更年期に増える抜け毛や薄毛、どうすればいい?

「髪は女性の命」ともいわれますが、年齢とともにハリやコシが減少し、抜け毛・薄毛に悩んでいるという人もいるのでは?こうした声は、40代以降の女性に多く聞かれることから、その原因のひとつに女性ホルモンの減少が関係しているとも。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。

ここでは、東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュの上島朋子院長に、更年期を迎えた女性に見られる抜け毛や薄毛の原因と治療法、そして日頃から心掛けておきたいケア方法について伺いました。

抜け毛や薄毛の原因は、更年期のホルモン減少によるものだけではない

――抜け毛や薄毛というと男性に多い印象がありますが、女性にも起こるのでしょうか?

はい、起こります。具体的には、更年期を迎えた女性の場合は「びまん性脱毛」という状態が比較的多く見られます。髪の毛が抜けるというよりも、髪の毛自体が細くなって全体のボリュームが減ったり、上から見るとスカスカしているような状態になったりするものです。

生え際や頭頂部がわかりやすく薄くなってくる男性に対して、女性の場合は比較的広い範囲が全体的に薄くなるので、気付きにくいといえます。

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このほか、抜け毛や薄毛としては「円形脱毛症」や「瘢痕(はんこん)性脱毛」「休止期脱毛」「トリコチロマニア」「甲状腺機能低下に伴う脱毛」といったものがあります。

・円形脱毛症
コインのような円形状に毛が抜け落ちます。多くは1個から数個の脱毛斑ができた後、自然治癒しますが、多発して頭全体の毛が抜けることや、全身の毛が抜ける場合も。ストレスをはじめさまざまなことが引き金となり、自分で自分の細胞を破壊してしまう自己免疫疾患のひとつと考えられています。

・瘢痕(はんこん)性脱毛
瘢痕(はんこん)とは、一般的には切り傷などの炎症が治った後に残る傷跡のことです。しかし、感染症や膠原病(こうげんびょう)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)といった病気に伴うものや、原因不明の炎症による瘢痕もあります。瘢痕性脱毛は、何らかの炎症によって皮膚組織が壊れて瘢痕となり、毛穴の奥の毛を作る部分がつぶれて、髪の毛が生えなくなってしまう病気です

・休止期脱毛
発毛には、髪の毛を成長させる「成長期」と成長が止まる「退行期」、さらに、髪の毛が抜けて次の発毛のための準備期間となる「休止期」というサイクルがあります。このサイクルが乱れて多くの毛が休止期に移行して一気に抜けてしまうというのが、休止期脱毛です。食生活の乱れやストレス、分娩などが影響することもあります。

・トリコチロマニア
トリコチロマニアとは、無意識に自分で髪の毛を抜いてしまう病気です。周囲の人はおろか、本人も気付いていないこともあるので、治療を行いながら慎重に鑑別していく必要があります。

・甲状腺機能低下に伴う脱毛
甲状腺ホルモンには、皮膚や髪の毛の成長を促す働きがあるので、そのホルモンを分泌している甲状腺の機能が低下すると、髪の毛が薄くなったり、抜け毛が増えたりすることがあります。甲状腺機能低下症は女性に多い病気です。

――年齢に伴う女性の抜け毛や薄毛の原因には、どういったものがあるのでしょうか?

更年期の女性の場合は、女性ホルモンの減少が影響していると考えられています。とはいえ、同じ更年期世代の方でも、薄くなる人とならない人がいらっしゃいますよね。また、更年期以前から薄毛の悩みを持つ女性もいます。ですから、一概に女性ホルモンだけが原因であるとは言い切れないんですよ。

40代以降の女性の中には、以前に比べると髪にコシがなくなった、全体のボリュームが減ったと感じる方もおられると思いますが、それは肌のしわやたるみと同じで、年齢的な変化によるもの。抜け毛、薄毛の場合は、先程挙げたような疾患が隠れている可能性もありますので、医師の診察を受けていただくことが大切だと思います。

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さまざまなタイプから自分に合った治療法を

――クリニックではどんな検査、診察が行われるのでしょうか?

まずは、抜け毛や薄毛の原因が病気由来のものかどうかを確認するために、血液検査をはじめ、頭皮の状態や抜け毛の状況を診察します。場合によっては、頭皮の一部を取って調べる皮膚生検をすることもあります。その結果、もし病気が原因であったら、そちらの治療をしていただきますし、病気が原因ではないけれど治療をしたいという方には、そこからさまざまな頭皮美容治療のご相談ということになります。

――治療法にはどういったものがありますか?

症状の程度に合わせて段階的に治療を進めていきますが、気軽に始められるのは「パントガール」や「ビビスカル」といったサプリメントを飲んでいただく方法です。前者は細胞代謝を促進し、発毛や健康な髪の毛に必要な栄養成分を配合した生薬由来のものです。後者はイヌイットの女性には薄毛が少ないという事実からヒントを得て彼女たちが主食にしている海洋性コラーゲンを主成分として作られました。また最近話題の「エクオール」にも、髪や皮膚を健やかに保つ働きがあるといわれています。

もう一歩進んだ治療として、「LLLT」という低出力のレーザーや赤色LEDなどの光を頭皮に当てる方法があります。これは、最近では家庭用の物も市販されているんですよ。また、頭皮に直接塗るタイプの「ミノキシジル」という薬も。これは、頭皮の血流を促すほか、休止期から成長期への移行をスムーズにさせて発毛を促す、効果的な治療法のひとつです。

さらには、成長因子などの成分を頭皮に直接注入する方法として、「PRP」や「HARG(ハーグ)療法」、そして最終的には植毛などの治療法があります。症状が深刻な場合や、これまで試した治療に効果を感じなかった方は、一度医師にご相談ください。

また、クリニックの治療とは少し離れますが、治療効果が現れるまでのあいだ、ウィッグや市販の育毛剤を使うのも一つの手です。自分に合ったものが見つかれば、十分効果を得られることもあります。最近では「女性用」として売られているものも多くなりました。発毛促進や脱毛予防といった働きかけだけでなく美容成分や保湿成分が入ったものもありますが、使ってすぐに効果がでるものではありません。個人差はありますが、髪に変化が現れるまでには、平均して3ヵ月~6ヵ月かかりますので、まずはそれを目安にすると良いと思います。

抜け毛、薄毛の予防には頭皮マッサージが有効

――抜け毛や薄毛を予防するために、日頃から気を付けておくべきことはどういったことでしょうか?

やはり、暴飲暴食や偏った食事、生活習慣の乱れといったことは避けていただきたいですね。必要な栄養素が足りていなければ、健康な髪の毛も作れませんから。中でも、髪の毛にとって鉄と亜鉛は重要です。鉄不足で貧血になると頭皮に十分な血液が運ばれず、毛根にも栄養が行き渡りません。亜鉛は髪のタンパク質であるケラチンの生成に必要な栄養素であり、定期的な摂取が望まれます。鉄や亜鉛が不足している人は、それらを摂取するといい髪の毛が生えてくることは研究でも実証されています。ですから、普段から意識して摂取していただくといいと思います。

また、頭皮のマッサージも、ぜひ毎日の習慣に取り入れてもらいたいことのひとつ。抜け毛や薄毛で悩んでいる方の多くは、頭皮が硬くなり血流が悪くなっています。そのため、栄養分も供給されなければ老廃物も流れていかなくなっているのです。頭皮をつまむようにして動かしてみてください。いかがですか?もし硬くて動きにくいようでしたら、今日からシャンプーの時に頭皮マッサージをしてみてください。マッサージする際は頭皮を傷付けないよう、指の腹を使って優しく円を描くように動かしましょう。

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――良かれと思ってマッサージをしても、頭皮を傷付けてしまえば炎症による脱毛症から、やがて瘢痕性脱毛になってしまう場合がありますね。

そういう場合もあります。頭皮に炎症がある人って、意外と多いんですよ。特に、日常的に白髪染めをしている方は、それによって頭皮に繰り返し炎症を起こしていることがあります。理想をいえば、抜け毛や薄毛に悩んでいる方は染めるのを止めていただくのが一番なんですが、なかなかそうもいかないですよね。

まず、頭皮に炎症がないかどうかを確認していただき、もしあった場合は皮膚科で診察を受けましょう。また、合わないシャンプーを使い続けていたり、洗い過ぎたりすると炎症はひどくなりますから、頭皮のケアは優しく、丁寧にやっていただけたらと思います。

抜け毛や薄毛の対策は、髪の毛をケアするだけではなく、毛根や頭皮を改善していくことが大切です。それと同時に、新しい治療法も開発されているので、これらの症状に悩んでいる方は、ぜひ一度医師に相談してみてください。自分に合った対処法がきっと見つかるはずです。


トモコ先生の診察を受けられる施設はこちら
東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ


SUPERVISERこの記事を監修した人

上島先生

PROFILE

上島 朋子 (かみしま ともこ) 医師

医学博士
専門分野:皮膚科

1992年新潟大学医学部卒業
東邦大学医学部大森病院、栃木県立がんセンター、財団法人鎌倉病院皮膚科部長を経て2016年より東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ勤務、神奈川美容外科クリニックでは10年間非常勤医師として勤務、2018年5月よりノアージュ院長に就任。病理学の研究を経て皮膚科医になった経歴から、「肌」という繊細な臓器をしっかりと見つめ治療・施術を提供することをモットーとする。「肌の健やかな美しさ」にこだわり、疾患の治療から先端美容医療、そして再生医療の研究まで手がける。

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