更年期の疲れやすさ、足腰のだるさを解消する漢方って?

漢方において、体のさまざまな機能を維持する「肝」「心」「脾」「肺」「腎」から成る「五臓」。中でも、ホルモン分泌や老化に大きく関わり、体を温める「陽」と体を潤す「陰」の働きが共存する「腎」は、更年期の症状に大きく影響するといわれています。

今回は、腎の機能のうち「陽」の働きが低下する「腎陽虚(じんようきょ)」をご紹介した前回に続き、陰と陽、どちらの働きも低下する「腎陰陽両虚(じんいんようりょうきょ)」について、漢方・薬膳の専門家である杏仁美友さんに教えていただきました。

まずはご自分の体質タイプをチェックしましょう
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腎の基本的な機能と「陰」「陽」をおさらい

前回のおさらいになりますが、「腎」は生殖、成長、発育、老化といった幅広い分野をコントロールし、「腎気」と呼ばれる生命エネルギーを蓄える役割を担っています。
年齢を重ねるにつれて、足腰の衰えや記憶力・思考力の低下や、さまざまな更年期症状が現れるのは、腎の働きが少しずつ衰えていくから。誰にでも等しく訪れる自然現象です。

このように、腎の機能が低下した状態を「腎虚(じんきょ)」といいますが、腎には体を温める「陽」と体を潤す「陰」の働きもあります。
腎虚の中でも、陽の働きが低下しているのが、前回ご紹介した「腎陽虚」、陰の働きが低下しているのが「腎陰虚」です。

■腎陽虚・腎陰虚の代表的な症状

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冷えとほてりがさまざまな形で現れる腎陰陽両虚

腎陰陽両虚は、腎陰虚と腎陽虚が入り混じっている状態。それぞれの症状が同時に出ることもあれば、「午前中は足腰が冷えるけど、午後になるとほてり始める」「上半身はいつもほてっているけど、下半身は冷えている」といったように、腎陰虚と腎陽虚の症状が交互に出たり、時間帯や部位によって症状の現れ方が違ったりすることもあります。
総じて、どこか1ヵ所の冷えやほてりではなく、全身的な症状を示すことが多いでしょう。

体質タイプ診断でいうと、Eの「陰虚」、Hの「陽虚」のほか、Aの「気虚」、Cの「血虚」が該当します。活力の源である生命エネルギーや、全身の栄養となる潤いが不足しているタイプですね。

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腎陰陽両虚の症状は?

腎陰陽両虚になると、「動きたいけど動けない」「できれば寝ていたい」といった、慢性的な消耗状態に陥る人が多いでしょう。元々虚弱体質であったり、慢性的な疾患で少しずつ全身の衰弱が進んでいたりする人は腎陰陽両虚になりやすいので注意してください。

腎陰陽両虚の代表的な症状は、先ほど紹介した腎陽虚、腎陰虚の症状が入り混じり、
・疲れやすい
・すぐに息切れがする
・冷えのぼせがある
・冷え性でもあるが暑がりでもあって、体温調節が難しい

といった症状も加わります。

腎陰陽両虚に最適な漢方は「亀鹿二仙膠」

前回登場した「八味地黄丸(はちみじおうがん)」は、腎陽虚の症状改善のベースとなるもの。腎陰陽両虚の症状にも効果を発揮する可能性がありますが、全身がかなり弱っている腎陰陽両虚では、陰陽の両方をより強く補ってあげられる漢方が理想的です。 おすすめは、心身のパワーを補完してくれる「亀鹿二仙膠(きろくにせんきょう)」ですね。亀鹿二仙膠は、4つの生薬から成り立っています。

■亀鹿二仙膠を構成する生薬

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漢方薬局や医療機関で処方してもらおう

亀鹿二仙膠は、ドラッグストアなどではなかなか見かけることができないかもしれません。漢方薬局や、漢方外来を開設している医療機関に相談し、その人の体質や心と体の状態を表す「証(しょう)」を診てもらった上で処方を受けましょう。持病の薬など、常用している薬がある場合は、処方してもらう際に必ず伝えてください。

また、もっと手軽に...という場合は、腎陽虚の記事で紹介した「八味地黄丸」肝腎陰虚の記事で紹介した「六味地黄丸」の両方を試してみてもいいかもしれません。

腎陰陽両虚は、焦らず気長に養生を

腎陰陽両虚になってしまったら、まずは無理をしないこと。激しい運動はしたくてもできない場合がほとんどだと思いますし、焦ってがんばりすぎると体に負担がかかります。そのため、昼の暖かいうちに少し外に出て、体を動かす程度にしましょう。

つらくても動かなくてはならない、心身を休めることができずにがんばってしまう人は、消耗しすぎないうちに休憩をとり、夜はしっかり睡眠時間を確保して体を休めることをおすすめします。

また、漢方だけでなく、食事は幅広い食材をバランス良く食べることが大切です。腎陰陽両虚は、陰陽の両方が不足している状態ですので、例えば、体が冷えているときに熱い物や刺激物ばかり食べると、体に必要な水分まで排出してしまうのでほどほどにしましょう。
できるだけ、いも類や豆類、お米、梅、アーモンドといった食材を取り入れて、気長に養生してください。


お話を伺ったのは...

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杏仁美友(きょうにん・みゆ)さん

一般社団法人薬膳コンシェルジュ協会代表理事、国際中医師、中医薬膳師、漢方&薬膳アドバイザー。

漢方薬や薬膳で自身の体調不良を改善したことをきっかけに、漢方や薬膳の世界に興味を持ち始める。2011年に薬膳コンシェルジュ協会を設立して、薬膳や薬膳茶の資格講座の運営を行うほか、テレビや雑誌などの取材、レストランのメニュー監修、総合情報サイト「All About」の漢方・薬膳料理ガイド、薬膳サプリの商品開発、講演会なども精力的にこなしている。

マンガでわかるおうちで簡単! 薬膳・漢方」(池田書店)をはじめ、薬膳にまつわる著書も多数執筆。最新著書は「まいにちの食で体調を整える! プレ更年期の漢方」(つちや書店)。

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まいにちの食で体調を整える! プレ更年期の漢方」(つちや書店)
著:杏仁美友 定価:1,400円(+税)




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