更年期に入ると、以前よりも腰痛に悩まされることが増えたと感じる方は多いもの。腰痛は、一般的に腰に負担がかかることで起こると考えがちですが、更年期を迎えてからの腰痛には、女性ホルモンの減少も関係しているそうです。
そこで今回は、更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人ちぇぶらの代表理事で、更年期ケアインストラクターの永田京子さんに、更年期に多い腰痛の理由と、腰痛を予防・改善するエクササイズを教えていただきました。
腰痛を引き起こすのは、姿勢の悪さと女性ホルモンの減少
――腰痛の原因として考えられるのはどういったことでしょうか?
原因は大きく分けると2つあって、ひとつは姿勢の悪さや筋力の低下によるものです。それによって関節に負担がかかり、腰痛になってしまうことがあります。また、日常の動作からくる慢性的な疲労が溜まって、腰が痛くなるケースもあります。
もうひとつは、女性ホルモンの低下によるものです。
――腰痛にも女性ホルモンの低下が関係しているのですか?
実はそうなんです。女性ホルモンの低下が腰痛の原因になることはイメージしにくいと思うのですが、女性ホルモンには骨や関節を守ってくれる役割があります。そのため、女性ホルモンが減少してくると骨や関節を守る力が弱くなり、腰痛を感じる方が増えてくるんです。
――先程姿勢の悪さが腰痛を引き起こすというお話がありましたが、腰痛になりやすい姿勢というのは、どういったものでしょうか?
猫背や反り腰など、骨盤が起きていない姿勢は腰に負担がかかるので腰痛になりやすいです。腰痛にならないためには骨盤が起きていることが大切なのですが、その指標となるのが恥骨からおへそまでの部分。ここが床に対して垂直になっているのが、骨盤が起きている状態です。
姿勢を正す表現として、よく「背筋を伸ばす」という言い方をしますが、そのイメージで背中を伸ばすと反り腰になってしまい、かえって腰を傷めてしまうこともあります。ですから、立っているときも座っているときも、恥骨からおへそまでを床に垂直にするように意識してほしいと思います。
――実際にやってみると、垂直に保つのは結構たいへんです。
そうですよね。腹筋と背筋を使う姿勢なので最初はきつく感じるかもしれませんが、慣れてくると快適になってきますよ。
ポイントは骨盤――腰痛を予防・改善するエクササイズ
――腰痛の予防や改善には、どういったことが必要なのでしょうか?
一番大切なのは、腹筋や背筋といった体幹部の筋肉をしっかりつけて、骨に負担をかけないことです。
その意味では、骨盤を起こすことを意識するだけでも腰痛の予防になりますし、腹筋と背筋を鍛えるトレーニングになります。今回ご紹介するエクササイズも、骨盤を起こして行うのがポイントです。
――では、腰痛予防・改善につながるエクササイズを教えてください。
はい。腰痛に悩まされたとき、痛いからといって動かさないのは、一番やってはいけないことになります。もちろん、炎症を起こしている場合は動かさないほうがいいのですが、そうじゃなければ少しずつでも動かしてあげたほうが痛みの緩和につながるんです。
今回ご紹介するエクササイズは、行うことで腰痛の予防になるほか、痛みがあるときに行っていただくと腰痛改善に効果があります。
<腰痛予防・改善エクササイズ>
1. 骨盤を起こして座る
腰をひねるときに動きづらい場合は背もたれに手を添えても構いませんが、できれば手を添えずに自分のおなかの力を使ってひねったほうが効果的です。
2. 上半身を右側にひねり、5秒キープ
3. 上半身を左側にひねり、5秒キープ
腰痛予防・改善エクササイズは、左右ともに5秒キープを4セット行うのが基本です。しかし、腰が痛いときは回数を減らすなど、ご自身の腰の状態に合わせて調整してください。
――腰をひねることでどのような効果があるのでしょうか。
体幹部には腹筋(腹直筋)や背筋(脊柱起立筋)のほかにも、腹斜筋、腹横筋、外腹斜筋などたくさんの筋肉があります。ひねる動きを入れることで、それらすべての筋肉を動かして鍛えることができます。
――エクササイズをするときに注意することはありますか?
まずは、恥骨からおへその部分を垂直にキープしたまま行うことですね。骨盤が前に倒れた状態ですと筋肉を鍛えられないですし、逆に反り腰で行うと腰を傷めてしまう危険性があります。
また、このエクササイズは、腰をひねって骨をボキボキ鳴らすことが目的ではないので、自分のおなかの力を使って、できる範囲でひねるだけで大丈夫です。
――どんなときに行うのがいいのでしょうか?
腰が痛いときこそ動かしてあげることが大切です。なので、腰に違和感があるときにこのエクササイズを行っていただくと、痛みが改善されると思います。
もちろん、痛みがなくても普段から行うことで筋力がアップし、腰痛の予防にもなります。ただ、炎症を起こしているときは無理に動かさず、医師の診断を受けるようにしてください。
さらに、腰痛に効くツボもご紹介しましょう。
■腰痛予防・改善のツボ
腎兪(じんゆ)
おへその真後ろの背骨から指2つ分外側にある「腎兪(じんゆ)」というツボを、気持ちいいと感じる程度の強さで5秒間、5回押してください。
マッサージなどでもよく押されるツボですが、腰の痛みやだるさ、ぎっくり腰の予防にも効果的なツボです。ほかにも、生理痛など婦人科系の症状にもいいので、腰に違和感があるときに押してみてください。
腰痛になると動くのもおっくうになってしまいますが、ひどくなる前にこのような体操やツボ押しをして、体をすっきりさせましょう!
お話を伺ったのは...
永田京子(ながた・きょうこ)さん
兵庫県出身、愛知県小牧市在住。2児の母。東映アカデミーに所属し、役者として舞台やドラマなどで活躍した後、ピラティスや整体、経絡、アロマ、リフレクソロジーなどを学び、ピラティス指導者、産後ケアのインストラクターとしての活動を開始。受講者の声と、更年期障害が悪化して苦しむ母を見ていた経験から、女性ホルモン・更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人「ちぇぶら」を創設した。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう「the change of life」の意。
初の著書「女40代の体にミラクルが起こる! ちぇぶら体操」(三笠書房)が発売中。
NPO法人ちぇぶらホームページ
YouTube「ちぇぶらチャンネル」
「女40代の体にミラクルが起こる! ちぇぶら体操」(三笠書房)
著:永田京子 定価:1,400円+税