虚は、全身の細胞や組織に潤いを届ける「水」が不足しているタイプ。「水」とは、汗、鼻水、涙など、血液以外の体液や分泌液のことです。水分が不足すると熱が溜まるため、口や喉の渇き、ほてり、のぼせといった自覚症状があります。
Fタイプ:水毒(すいどく)
水毒は、全身を循環する「水」が滞っているタイプ。代謝が悪いので余計な水分を溜め込み、むくみや下痢、頭痛、めまいなどを引き起こします。老廃物を排出できず、肥満の原因になったり、体を重く感じたりもするでしょう。
Gタイプ:実熱(じつねつ)
体温を維持し、活発に行動するために欠かせない「熱」。実熱にあてはまるのは、この「熱」が体内に過剰にあるタイプです。水分が元々不足している陰虚に対して、実熱は熱によって水分が失われていくという違いがあります。大量の汗や、便秘などに悩む人が多いでしょう。
Hタイプ:陽虚(ようきょ)
漢方では、体を温める働きを「陽」、体を潤す働きを「陰」といい、陽と陰が両輪で生命を支えていると考えます。陽虚は、「陽」が不足しているタイプのことで、体を温めることができません。Aタイプの気虚が進んで起こる場合もあります。このタイプの人は、手足がいつも冷たく、寒がりです。
複数の体質タイプを併せ持つことも...でも神経質にならないように
――あてはまるタイプがいくつもあって、心配です。
複数のタイプに3つ以上のチェックが入ることは珍しくありません。ただ、さまざまな体質タイプを併せ持っているため、自覚症状も複雑になります。
体質に合った漢方を服用するのはもちろんですが、「血虚」なら血を補う食べ物を食べる、「陽虚」なら体を冷やさないように気をつける、「水毒」なら利尿作用がある食材を積極的にとるというように、食事や生活習慣にも気を配りましょう。
なお、チェックが入っても1つであれば、あまり気にすることはありません。「ちょっと弱い部分なのかもしれないな」と、気にとめておく程度でいいでしょう。
基本的に、たくさんチェックが入っていたり、症状が出やすかったりする人は、とてもがんばり屋で真面目なんだと思います。働く女性として、母・妻としてその役割や責任に押しつぶされそうになっているなら、「どうかがんばりすぎないで」と伝えたいですね。
――そうですね。仕事や家族を愛するあまり、ついがんばってしまう人も多い気がします。
更年期に現れる不調は、自覚症状の強弱こそあれ、女性なら誰もが通る道。上がり下がりがあっても必ず終わりが来ますから、あまり神経質になりすぎないようにしてください。自分の体質に合ったケアをして、上手に付き合っていきましょう。今はつらくても、通り過ぎれば必ず楽になりますよ。
次回からは、ご自身の体質チェックをした上で参考にしていただきたい、代表的な更年期症状に合った漢方薬をご紹介していきます!
お話を伺ったのは...
杏仁美友(きょうにん・みゆ)さん
一般社団法人薬膳コンシェルジュ協会代表理事、国際中医師、中医薬膳師、漢方&薬膳アドバイザー。
漢方薬や薬膳で自身の体調不良を改善したことをきっかけに、漢方や薬膳の世界に興味を持ち始める。2011年に薬膳コンシェルジュ協会を設立して、薬膳や薬膳茶の資格講座の運営を行うほか、テレビや雑誌などの取材、レストランのメニュー監修、総合情報サイト「All About」の漢方・薬膳料理ガイド、薬膳サプリの商品開発、講演会なども精力的にこなしている。
「マンガでわかるおうちで簡単! 薬膳・漢方」(池田書店)をはじめ、薬膳にまつわる著書も多数執筆。最新著書は「まいにちの食で体調を整える! プレ更年期の漢方」(つちや書店)。
「まいにちの食で体調を整える! プレ更年期の漢方」(つちや書店)
著:杏仁美友 定価:1,400円(+税)
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