地中海食とは?注目の健康食のメリットと取り入れ方

イタリアやギリシャ、スペインといった地中海沿岸の国の伝統的な食事のスタイルである「地中海食」。ヘルシーで栄養満点の地中海食は、地中海沿岸地域に住む人の健康長寿の秘訣であるとして研究が進み、2010年には国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録されました。
「地中海食ダイエット」として減量効果にも注目が集まる一方で、「毎日の食事に取り入れたいが、難しそうなので手を出しにくい」「食材が簡単に手に入りそうにない」といった理由で、チャレンジを躊躇する人も少なくありません。

そこで今回は、地中海食の基本的な考え方や優れている点、普段の食事への取り入れ方などについて、東京ミッドタウンクリニックの特別診察室長であり、すべての人にプラスになる「ユニバーサルな食事」の提唱者でもある内科医師・渡邉美和子先生にお話を伺いました。

地中海沿岸地域の健康長寿を支える地中海食

――まずは、地中海食とはどのようなものなのか、その概念から教えていただけますか?

地中海食は、地中海沿岸の国々における伝統的な食事のスタイルです。魚介類、野菜、豆類、穀類、果物、乳製品をバランス良くとることができ、お肉は少なめ。油脂として、不飽和脂肪酸を多く含み、抗酸化作用が強いオリーブオイルをたっぷり使うのが特徴です。

食事の内容だけでなく、家族や友人と会話を楽しみながら少量のワインを飲み、ゆっくり2時間くらいかけていただくというスタイルも含めて、「地中海食」と呼ばれています。

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――近年、地中海食の効能が注目されていますね。

地中海食は、低糖質食や低カロリー食とともに、医学会で現在コンセンサスを得ている食事療法です。

地中海沿岸の国の食事は、オリーブオイルを中心とした高脂肪食であるにもかかわらず、血中コレステロール値が低く、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、脳血管障害などの血管障害が少ないことが報告され、地中海食が注目されるようになりました。

・化学処理を加えない、不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルを多く摂取する
・飽和脂肪酸が多い肉の摂取量が少ない
・野菜や果物、ナッツなど抗酸化力の高い食品を多くとる

といったことなどが理由として挙げられます。100歳を超える健康長寿の方も多く、寿命を延ばす効果や認知症の発症予防効果にも期待が高まっています

日本では低糖質食が近年注目を集めていますが、実は健康効果についてのエビデンスや論文が一番多いのは地中海食なんですよ。そんな地中海食の効能が世間一般に広く知られるようになったのは、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されたことがきっかけ。地中海食ダイエットなどが考案され、話題に上るようになったのもそれからでしょう。

地中海食は、日本食に応用して日常に取り入れることも可能

――地中海食と聞くと、食材が手に入りにくいような気がするのですが...。

確かに、地中海の食事といわれると、凝ったイタリア料理などを思い浮かべる方が多いかもしれません。でも実際は、意外と日本食に近くて、日常の食事に取り入れやすいんですよ。

私が所属している日本抗加齢医学会の総会で、先日、「和食でも実践できる『地中海食療法』」として、地中海食の理論を取り入れた京懐石のお弁当をご紹介しました。

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――和食で実践できるのはうれしいですね!紹介されたお弁当のメニューを教えていただけますか?

まずは、抗酸化力の高い緑黄色野菜、パプリカやブロッコリーなどを豊富に取り入れました。ベジファースト(野菜から食べる)で、山椒入りディップを最初に食べると、山椒によって味覚が鋭敏になり、食材の旨味を感じられて減塩効果にもつながります。

ご飯は精製された白米の代わりに、食物繊維たっぷりの大麦を、きのこや、地中海食でよく使われるオリーブの実とともに炊き込みました。味付けは「煎り酒」という日本固有の調味料です。

ご飯の量を控えめにする代わりに、隣にはたっぷりの「二色の魚そうめん」を。ポン酢ジュレで和えていますが、これに付属のオリーブオイル、バルサミコ酢をかけていただくと、さらにおいしく召し上がっていただけます。

和食にどう取り入れるか迷うナッツも、くるみをおかかで和えた「くるみおかか」なら比較的実践しやすいですよね。魚介類もナッツも、和風の味付けなのに不思議とオリーブオイルに合うんですよ。

さらに、魚介類として「鮭西京焼き」や「二色の魚そうめん」「あさり佃煮」などを入れ、少量のお肉として「合鴨ロースのわさび添え」を加えました。わさびは高い抗酸化力を持つ日本が誇る薬味ですが、こちらも不思議とオリーブオイルにマッチします。

ダイエットの際にカロリーの高い油脂を控える方がいらっしゃいますが、満腹感を得られるオイルは、上手に選ぶことで健康のために欠かせない食材になります。

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総会で提供された地中海食の理論を取り入れたお弁当の中身。左上に「合鴨ロースのわさび添え」「鮭西京焼き」「蒸し野菜」右下に「二色の魚そうめん」、右上に「あさり佃煮」が入っている。

渡邉先生と、慶應義塾大学医学部内科学教室 腎臓内分泌代謝内科の林香先生が監修し、「創業安政三年 下鴨茶寮」の磯崎亮輔料理長が製作。


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別容器のオリーブオイルとバルサミコ酢。

「おいしい」「好きだ」と感じるオリーブオイルを選んで

――オリーブオイルはたくさん種類があって、どれを選んでいいか迷ってしまいます。選び方にコツがあれば教えてください。

オリーブオイルは、熱するなどの科学的な処理を行っていない、オリーブ果実を搾ってろ過しただけのエキストラバージンオリーブオイルを選ぶことが理想。そして何より、酸化されていないことが大前提です。

たくさん出回っているので選び方が難しいですが、幸いなことに、オリーブオイルには色と香りがあるので、きれいな色をしていておいしそうな香りがする物を選ぶのがいいと思います。

それでも同じような物がたくさんあって迷ったら、基本的には自分が「好きだな」「おいしいな」と感じる物を選びましょう。空気や光による酸化を抑えるため、大きな瓶に入っている物より小さめの物で、遮光性の高い黒いボトルに入っていたり、暗い色の包み紙でくるまれていたりするオイルを選ぶのもポイントです。

地中海地域の人たちはオリーブオイルにこだわりがありますから、自分がおいしいと思うイタリアンレストランで、どんなオリーブオイルを使っているのか聞いてみるのもいいかもしれません。

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――食事をするにあたって、「あれはダメ」「これはダメ」という制限が少ないことも、糖質制限などに比べてチャレンジしやすい感じがしますね。

「やせるための食事」「美肌のための食事」など、ある目的のために極端に食事の内容を制限したり、「これさえとっておけば、あとは何を食べても大丈夫」といったように、ひとつの食材や栄養素に特化して摂取を推奨したりするやり方はおすすめできません

食事制限がエスカレートして、健康を害することになっては本末転倒ですよね。その点、地中海食はきびしい制限がなく、我慢することも少ないので続けやすいと思います。

どんな人にもプラスになる「ユニバーサルな食事」を目指して、偏りなく栄養をとることができる、バランスの良い食事を心掛けてください。

SUPERVISERこの記事を監修した人

渡邉先生

PROFILE

渡邉 美和子 (わたなべ みわこ) 医師

専門分野:内科・抗加齢医学

1994年 北里大学医学部卒業
慶應義塾大学内科学教室 入局。永寿総合病院勤務などを経て、2003年医療法人社団桃蹊会理事長、2007年マリーシアガーデンクリニック院長を経て、2010年より東京ミッドタウンクリニックへ。2011年東京ミッドタウンクリニック「特別診察室長」に就任、2020年東京ミッドタウンクリニック「外来診療部長」に就任、2022年には東京ミッドタウンクリニック「副院長」に就任。臨床の場で会員制医療における健康危機管理や医療相談に携わるほか、日本抗加齢医学会、日本内分泌学会をはじめ医学学会でのお弁当監修や企業との健康関連事業に取り組むなど、独自の食指導「安心で美味しい食の医療プロジェクト」にも力を入れている。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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