歯を失うとどうなる?放置することによるさまざまな影響

更年期になると、皮膚の弾力や保水力と深い関わりがある女性ホルモンが減少し、肌や粘膜が乾燥しやすくなります。もちろん、口内も例外ではありません。放置するとドライマウスが進み、細菌が繁殖して、むし歯や歯周病のリスクが高まることに...。
このように口内環境が悪化することで、歯を失ってしまう人もいます。ここでは、歯を失うことによる生活への影響について見ていきましょう。

更年期以降に歯を失った人はどのくらいいる?

体のさまざまな機能を守ってくれていた女性ホルモンが減少する更年期以降は、唾液の量も減り、口内の粘膜を保護する働きが低下します。そうすると、口内の乾燥が進んで喉の渇きを感じやすくなるほか、唾液の持つ自浄作用が働かなくなるため、細菌の繁殖が進みやすくなるのです。

このような理由から、むし歯や歯周病のリスクが高まり、更年期以降に歯を失ってしまう人も少なくありません。厚生労働省が実施した「平成28年歯科疾患実態調査」では、45~49歳のあいだに失った歯がある人は約40%、50歳以降になると60%を超えることがわかっています。

■年齢階級別・喪失歯所有者率(永久歯:5歳以上)

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更年期以降に歯を失う3つの原因

更年期以降に歯を失う大きな原因としては、次の3つが挙げられます。


歯周病

8020推進財団が2018年に実施した「永久歯の抜歯原因調査」によれば、歯を失った理由として最も多いのは「歯周病」です。同調査では、45歳以上になると半数近い人に4mm以上の歯周ポケットがあり、歯周病の程度が重い6mm以上の歯周ポケットがある人も、年齢とともに増えていることがわかりました。
歯周病は、初期段階ではほとんど自覚症状がないため、気付いたときには重症化していて抜歯しか選択肢がないこともあります。

■抜歯のおもな原因

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むし歯

「永久歯の抜歯原因調査」で歯周病に続いて多かったのが「むし歯」です。むし歯は、歯周病に比べれば自覚症状が顕著で、痛みや違和感によって気付きやすいものの、定期的に歯科クリニックでケアを受ける習慣がないと発見が遅れがちです。
むし歯が進行して神経を抜く治療をするまでになると、歯の寿命が短くなるため、最終的に失ってしまうことも多いでしょう。


破折

転んで前歯を打った、硬い物を噛んだ、歯ぎしりや食いしばりが強いといった理由で歯が割れたり欠けたりする外傷による「破折」も、歯を失う原因のひとつです。
破折の範囲が広いと、応急処置によって機能や見た目をカバーするのが精一杯で、長く持たせることはできません。

歯を失うとどうなる?

歯を失ったまま放置していると、生活にどのような影響があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。


歯並びが崩れ、噛み合わせが悪くなる

歯は、上下左右の歯と支え合ってバランスを維持しています。そのため、歯が1本でもなくなると、噛み合っていた歯の支えを失うことにより延出したり、横に倒れたりして、全体の噛み合わせが崩れることに。
崩れた状態で固定されてしまうと、抜けた歯の治療をするときも、傾いた歯や全体的なバランスをとるために矯正が必要で、手間と費用がかかります。


正しく噛めない

食べ物をしっかり噛み砕いたり、すりつぶしたりするには、上下の歯の噛み合わせが大切です。歯がない部分は正しく噛めないので、食べ物を大きいまま飲み込むことが増え、消化器官に影響を及ぼします。噛む回数が減ると脳への刺激や血流も減り、認知症のリスクが高まることも知られています。


顎関節症や肩こり、頭痛が起こる

噛み合わせに異常が出ると、顎の関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こします。人によっては、肩こりや頭痛、特に片頭痛などの症状が現れることもあります。

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見た目の印象が悪化する

奥歯を失った場合は、頬や顎のラインが内側に入って顔の輪郭が変わります。また、前歯の場合は口の周りにしわができやすくなるなど、顔の輪郭や見た目が変化して老けて見られる原因にもなります。


ほかの歯がダメになる

歯が生えそろっている場合、食べ物を食べたり、食いしばったりすることによる負荷は全体に分散されます。しかし、失った歯があると負荷を受け止められず、ほかの歯が通常以上のダメージを負うことに。ダメージが蓄積した歯はもろくなり、早く寿命を迎えることになってしまいます。


うまく話せない

歯を失った部分から息が漏れることによって、うまく発音できなくなることもあります。
特に、口を閉じて発音する音は難しいもの。何度も聞き返されるうちに人と話すのが怖くなり、ふさぎがちになることもあります。

歯は生活に影響が出る前に早めの治療を

歯を失ったまま放置していると、短期的には問題がなさそうに見えても、長期的にはさまざまな影響が生じます。何らかの理由で歯を抜いた際には、できるだけ早く「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」などの方法で補うようにしましょう。
見た目の自然さ、お手入れの手間等を総合的に検討し、かかりつけの歯科クリニックに相談することをおすすめします。


この記事を監修したのは...
大西 孝宣(おおにし たかのり)歯科医師

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東京ミッドタウンデンタルクリニック
大江戸線「六本木駅」直結の歯科「東京ミッドタウンデンタルクリニック」。 むし歯、歯周病などの一般歯科診療から、矯正、インプラント、麻酔、口腔外科など、国内外で専門技術を磨いた医師が、患者様お一人おひとりにあった施術を提供しています。 治療は半個室、個室で対応。患者様が快適に過ごせる空間を創り上げ、リラックスできる環境で治療を受けていただくよう取り組んでいます。


※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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