【医師監修】40代の生理痛、生理周期、経血量は変化する?(2025年更新版)

40代は、月経にさまざまな変化が訪れる時期。月経の量はもちろん、期間、月経痛をはじめとする不快な症状の強弱もこれまでとは変わってきます。40代後半になって閉経が近付くと、出血量が急激に増えたり、ダラダラと出血が続いたりして、生活の質を著しく損なうことも。
ここでは、40代から現れる可能性のある月経の変化や、この時期を快適に過ごすための方法を、東京ミッドタウンクリニックの間瀬有里医師の監修でご紹介します。

※本記事は、2021年11月16日公開版を更新したものです

40代から閉経までの月経周期の変化

更年期になると、女性の体にはさまざまな変化が現れます。月経周期もそのひとつ。

通常、女性の月経周期は25~35日で、卵胞が子宮内で成熟して精子が入りやすい環境を整える「卵胞期」、卵胞が卵子を排出する「排卵」、受精卵が育ちやすい環境を作る「黄体期」、排卵後に受精が成立しないと子宮内膜がはがれて血液とともに排出される「月経」を繰り返しています。

しかし、卵巣が加齢とともに衰え始めると、卵胞の数が減り、卵胞から分泌される女性ホルモンも減少。脳からホルモン分泌を促す指令が出ることで卵巣が過剰に刺激され、毎月1回だった月経のサイクルが短くなり始めます。

その後、サイクルは長くなったり短くなったりしながら期間も不安定になり、やがて月経が来ない月が増え始め、次第に間隔が空くように。間隔がさらに広がって月経が停止し、停止から1年が経つと「閉経」です。

■閉経までの月経の変化

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40代で生じやすい、月経に伴う症状の変化

更年期に入ると、月経周期だけでなく、月経に伴う症状にも変化が現れます。

出血量が変化する

一般的に経血量が多い2~3日目に見られるような出血(1回の月経で150ml以上ある状態)が続く「過多月経」、短いあいだに何度も月経が来る「頻発月経」、2日目でも出血量が非常に少ない「過少月経」など、更年期に入ることで出血量が変わってきます。

中には、少量の出血がだらだらと続くパターンもあります。

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月経痛が変化する

女性ホルモンとともに、子宮を収縮させて痛みにつながる物質「プロスタグランジン」の分泌も減る更年期世代は、月経痛が軽くなる人が多いようです。しかし、中には以前より重い月経痛に苦しむ人もいて、個人差が激しいといえるでしょう。

月経痛が重くなるパターンでは、更年期のホルモンの乱れが月経に重なったり、あるいは器質性疾患が発生している可能性も考えられます。


月経に変化が出始める前に知っておきたいこと

40代を迎えた女性のなかには「これから私の体にはどんな変化が起こるのだろう」と、不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。そのような不安を少しでも解消できるように、以下では、月経に変化が出始める前に知っておきたいことを解説します。

閉経の前兆には個人差がある

月経に変化が現れる前に押さえておきたいこととして、まず挙げられるのは「閉経に至るまでの過程は人によって違う」という点です。

女性の体は、年齢を重ねるとともに女性ホルモンの分泌量が減少し、その過程で月経周期や出血の量も変化しやすくなります。ですが、その変化の仕方は人によってさまざまです。

閉経を迎えるまでの月経周期の乱れが「数か月続いた」という方もいれば、「数年続いた」という方もいらっしゃいます。また、出血の量について「1~2日間だけ少し出血があった」という方もいれば、「日常生活に支障が出るほどの出血があった」という方も存在します。
こうした違いだけでなく、なかには月経の変化がほとんど見られず、突然閉経することもあるのです。

このように月経の前兆には個人差があるため、年齢が近い、あるいはインターネット上の同世代の女性とご自身の状態を比べて過度に心配する必要はありません。ご自身の体ときちんと向き合うためにも、月経の状態に不安を感じた場合は、一度婦人科を受診してみるとよいでしょう。

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閉経時期を明確に知る方法はない

閉経の前兆が人それぞれ違うように、閉経する年齢も人によって異なります。そのため、閉経時期を明確に知る決定的な方法がないことも覚えておきましょう。

とはいえ、月経周期の乱れや基礎体温の変化を認識すれば、卵巣機能の低下に気づくことは可能です。たとえば基礎体温の高温期がなくなると、排卵が起こっていない状態であると判断できます。

また婦人科にてホルモン検査や、卵巣の中に卵子がどれくらい残っているのかを調べるAMH検査を受けることで、ある程度の閉経時期を予測できる場合もあります。ただし、ホルモンの分泌量はその日の体調によって変動するため、一度の検査では判断できない可能性がある点については、あらかじめご留意ください。

超音波検査を受けたほうがよい

婦人科にて受けられる超音波検査も、ご自身の体の変化を知るために有効な手段の一つです。

超音波検査で卵巣の状態や子宮内膜を観察すれば、月経についてある程度予測できます。たとえば、何か月も月経が来ていない女性が超音波検査を受けることで、「そろそろ出血があるかもしれない」「しばらく出血はないだろう」という判断が可能になるというわけです。

また超音波検査では、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮体がん、卵巣腫瘍などを見つけられる可能性もあります。

月経の状態を把握できるだけでなく、これらの病気の早期発見にもつながるるので、子宮頸がん検査で婦人科を受診する際は、超音波検査もあわせて受けることをおすすめします。

更年期を快適に過ごすために対処方法を知っておく

本格的に更年期を迎える前に、今後現れるであろう体の不調への備え方を事前に押さえておくことも大切です。

更年期になると、頭痛や発汗、動悸、イライラ感、気分の落ち込みなど、さまざまな心身の不調が現れます。

そこで、これらの症状の緩和が期待できる方法として覚えておきたいのがホルモン補充療法(HRT)です。
ホルモン補充療法とは、分泌量が減ってしまった女性ホルモンを、飲み薬や塗り薬、貼り薬を用いて補充する治療法です。この治療によって減少した女性ホルモンを適切に補充することにより、更年期の症状が徐々に緩和され、快適な日々を過ごすことができるでしょう。

ほかにも、薬局やドラッグストアで販売されている漢方薬も、更年期に現れる症状に対して効果を期待できるといわれています

閉経前後はデリケートゾーンのケアを行う

「閉経前後には、デリケートゾーンを丁寧にケアする必要がある」という点も、月経に変化が現れる前に知っておきたいことの一つです。

更年期になると、デリケートゾーンの乾燥による痒み、痛み、不快感に悩まされる方も少なくありません。さらに、加齢とともに腟の自浄作用が弱まるため、炎症を引き起こしたり細菌が体内に侵入したりする可能性も高まってしまいます。

こうしたトラブルを防ぐためには、デリケートゾーン用の洗浄料や保湿剤を使用することが重要です。
どのようなものがいいかは下記項目で解説します。


月経に変化が訪れる時期におすすめのセルフケア

経血量や月経痛の変化が日常生活に影響を及ぼすほどつらいときは、疾患の可能性も踏まえてすみやかに医療機関を受診しましょう。

また、健康な腟は酸性に保たれ、雑菌の侵入や病原菌の増殖を防ぐ自浄作用が働いていますが、女性ホルモンが減少すると自浄作用が低下して、細菌や雑菌が入り込みやすくなります。大量出血やダラダラ出血は、細菌の温床の原因となるリスクが高い上、不快指数を高めるため、ケア方法の見直しが必須

月経に変化が見られたら、以下に挙げるようなケアを実践して毎日を快適に過ごしましょう。

デリケートゾーン用のケア用品で丁寧に洗浄&保湿する

腟周辺のデリケートゾーンを洗う際、ほかの体の部位を洗うのと同じボディソープを使っている人は多いかと思いますが、それはすぐに見直しましょう。

ボディソープは洗浄力が強く、腟に必要なバリア機能まで洗い流してしまうため、pH値が5.0~7.5に調整されたデリケートゾーン用のソープを使って洗いましょう

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さまざまなケア用品がありますが、おすすめは腟の自浄作用を保つ上で欠かせない「グリコーゲン」を補える乳酸菌が配合されている物。洗浄後は、ソープと同じく乳酸菌が配合された保湿剤を使って、潤いを与えてください

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デリケートゾーンをこまめにチェックしよう

なんとなくデリケートゾーンをタブー視し、自分のデリケートゾーンを見る習慣がない人は多いもの。しかし、間違ったケアや洗い残しを防ぎ、腟周りの不調のサインを早期に発見するためには、デリケートゾーンの状態を知ることが欠かせません

お風呂で体を洗うときや、お風呂から上がって全身の保湿をするときに、洗えていない部分や乾燥している部分、荒れている部分がないか、デリケートゾーンをチェックする習慣をつけましょう。

月経時のナプキン交換はこまめに

同じナプキンを長時間つけていると、雑菌が繁殖する原因に。においやかゆみなどにつながる可能性もあるため、こまめに取り換えることが大切です。

以前と同じナプキンを使っているのに不快感があるときは、素材を見直し、より肌に優しい物を選ぶといいでしょう。

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冷えに注意し、リラックスを心掛けよう

月経痛がひどいときは、体を締め付けない服を選び、カイロや腹巻などで下腹部を意識的に温めて血行を促進するようにしましょう

無理のない範囲でストレッチを行ったり、リラックス効果のあるハーブティーやアロマなどを取り入れたりするのも効果的です。


質の良い睡眠をとる

月経に変化が現れ始める時期を快適に過ごすには、質の良い睡眠も欠かせません。

体調の変化が気になるこの期間は、女性ホルモンの変動によって自律神経のバランスが崩れがちです。そんなときに睡眠不足が重なると、自律神経のバランスの乱れに拍車をかけ、さらなる不調を引き起こしてしまうかもしれません

こうした悪循環を避けて、質の良い睡眠をとるためには「寝室」「寝具」「着衣」の3つを整えておくことが大切です。
寝室では、スマートフォンやタブレットなど光を放つものはできる限り枕元から離れた場所に置き、室内の温度は適温を保ちましょう。
また、寝具は季節によって衣替えするのがマストです。夏には通気性の良い素材や、接触冷感タイプの寝具を、そして冬には電気毛布や毛足の長い毛布を使用して心地よく過ごせるように工夫しましょう。
吸水性や肌触りの良いパジャマを着用すれば、寝ているあいだの快適さがアップします。

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ツボ押しをする・お灸を据える

月経に変化が出始めて下腹部に不快感を覚えたら、以下で紹介するツボを刺激してみるのもおすすめです。



月経による下腹部の違和感の軽減を期待できるツボ
名称 ツボの位置 期待できる効果
関元(かんげん) おへそから指4本分ほど下の位置 ツボの場所を温めたり、手のひらで軽く押さえたりすることで月経痛や不快な症状を和らげる効果が期待できる
中極(ちゅうきょく) おへそから指6本分ほど下の位置 月経痛の緩和や冷えの改善などに作用するといわれている
帰来(きらい) 中極を中心として、そこから指3本分ほどを左右に移動させた位置 月経痛の緩和や婦人科系のトラブルの改善に効果があるといわれている

市販されている貼るタイプのお灸や温感アイテムでお腹を温めることも、月経により下腹部の不快感や月経痛の軽減に効果的です。また、手のひらで優しくさすりながら温めることでも効果が期待できるでしょう。

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適度に運動する

適度な運動は、月経の変化によって乱れた自律神経を整える効果が期待できます。

ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの適度な運動は、副交感神経のはたらきを促すことで、崩れてしまった自律神経のバランスを整えるといわれています。また、これらの運動を楽しみながら行えば、ストレスの発散にもなるでしょう。

ただし、過度な運動は交感神経を高ぶらせ、自律神経のバランスを乱してしまう可能性もあるため、"適度な運動"が重要です。
自律神経のバランスを整えたり、月経による不調の緩和が目的であれば、息が少し弾む程度で体を動かしましょう。


40代、月経の変化と上手に付き合おう

ホルモンバランスが乱れ始める40代、月経周期や月経痛、経血量などに変化が出るのは当たり前のこと。

まえもって日常のケアを見直し、快適に過ごす工夫をして、焦らず乗り切りましょう。

SUPERVISERこの記事を監修した人

間瀬先生

PROFILE

間瀬 有里 (ませ ゆり) 医師

医学博士
専門分野:婦人科

東京ミッドタウンクリニックに勤務。日本医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医。日本産科婦人科学会指導医。日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。東京ミッドタウンクリニックと同フロアでは、管理栄養士が常駐し、より健康でより美しい生活をサポートするためのヘルスケアショップ TMMC Plus(ティーエムエムシープラス)が展開。

東京ミッドタウンクリニック:https://www.tokyomidtown-mc.jp/
TMMC Plus(ティーエムエムシープラス):http://www.tmmcplus.com/

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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