自身の体への理解を高め、ライフステージに合った医療と検診を

2022年1月29日に開催された「日本総合健診医学会 第50回大会」において、せんだい総合健診クリニック院長の石垣洋子先生が「女性検診のSDGs~性差医療 女性検診を振り返って~」のテーマで講演をされました。
今回は、本講演の中から、ILACY(アイラシイ)世代にこそお伝えしたいメッセージをご紹介します。

女性特有の疾患リスクに配慮した医療が重要

男性と女性の特性に応じた医療、さらには女性特有の変化に配慮した医療の重要性に早期から注目してきた石垣先生。女性による女性のための健診の発展を牽引し、性差を考慮して医療を提供する「性差医療」の普及に注力してきた第一人者でもあります。

女性は、男性に比べて生涯を通じた心身の変化が大きい傾向があります。女性のライフステージを大きく下記の4つに分け、それぞれのステージで女性が置かれる状況が大きく異なること、特に女性ホルモン(エストロゲン)のサポートがなくなる閉経後に、性差医療の価値が高まります。

<女性のライフステージ>
・思春期...初潮が始まってから月経が安定するまでの時期
・性成熟期...エストロゲンの分泌や月経周期が安定する時期
・更年期...閉経前後の10年間
・高齢期...更年期以降の時期

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閉経後の女性は肥満症、脂質代謝異常症、骨粗しょう症、高血圧などのリスクが高まるほか、60歳以降になると微小血管狭心症、くも膜下出血などの疾患発症率が上がることがわかっています。そして、女性の場合は、その予後も悪いといわれています。さらに、女性ホルモン(エストロゲン)は心血管の保護作用があるため、閉経後にエストロゲンが枯渇すると肥満などのリスクが高まることも。
そのため、閉経前・閉経後の疾患リスクを理解し、注意すべき点を踏まえて検診を受けることをおすすめします。

現在では、まだ数は少ないものの、「女性内科女性外来」「性差医療センター」などいった名称の医療機関で性差医療を行っています。そこでは、性の特性の理解に基づき、早期に適切な予防や治療を受けることができます。また、下記に挙げるような女性医療に特化したサイトなどを活用して、女性のライフステージごとに最善の医療が受けられる環境を見つけることも可能です。

女性外来オンライン(NPO法人 性差医療情報ネットワーク)

子宮がん、乳がんは検診で早期発見すれば治癒率が高い

女性のがん罹患率を部位別に見ると、女性特有のがんである乳がんが1位、子宮がんが5位となっています。この2つは、早期発見できれば治癒率が高いがんであるにもかかわらず、今なお乳がんは年間1万5,000人、子宮がんは年間7,000人もの人が亡くなっています。

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こうした現状の背景には、日本国内における乳がん・子宮がんの検診受診率の低さがあります。国内の乳がん・子宮がん検診受診率は40%台と、低調のまま推移しています。欧米の受診率が70%であることを考えると、日本の受診率が際立って低いことがわかります。女性特有のがんの検診は、特に注意して受診いただくことをお勧めします。

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乳がん検診:年齢や乳房の状態に合った検査方法を選ぶ

乳がん検診は、自分の年齢や乳房の状態に合った検査方法を選ぶことによって、より高い確率で早期発見・早期治療を実現することができます。なかなか自分の乳房の状況はわからないため、検診について事前に相談できて、当日検査項目を選べるクリニックを選ぶのもいいでしょう。

しかし、なかなかそういったクリニックが見つからない場合も多いため、40~50代なら、マンモグラフィと超音波を併用するのが望ましいでしょう。検診を担当した医師は、検査結果に年齢とリスクの有無を掛け合わせて、次回の検査で推奨される項目を結果表に記載します。受診者はその結果を基に検査項目を選び、継続的に健診を受けることをおすすめします。


子宮がん検診:更年期以降に再び子宮頸がんのリスクが高まる

2004年、厚生労働省は「がん検診の指針」を改正し、自治体の子宮がん検診の年齢を30歳以上から20歳以上へと引き下げました。若年層に子宮頸がんが増えていることを受けての対応ですが、体内に存在していたHPVが活発化する更年期以降も、子宮頸がんのリスクは高まります

女性のQOL(生活の質)向上を踏まえた子宮がん検診の重要性については、同大会で講演した浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生のセミナーで詳しくふれられていますので、そちらの記事もご覧ください。

<こちらもCHECK>
40歳以降の婦人科疾患予防には、検診とセルフケアが重要!

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ヘルスリテラシーを高め、自分自身で情報を取りにいく努力を

乳がん検診・子宮がん検診の受診率の低さからもわかるとおり、日本人のヘルスリテラシー(※)は低いといわざるをえません。子宮頸がんの知識調査では、「子宮頸がんの原因を理解している」と答えた人が、全世代を通じて10%以下という結果にも顕著です。

※ヘルスリテラシー...自分に合った健康情報を入手し、理解したり評価したりした上で適切に活用する力。

■ヘルスリテラシーの国際比較

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ヘルスリテラシーの低さには、以下の心情が影響しているといえます。
・「婦人科を受診することに抵抗感がある」
・「検診をどこで受ければいいのかわからない」
・「何となく面倒」

がんに関する知識の普及と、がん検診受診のきっかけとして、多くの自治体が無料検診クーポンを配布しています。受けやすく、続けやすいがん検診の実現に向けて医療機関も工夫を重ねており、受診者の負担は昔に比べてかなり軽減されているといえます。
一人ひとりがヘルスリテラシーを高め、こうした情報を取りにいくようにすることが、乳がんや子宮がんをはじめとした疾患から身を守ることにつながります。

検診は、みずからの体を主体的に守る方法のひとつ

女性がこれからどんどん活躍していくためにも、健康に自信をもっていかなければなりません。女性がさまざまな疾患から身を守るには、ライフステージごとに異なる疾患リスクについて理解がある医療機関とつながりを持つことや、必要な検診を適切なタイミングで受けることが重要です。
これを機に、自身のライフステージと疾患リスクを見直し、定期的に必要な検診を受けてみましょう。


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せんだい総合健診クリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

石垣先生

PROFILE

石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師

専門分野:内科

1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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