肝斑(かんぱん)はシミとどう違う?その原因と薄くするための治療法

シミほど濃くはないけれど、もやもやした「シミのようなもの」が気になっている女性は少なくないのでは?それ、もしかしたら「肝斑(かんぱん)」かもしれません。30代以降の女性に多いという肝斑は、なぜできてしまうのでしょうか?また、できてしまった肝斑を薄くする方法とは?

今回は、東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュの上島朋子(かみしまともこ)院長に、肝斑とシミの違いのほか、肝斑の原因と治療法、さらには日常生活で行うおすすめのセルフケアについて伺いました。

肝斑を引き起こすメカニズムとは?

――肝斑とはどういうものなのでしょうか?

肝斑はシミの一種で、難しくいうとメラノサイトの慢性的な異常活性化によってできたものだと考えられています。メラノサイトとは、シミの元となるメラニンを作り出す工場のようなもので、表皮基底層と呼ばれる皮膚の奥のほうにあります。

例えば、紫外線を浴びると肌が黒くなりますよね?これは、紫外線という刺激を受けたメラノサイトがメラニンを生成することで、紫外線から細胞の核を守るために起こる生理的な現象です。通常は、それが状況に応じて行われますが、さまざま因子によってメラノサイトが刺激され続け、紫外線の影響がなくても絶え間なくメラニンを作り続けているのが肝斑の本体だろうと考えられています。

――肝斑はシミの一種とのことですが、ほかのシミと区別する方法はありますか?

肝斑と似ているシミはいくつかあって、おもに鑑別が必要なのは「後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)」「太田母斑(おおたぼはん)」、色素沈着型の接触皮膚炎などです。

●肝斑
輪郭がはっきりせず、もやもやしたように見える色素斑で、左右対称に現れるのが特徴です。おもに目の下に三日月状に現れるほか、頬骨の上や眉の上に出ることが多いですが、生え際には入り込みません。鼻の下には見られるものの、鼻そのものに出ることはほとんどありません。

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●後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
つぶつぶとした色素斑、または島状の褐色~灰褐色班が額や瞼の上、鼻をまたいだ場所に現れます。15歳未満の方に出ることはほとんどありません。多くは対称性ですが、片側性の部分も見られます。

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●太田母斑
15歳未満から出ることが多い青あざの一種。青みがかった灰色の色素斑で、ところどころ褐色が点在していることが多く、上眼瞼(上まぶた付近)ではADMに比べて内側に出るのが特徴です。

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ほかにも、肝斑に似ているシミとして「老人性色素斑」や「雀卵斑(そばかす)」「炎症後色素沈着」などがあります。

●老人性色素斑
シミの境目が比較的はっきりしていて、色も均一で濃いことが多いです。紫外線を多く浴び続けることによって生じる光老化が原因で現れます。

●雀卵斑(そばかす)
鼻を中心に小さな斑点が分布するのが特徴で、明確な遺伝形式は明らかになっていませんが、家族内発生が多く見られます。

●炎症後色素沈着
年齢に関係なく現れます。化粧品によるかぶれ、やけど、にきびといった炎症が原因で、赤みが引いた後に褐色調になってしまった状態をいいます。

――肝斑を引き起こす、メラノサイトの慢性的な異常活性化はなぜ起こるのでしょうか?

肝斑は30代以降の女性に多く見られるほか、生理や精神的なストレスによって色素が濃くなったり薄くなったりすることから、女性ホルモンの影響もあるのではないかと考えられていますが、その因果関係は正確にはわかっていません。ほかには、洗顔時に肌をこすりすぎてしまうことによる肌への刺激や過度なお化粧、紫外線などが関与していると考えられています。

肝斑は日頃のセルフケアと初期の治療が大切!

――肝斑を予防するためにはどうすればいいですか?

それは、肝斑を生み出す慢性的な刺激を取り除いていただくことだと思います。肌のお手入れをシンプルにしたり、手でゴシゴシ洗いすぎないようにしたり、UVケアをしっかりしたりするなど、外的刺激を与えないことが大切ですよ。

また、人によっては経口避妊薬(ピル)が原因になることもあるので、その場合は医師と相談の上、内服をやめていただくこともあります。

――肝斑を治療したいと思ったとき、クリニックではどのような診断が行われるのでしょうか?

複数のシミの中から肝斑だけを鑑別する検査はありません。経験を積んだ皮膚科医が患者さんのお顔にある色素斑と、それぞれのシミの特徴をすり合わせながら総合的に診断していくというのが一般的です。とはいえ、肝斑の鑑別は難しく、治療を行っていく過程で効果が出たときに、それが肝斑だったとわかるケースもあります。

――肝斑と診断されて、まず行われる治療はどういったことですか?

代表的な治療法は、ビタミンCとトラネキサム酸の服用。メラニンはチロシンという物質が酸化することで完成しますが、ビタミンCはその酸化を阻止してメラニンの生成を抑えます。一方のトラネキサム酸は、プラスミンという物質を活性型にせず、メラニンの生成を減らす作用があるんです。

服用期間については、医師によって考え方の違いはあるものの、東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュでは1~3ヵ月ほど飲んでいただいています。1ヵ月しっかり内服できた場合、効果を感じる方は8割くらいいらっしゃいますので、まずはこれを試していただきたいですね。

また、ビタミンCとトラネキサム酸に併用する形で、メラニンの生成をブロックするハイドロキノンの塗り薬を処方することもあります。このハイドロキノンを使用する場合は、医師に相談して正しい外用法を守ってください。

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どうしても気になる肝斑には美容医療の力を借りる手も

――ビタミンCとトラネキサム酸の服用や、ハイドロキノンの外用以外の治療法はありますか?

それらの治療で効果が実感できないという方には、イオン導入をおすすめしています。これは、皮膚に微弱な電流を流し、イオン化した水溶性の有効成分を肌の奥まで届ける治療法で、シミを薄くするために必要な箇所へ効果的に送り込めることが魅力。肝斑の場合は、トラネキサム酸のイオン導入が中心となります

――一般的なシミの場合、レーザー治療でとることもできますが、そういった治療法は肝斑にも有効なのでしょうか?

まず前提として、肝斑に一般的なレーザー治療は行いません。老人性色素斑ではレーザー治療の効果はありますが、肝斑では逆に悪化するケースが多く見られるからです。今のところ、肝斑を完全に消す方法はわかっていませんが、トーニングというレーザー治療で一定の効果が報告されており、多くの美容皮膚科で受けることができます

ノアージュでは、ベースの治療として、ビタミンCとトラネキサム酸を飲んで肌を整えた上で、トーニング治療を繰り返し行うことをおすすめしています。ただし、肝斑の治療はとても難しく、消しゴムで消すようにはいきませんし、かなりの期間がかかります。そこで、トーニングにイオン導入を組み合わせるなど、より効果を期待できるよう工夫をしています。すべての方に劇的な効果があるわけではありませんが、患者様の肌状態をちんと見極め、その方のライフスタイルやご予算をお聞きしてから施術を提案していますので、ご安心ください。ノアージュは、無理なく続けられること、そしてその方に合った治療を行うことが大切だと考えています

一般的なシミに比べて目立たないものの、お顔の広い範囲に現れることが多い肝斑は、しわやたるみと同じように気になりますよね。どれが肝斑かを自分で鑑別するのは難しいですが、治療を行えば薄くできるものもあります。今回、ご紹介したセルフケアを心掛けつつ、気になることがあれば、気軽に皮膚科の医師に相談していただけたらと思います。


トモコ先生の診察を受けられる施設はこちら
東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ


SUPERVISERこの記事を監修した人

上島先生

PROFILE

上島 朋子 (かみしま ともこ) 医師

医学博士
専門分野:皮膚科

1992年新潟大学医学部卒業
東邦大学医学部大森病院、栃木県立がんセンター、財団法人鎌倉病院皮膚科部長を経て2016年より東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ勤務、神奈川美容外科クリニックでは10年間非常勤医師として勤務、2018年5月よりノアージュ院長に就任。病理学の研究を経て皮膚科医になった経歴から、「肌」という繊細な臓器をしっかりと見つめ治療・施術を提供することをモットーとする。「肌の健やかな美しさ」にこだわり、疾患の治療から先端美容医療、そして再生医療の研究まで手がける。

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