子宮筋腫は40代以降が要注意!その症状や対処法を知ろう

月経に伴う諸症状の原因として知られる「子宮筋腫」。厚生労働省の調査によると、成人女性の約4人に一人が抱えているといわれる、非常にポピュラーな良性疾患です。
40代以降になると患者数がグッと増えるものの、自覚症状がないことも多いため、筋腫があることに気付かないまま日常生活を送っている、という方も少なくありません。

今回は、健康診断がきっかけで子宮筋腫の存在に気付いた患者さんの症例を基に、そもそも子宮筋腫とはどういうものなのか、また、子宮筋腫が悪化した場合に起きる症状やその治療法について、浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生に教えていただきました。

【case10】子宮筋腫のある方が妊娠したい場合はどうする?

Y・Nさん(初診時年齢33歳)の場合

【おもな状況ヒアリング】

■子宮頸がん検診の二次検査目的で受診し、筋腫を発見
子宮頸がん検診を受けたところ、異常が見つかったため二次検査を希望して受診しました。経腟エコー検査の結果、直径1~1.5cmの筋腫が複数見つかり、6ヵ月ごとに定期検査を受けています。

■妊娠を希望しているため、今後の治療方針を検討したい
初診から4年後に結婚し、妊娠を希望しています。37歳という年齢もあり、今後の治療の進め方について相談したいと思っています。

自覚症状がなく、検診で見つかることも多い

――Y・Nさんは、子宮頸がんの二次検査で筋腫が見つかったのですね。

子宮筋腫は自覚症状がないことが多いので、検診で初めて気付くケースは珍しくありません。Y・Nさんが受けた子宮頸がん検診は内診のみですから、二次検査で経腟エコーをしたからこそ、子宮筋腫の発見に至ったといえますね。

自覚症状の有無は、子宮筋腫ができる場所によって異なります。総じて、外側の壁にできる筋腫は大きくなるまで自覚症状が乏しく、子宮の筋肉の中にできる筋腫は多量の経血を伴う傾向があります。

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子宮筋腫ができる場所は複数ある。

――Y・Nさんは、6ヵ月ごとにフォローアップの検査を受けることになったそうですが、すぐに治療をしなくてもいいものなのでしょうか。

子宮筋腫の治療方針を決める上で重要なのは、自覚症状があるかどうか、ある場合は症状の強さがどの程度かです。Y・Nさんのように筋腫が複数あっても、大きさが1~1.5cm程度で臓器を圧迫するほどではなく、日常生活に差し障るような症状もないのであれば、経過観察で問題ありません。

――子宮筋腫が悪化すると、どのような症状が起きるのでしょう。

一般的には、月経の量が増えることによる貧血、そして筋腫が膀胱や腸などの臓器を圧迫することによる頻尿や排尿困難、便秘、腰痛などが起こります。Y・Nさんにも、筋腫が少しずつ大きくなっているのがわかった段階で、経血が多くなる月経過多とそれに伴う貧血に注意していただくよう伝えました。

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――筋腫が大きくなって、症状が悪化した場合、どのような治療の選択肢がありますか。

貧血や生理痛に対しては、対症療法で鉄剤や鎮痛剤などの薬を処方します。対症療法では症状がコントロールできなくなったり、妊娠を考えるケースでは筋腫のできた場所や大きさによって流産・早産の原因になる可能性が考えられたりする場合には、ホルモン療法や手術を検討しなくてはなりません。

ホルモン療法には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を抑えて、体を閉経後と同じ状態に近付け、子宮筋腫を縮小させる「GnRHアゴニスト療法」というものがありますが、使用中の骨密度が低下するため連続投与できるのは原則6ヵ月までです。

投与を中止すると筋腫は再び増大するので、腹腔鏡下手術をするための術前投与を行ったり、閉経が近く、筋腫の大きさやほかのリスクを考慮した上で手術回避ができると判断した場合、閉経までの逃げ込み療法で使ったりすることが多いですね。外科的治療には、子宮筋腫のみを摘出する手術と、子宮を全摘出する手術があります。

妊娠希望の有無は治療方針の決定に大きく関わる

――Y・Nさんは、初診から4年後に結婚して妊娠を希望されていますね。

妊娠を希望する方に対して、ホルモン治療であるGnRHアゴニストや、子宮全摘手術を行うことはできませんから、原則的には筋腫だけを取り除く子宮温存手術を行うことになります。そのため、治療方針の決定には筋腫の大きさや数のほか、妊娠希望の有無が大きく関わってきます

Y・Nさんが結婚して妊娠を考え始めたころ、子宮筋腫の数は増えて総じて大きくなり、最も大きい筋腫は経腟エコー検査にて4.2cmになっていました。月経痛、貧血などの症状はありませんでしたが、一部の筋腫が臓器に接する様子も確認できたため、妊娠・出産の妨げになる可能性があると考えて、一度MRIを実施し、治療方針を検討しています。

検査の結果、臓器への圧迫は軽度で、子宮内腟への影響はなく、4cm程度と小さな筋腫数個を認めるのみ。月経痛や貧血の症状もないとのことで、再度経過観察となりました。

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――妊活と手術、どのように進めるのがベストなのでしょう。

手術の方法には、難治症例にも対応できる一般的な開腹術のほか、低侵襲(体へのダメージが少ない)でお腹の傷も小さくて済む腹腔鏡下手術があります。しかし、どちらも子宮に傷が付くことに変わりはないので、すぐに妊娠すれば子宮が大きくなる際に子宮破裂のリスクが高まります。

そのため、子宮筋腫の手術後、傷口が完全に癒えるまで、少なくとも半年から1年は避妊をしなくてはなりません。さらに、出産は安全性を考えて帝王切開で行うのが一般的です。

妊娠前に見つかった筋腫が妊娠の障害になるようなら手術をすすめられると思いますが、37歳という年齢は妊活と治療の兼ね合いが非常に難しい時期ですね。最適なタイミングを見極めるためにも、高齢出産を希望していて筋腫がある方は、早めに不妊症を専門的に扱う生殖補助医療の専門医療機関を受診して、情報収集することをおすすめします

早期発見には定期的なエコー検査が有用

――妊娠後に筋腫が見つかった場合についても教えてください。

「子宮筋腫合併妊娠」といって、妊娠して初めて子宮筋腫が見つかる方も少なくありません。こうした場合、妊娠経過の中で流産・早産のリスク、筋腫の変性とそれに伴う腹痛や炎症などの可能性があり、慎重に経緯を診ていきます。

――子宮筋腫において、最も意識したほうがいいことはどういうことでしょうか。

月経過多や生理痛のほか、不妊や流産の原因にもなる子宮筋腫は、内診だけでは十分に発見することができません。自覚症状が乏しく、気付かないうちに増大しているケースも多いので、定期的な経腟超音波(エコー)検査で早期発見に努めましょう


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SUPERVISERこの記事を監修した人

吉形先生

PROFILE

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。

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