【医師監修】その指の痛み、更年期が原因かも?知っておきたい新常識『メノポハンド』

東京ミッドタウンクリニック

平瀬 雄一(専門分野:形成外科)

更年期症状というと、ほてり発汗イライラなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実は、更年期世代の約3割が「手の痛み」「こわばり」「しびれ」といった症状を経験しています。

東京ミッドタウンクリニック手外科外来の平瀬雄一医師に、更年期と手の不調の関係や、早めのセルフケアの重要性について伺いました。

更年期症状は「ホットフラッシュ」だけではない

――最近、「メノポハンド」という言葉が話題ですが、どんな病気なのですか?

「メノポハンド」とは、更年期手(menopausal hand)の略語です。もともとは、私が2017年に、更年期女性に現れる手の症状を「メノポーザルハンド」と定義しました。「メノポーザル」は「メノポーズ(閉経)」に由来する言葉で、閉経前後に現れる手の不定愁訴を指します。

当時は、病気ではなく「未病」の状態として定義していました。患者さんは「手がこわばる」「痛い」「しびれる」といった症状で受診されますが、画像検査では異常が見つからず、病名もつかないことが少なくありません。

CHECK

最近、増えていませんか?

  • 朝、手に力が入りにくい
  • 瓶やペットボトルの蓋が開けにくい
  • 指輪がきつくなった
  • 物を落としやすい

しかし、患者さんにとっては毎日これだけ痛くて不調があるのに、「異常ありません」と言われても納得できません。そこで私は、そのような病気になる前の未病の段階を「メノポーザルハンド」と名付けたのです。

ただ、そのまま放置すると、変形性関節症や腱鞘炎など、本当の病気へ進行することがあります。そこで2022年、日本手外科学会が国民への啓発を目的に、「メタボ」のようにわかりやすい言葉として「メノポハンド」という言葉をつくりました。現在では、更年期前後の未病だけでなく、更年期以降に起こるさまざまな手の病気を含めて「メノポハンド」と呼ぶケースが増えています。

――「メノポハンド」も更年期症状のひとつなのですか?

更年期症状は腰痛、肩こり、便秘など、200種類以上あるといわれています。更年期=ホットフラッシュと思われがちですが、手の症状だけが現れる方も少なくありません。多くの女性が「何かおかしい」と感じて受診しているものの、その背景が十分に理解されていないのです。

手の不調は、エストロゲン低下のサイン

――更年期症状ということは、「メノポハンド」も女性ホルモンの低下が原因なのですか?
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初期のメノポハンドはレントゲンに異常が映らないことも多く、受診をしても、「年齢のせいですね」「使い過ぎですね」と言われてしまうケースがあります。しかし、使い過ぎだけが原因なら、利き手だけに症状が出るはずですが、そうではありません。背景にはエストロゲンという女性ホルモンの低下による膨脹が関係しています。

エストロゲンは45歳頃から減少し始め、50~52歳頃に閉経を迎えると、その後、10~15年ほどかけて、20代の頃と比べると約8分の1から10分の1程度まで急激に低下します。

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エストロゲンというと、生殖機能に関わるホルモンというイメージが強いかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。脳や自律神経、血管、骨、皮膚、関節、腱など、全身の機能維持に重要な役割を担っています。

しかも、エストロゲンには全身の腫れを抑える働きがあります。そのため、エストロゲンが急激に低下すると、関節や腱の周囲が腫れやすくなり、

  • 腱・腱鞘が腫れる
  • 関節周囲滑膜が腫れ、指が太くなる
  • 皮膚・軟部組織の張りが失われる

などの症状が現れてくるのです。実際に手の症状で受診される方は、圧倒的に女性が多く、なかでも50代前半が最も多くなっています。

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※平瀬唯一医師 研究データより引用

――なぜ、圧倒的に女性が多いのですか?

男性のエストロゲン量はもともと少なく、一生を通じてほぼ一定です。60歳頃に少し低下する程度です。

一方、女性は45歳頃から急激にエストロゲンが減少します。実は50歳を過ぎると、体内のエストロゲン量は男性のほうが女性より多くなるのです。女性の体内では、男性ホルモンであるテストステロンはほぼ一定です。それなのに、エストロゲンだけが急激に減少するため、更年期以降は女性単体でもホルモンバランスは相対的に男性ホルモン優位になります。

実は、妊娠・授乳中も月経が止まり、エストロゲンが低い状態になるため、更年期とよく似た手の症状が現れることがあります。そのため、出産後に手の痛みや腱鞘炎を経験した方は、更年期にも同じような症状が現れやすい傾向があります。これは、エストロゲンが低下したときに症状が出やすい体質であることを示しているのです。

放置すると関節の変形につながることも

――「メノポハンド」を放置するとどうなりますか?

メノポハンドの症状は、最初は軽いものが多く、「朝だけこわばる」「少し違和感がある」程度です。しかし7〜10年放置すると、

  • ヘバーデン結節
  • ブシャール結節
  • 母指CM関節症

などへ進行することがあります。

体は最初、小さな声でサインを送っています。でも、更年期世代の女性は仕事や家事、子育て、親の介護などで忙しく、その声に気づけません。関節は一度変形すると元には戻りません。だからこそ、朝のこわばりや違和感など、小さな変化を大切にしてほしいのです。

エクオールが期待される理由

――「メノポハンド」の治療法について教えてください。
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一般の医療機関では、加齢や疲労と説明されることもあるため、手外科専門医を受診するのがおすすめです。

手外科専門医とは、整形外科または形成外科の専門医を取得した医師が、さらに高度な研修と試験を経てなる手の専門医です。手外科専門医であれば、装具(スプリント)を作ったり、ステロイド注射を行ったり、エクオールを勧めたりと、症状に応じた治療を選択できますし、必要に応じて手術を検討することもあります。お近くの手外科専門医は、日本手外科学会のホームページで検索できます。

――エクオールとはどういう成分ですか?

エクオールは大豆イソフラボンを摂取したときに作られる成分で、エストロゲン受容体に作用し、不足したエストロゲンの働きを補う成分です。これまでの研究では、エクオールの摂取で手の痛み、こわばり、痛みのある関節数の改善が確認されました。しかし、実際にエクオールを作れている人は、日本人の約42%。2人に1人以上はエクオールをつくることができていない状態なのです。

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エクオールを作れるかどうかは、簡単な尿検査でわかります。心配な方は一度、調べてみてもいいでしょう。

――エクオールはどのようにしたら摂取できますか?

1日に必要なエクオールの摂取量は10mgが目安ですが、それだけのエクオールを体内で賛成するためには、多くの大豆食品を毎日摂取する必要があります。さらに、エクオールは体内に蓄積できず、1〜2日で体外へ排出されてしまいます。

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毎日欠かさず必要量を摂取するには、サプリメントもおすすめです。冬場はビタミンEを併用し、血流を意識したケアを取り入れましょう。

受診するタイミングは?

――違和感を感じた場合、どのタイミングで受診したらいいですか?

たまに違和感がある程度でも、まずはエクオールの摂取を3カ月続けてみてください。症状が改善すれば、更年期を過ぎるまでは、そのまま継続して摂取したほうがよいと思います。改善しない場合は、手外科専門医に相談してみましょう。

こんな方はぜひ受診を!

  • エクオールが作れない(メノポハンドのリスク約3倍)
  • 母親、祖母の手が変形している(メノポハンドのリスク約48倍)
  • 妊娠・出産・授乳期に手の痛みがあった
  • 朝起きたときに手指のこわばりなどの違和感が15分ほど続く
  • 手指が痛む日もあれば痛まない日もある

セルフケアでできること

――日常的にできる「メノポハンド」の予防策や対処法はありますか?

毎日のエクオール摂取のほか、次の3つをおすすめしています。

手袋をして眠る女性
01

手を冷やさないように
手袋をして寝る

寝ている間は血流が低下しているため、エストロゲンやエクオールも指先まで届きにくくなります。就寝時に手袋をして手を温めましょう。

起床後に手を軽く振る女性
02

起きたら手を振って
血流をよくする

手のこわばりやしびれは、朝起きた直後に出やすいのが特徴です。起きたら手を軽く振って血流を促すと、軽いしびれや痛みはとれやすくなります。

草むしりなど指先を使うつまみ動作
03

頻回な「つまみ動作」を控える

草をむしる、書類を何枚もめくる、洗濯ばさみを何度も使うなど、指先を酷使する「つまみ動作」は、腱鞘炎を起こしやすくなるため控えましょう。

ただし、「使い過ぎが原因」という意味ではありません。あくまでも、更年期で膨脹が起こりやすい状態にあるところへ、負荷が加わることで症状が出やすくなるということです。

大切なのは、体の小さな声を聞き逃さないことです。手の痛みを「年齢のせい」と片づけず、早めに自分の体と向き合うことが、更年期を健やかに過ごす第一歩になるでしょう。

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SUPERVISERこの記事を監修した人

PROFILE

平瀬 雄一 (ひらせ ゆういち) 医師

医学博士
専門分野:形成外科

東京慈恵会医科大学卒業、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校へ留学。米国デービスメディカルセンター客員教授、慈恵医大柏病院形成外科診療医長、埼玉成恵会病院形成外科部長を経て、2010年四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンターのセンター長に就任。2025年より東京ミッドタウンクリニックで手外科外来を開設。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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