閉経後になりやすい膀胱炎、その原因と予防法を医師が解説

35歳くらいまでの妊娠適齢期の女性から、閉経後の女性まで、幅広い年代が発症する「膀胱炎」。中でも、閉経後に発症した膀胱炎は、慢性化・長期化する傾向があります。急激な症状はないものの、不快感が長く続くため、生活の質が著しく低下することも。こうした慢性膀胱炎を防ぐには、その原因を知り、早期に適切なケアをスタートすることがとても大切です。

今回は、閉経後になりやすい膀胱炎の原因と予防法について、浜松町ハマサイトクリニックの婦人科医師・吉形玲美先生に伺いました。

女性ホルモン(エストロゲン)の減少による萎縮性腟炎、骨盤臓器脱が膀胱炎の原因に

――閉経後の女性が発症する膀胱炎には、どのような原因がありますか。

女性ホルモン(エストロゲン)の低下に伴う、外陰部や腟といったフェムゾーンの萎縮、またそれによって起きる不快な身体症状を指す「GSM(閉経後性器尿路症候群)」のひとつに、膀胱炎があります

GSMとは...

閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)低下による、腟と外陰部の構造萎縮やそれに伴う違和感や性機能障害、尿路機能に悪影響を及ぼす状態を表す概念であり、2014年から北米閉経学会などの機関誌に掲載され誕生した用語。
現在では、女性のQOL(生活の質)を落とす症候群として、その啓蒙に積極的な取り組みが行われています。

本来、健康な腟には、ラクトバチルスを中心とした乳酸菌が豊富に存在していて、腟内を酸性に保ち、自浄作用で細菌や雑菌の増殖を防いでいます。女性ホルモン(エストロゲン)の役割は、このラクトバチルスのもとになるグリコーゲンを増やしたり、腟粘膜の潤いを保持したりすること。

閉経して女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏すると、腟粘膜が薄くなって乾燥しやすい萎縮性腟炎の状態になるのですが、同時にグリコーゲンも減少して腟内の酸性度が下がり、自浄作用も低下します。すると、それによって雑菌の繁殖を抑える力が低下し、膀胱炎を発症しやすくなるのです。

■女性ホルモン(エストロゲン)の減少と萎縮性腟炎の関係

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もちろん、閉経後のすべての膀胱炎がGSMであるとは限りませんが、メカニズムとしては関連があるといえるでしょう。

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――萎縮性腟炎になることで膀胱炎の原因になる雑菌が増えやすくなるのですね。

女性ホルモン(エストロゲン)が減ると、特に腎臓や泌尿器の雑菌は増える傾向があるので注意が必要です。

また、同じくGSMのひとつである骨盤臓器脱が、膀胱炎を誘発することもあります。骨盤臓器脱は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少、加齢による筋力低下などで子宮を支えている靭帯や骨盤底筋群と呼ばれる筋肉が緩むことによって、骨盤の中にある子宮や膀胱、直腸などが下がってきたり、さらには腟から飛び出てしまったりする疾患です。

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腟から飛び出た臓器が下着などにふれてこすれ、フェムゾーンに炎症が起きて膀胱炎につながるほか、臓器の圧迫によって起きる頻尿、残尿感、尿漏れなどが、炎症や感染の原因になることもあります。

閉経後の膀胱炎は、発症させない・悪化させない予防的ケアが大切

――GSMのひとつである膀胱炎には、どのような症状があるのでしょう。

比較的若い世代の女性が多く発症する急性膀胱炎の場合、頻尿や血尿といった症状が急激に現れますが、GSMのひとつである膀胱炎は慢性化しやすく、強くはないけれども、漠然とした下腹部の不快感や残尿感、頻尿といった症状が長く続きます

症状が気になり、日常生活に影響が出ることも少なくありません。治ったと思ったらまた症状が出るなど、繰り返しやすいのも特徴ですね。

――膀胱炎になってしまったら、どんな治療をするのでしょう。

膀胱炎と診断されたら、炎症を起こす原因となっている細菌を殺すための抗生剤を服用するのが一般的です。軽症であれば、抗生剤を服用し始めてから、3日から1週間程で症状の改善が見られるでしょう。

ただ、抗生剤にはとても強い物があるので、使い方には注意が必要。慢性的な膀胱炎や、繰り返す膀胱炎で抗生剤を服用し続けていると、抗生物質が効かない耐性菌の発生につながり、場合によっては女性の体にとって良い働きをしてくれる腟の常在菌まで殺してしまうこともあるからです。

悪い影響を及ぼしている菌を死滅させるにはやむをえないとはいえ、できれば抗生剤のお世話にならないようにしたいですね。

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――では、発症させない、悪化させないためのケアが肝心なのですね。

そのとおりです。膀胱炎にならないように、日頃からフェムゾーンのケアを心掛けましょう。特に、慢性的な膀胱炎を繰り返している人や、膀胱炎とは診断されないまでも「フェムゾーンに、なんとなく違和感がある」「残尿感を感じることがある」といった比較的軽い症状を自覚している人は、再発や悪化を防ぐために毎日のケアをおすすめします。

大切なのは、フェムゾーン専用の洗浄料を使うようにして、腟の常在菌を保つこと。フェムゾーンのケア方法については、以前の記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてください。

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――フェムゾーン専用のケア用品を選ぶときに意識したほうがいいことはありますか。

腟を弱酸性に保ってくれる乳酸菌が配合されている物を選ぶと、ただ清潔にして雑菌を流す(除去する)だけでなく、足りない自浄作用を補ってくれる効果が期待できます。

洗い終わった後も、同じように乳酸菌が配合された専用の保湿ジェルやクリームを使って保護するといいですね。

――常在菌を補うことができるのですね。

海外では、フェムゾーンに直接塗るエストロゲンクリームを使った研究も進んでいます。実際にエストロゲンクリームによってラクトバチルスが増えたり、過活動膀胱のスコアが改善されたりすることもわかってきているんです。

乳酸菌が配合されたフェムゾーンのケア用品を上手に使うと、エストロゲンクリームと同じような効果が期待できるので、積極的に取り入れていただきたいですね。

――GSMの症状は人に言いづらかったりして、ケアが遅れることも多そうです。

そうですね。閉経後は、今回お話しした膀胱炎に代表されるような、慢性的で長期的なトラブルが増え始める時期。GSMの症状を有する女性は非常に多いといわれていますが、医療機関に相談しづらいと、我慢しているケースが少なくありません。

しかし、GSMは生活の質に影響を及ぼすことが多いので、閉経後を見据えてケアを心掛けましょう。フェムゾーンに違和感やかゆみ、痛みなどの症状を感じている人も、症状が軽いうちであれば適切なセルフケアで軽快が見込めます

この機会にフェムゾーンケアを見直し、不快な膀胱炎にかからないようにしましょう。


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SUPERVISERこの記事を監修した人

吉形先生

PROFILE

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。

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