美と健康の敵は「低体温」!体温を少し上げればすべてがWin・Win

コロナ禍で一躍注目を集めている体温。発熱が新型コロナウイルス感染症の症状のひとつであることから、自宅でも外出先でも体温を測る機会が増え、「自分の平熱は何℃なのか」「何℃からが発熱なのか」「低体温とは何℃からで、どんな影響があるのか」など、体温について考える機会も増えました。

実は、体温は自律神経、免疫、代謝、ホルモンといった、体の中枢を支える機能に大きく関わるもの。Withコロナの時代、毎日の検温を美と健康につなげる秘訣を、せんだい総合健診クリニック院長の石垣洋子先生に2回にわたって教えていただきます。

低体温はなぜ良くない?

――体温は、どれくらいがベストなのでしょう。

免疫の働きという観点では、36.5℃以上(36.5〜37.0℃)が望ましいのですが、現代的な生活スタイルの影響で、日本人の平熱は低下傾向にあるといわれています。実際、毎年のインフルエンザ予防接種の際に検温してもらうと、平熱が35℃台の方も珍しくありません。

昔は36℃台の方がほとんどでしたから、最近は低体温化が顕著でびっくりしますね。

平熱は、体温を測る時間帯や人によって個人差があるものですが、36.5℃を下回る平熱は低体温と考えられています。できるだけ、36℃台の体温をキープできるよう、体温アップに努めていきましょう。

――低体温になると、どういう面で良くないのですか?

低体温は、血行が悪くなって、体の隅々まで血液が行き届かなくなっている状態。血液は、私たちの体を構成する約60兆個もの細胞に酸素と栄養を送り届け、代わりに老廃物を持ち帰る働きをしています。

その血液の中には免疫機能を持った白血球がいて、体の中の異物を見つけるためにパトロールしてくれているので、血流が悪くなると白血球の働きも悪くなり、免疫力が30~40%低下してしまいます。免疫力が落ちると、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの感染症にかかりやすくなります

さらに、白血球はウイルスや細菌だけでなく、隠れたがん細胞も攻撃してくれています。実は、健康な人の体にも1日5,000個はがん細胞ができているのですが、白血球がきちんと働いていてくれれば、姿を現すことはありません。

体温と、健康維持に欠かせない免疫力とのあいだには、密接な関係があることがわかりますよね。免疫力が30%低下すれば、1日に1,500個近くのがん細胞が免疫システムからこぼれ落ち、増殖していく可能性があるといわれています。

――ほかに、低体温で考えられる悪い影響があれば教えてください。

低体温はホルモンバランスにも影響するので、冷え性、生理不順、不妊、更年期障害などになりやすいですね。代謝が低下することによって老化の進行が早まり、肥満や疲れやすさの原因にもなります。美容面では、肌細胞の入れ替わりが遅くなって、肌荒れやニキビ、くすみなどが出やすくなります。

また、髪のターンオーバーにも影響するので、白髪や抜け毛のリスクも高まります

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体温が1℃下がるとどうなる?

――例えば、体温が1℃下がると、免疫力や代謝はどれくらい下がるのでしょう。

体温が1℃下がると、免疫力は30〜40%低下し、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの感染症にかかりやすくなります。基礎代謝は、体温1℃で10%から20%低下。これは、1日200~500kcalに相当し、1ヵ月で体重が1〜2kg増加することもあります

体内酵素の働きも、体温1℃で50%は低下するので、栄養の消化だけでなくエネルギーを生産する力も弱まってしまいます

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――1℃くらいなら...と軽く見てしまいがちですが、そうではないのですね。

たった1℃ではなく、美と健康に欠かせない1℃です。体温が上がると健康面でも美容面でもメリットがたくさんありますので、ぜひ体温を上げる努力をしていただきたいと思います。

――低体温に気付いて改善するには、まず平熱を把握することが大切でしょうか。

そうですね。毎日の習慣に検温を組み入れて、自分の平熱を知りましょう。その上で、36℃より低ければ低体温の可能性がありますので、対策をとることをおすすめします。

検温する場所は、脇や口、耳、おでこなどがありますが、体温は中心に近付くほど高く安定しているので、より正確に検温をするなら、外気温の影響が少ない脇、口、耳がいいでしょう。

――体温を測る時間は、朝なら朝、夜なら夜と一定にすべきですか?

体温は早朝が最も低く、夕方にかけて上昇していくため、検温する時間によって測定値には違いが出ます。食事の後や入浴後、運動後などは体温が高くなるため、避けたほうがいいですね。

現在は出勤前の体温チェックが義務付けられている会社も多くなってきました。起床後、体温チェックタイムを決めてルーティンワークにすることをお勧めします。

――検温以外に、自分で低体温であることを認識する方法があれば教えてください。

体は、低体温であることを知らせるためにさまざまなサインを出しています。

・いつも手足が冷えている
・人より極端に寒がり
・頭痛
・肩こり
・疲れやすい

...といった症状があるときは、もしかして低体温かもしれないと疑ってみましょう。

美と健康の維持・向上のために、1℃アップを目指そう

これまで体温を測るのは、インフルエンザの予防接種や明らかに発熱が疑われるときくらいで、血圧は気にしても体温のことはあまり気にかけていなかった人がほとんどではないでしょうか。

体の中枢機能に大きな影響を与える体温は、「たった1℃」がとても重要です。自分の体温に興味を持ち、健康と美容の敵である低体温に早めに気付いて、体温アップを目指しましょう。

次回は、低体温の原因と、すぐに始められる対策について教えていただきます。


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せんだい総合健診クリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

石垣先生

PROFILE

石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師

専門分野:内科

1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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