輝く人

平野ノラが語る42歳でのリアルな高齢出産|バブリーな体と心の整え方(後編)

前編では、赤裸々に語ってくださった妊活のエピソードや、妊娠中の20kg増で変わり果てた姿を記念写真から「全トリミング」してしまったという切実ながらも笑えるエピソードを語っていただきました。
後編のインタビュー記事では、出産時からのエピソードを伺っています。「マジ余裕だったわー!」 病棟の廊下ですれ違った若いママの電話の声に、点滴を引きずりながら愕然としたというノラさん。そこで突きつけられたのは、20代と40代の決定的な「回復力の差」でした。
後編では、華やかな芸風の裏側で直面した、産後の「ゾンビ状態」やメンタルの危機、そしてボロボロの体をどう立て直していったのか。綺麗事一切なし、平野ノラ流・高齢出産のリアルな奮闘記に迫ります。

【前編の記事はこちら】
平野ノラが語る42歳でのリアルな高齢出産|バブリーな体と心の整え方(前編)

お笑いタレント

平野ノラ

「マジ余裕」な20代ギャルと「ゾンビ」な私。高齢出産で直面した体力の壁

「出産はゴールではなく、スタート」。よく聞く言葉ですが、42歳でのそのスタートは想像を遥かに超える過酷なものでした。陣痛の激痛を乗り越えた直後、病棟の廊下でノラさんが目撃したのは、自分とは対照的な「ある光景」。それは、自身の体力への自信を打ち砕き「年齢の壁」という現実をまざまざと見せつけられる瞬間でもありました。
20代の圧倒的な回復力と、42歳の満身創痍。その決定的な違いを痛感し、お風呂に入る気力さえ失ったという、衝撃のエピソードから伺います。

想像を絶する「自然分娩」の激痛。コロナ禍の孤独が"逆に"救いだった理由

実際に42歳で出産を経験されて、20代・30代の頃と比較して「体力的・精神的に違う」と感じたエピソードはありますか?

ノラさん
妊娠中は別にそんな風には思わなかったんですけど、「出産」ですよね。 最初は「自然に産んでみたい」「どんな痛みを伴うか経験したい」って思ったし、こういう仕事をしてるから「一つでも自分で語れるようになりたい」と思って、普通に自然分娩を選びました。
でも、いろいろあって娘が全然降りてこなかったり、促進剤を打ってもバルーンを入れても全然だめで......。本当にもう「なんで帝王切開じゃなくて、もう一個の無痛分娩にしなかったんだ!」「自分で自分がわからなくなるくらいこんなに痛いの!?」って(笑)。

想像を絶する痛みだったんですね。

ノラさん
自分は痛みに強い方だと思ってたんですけど、めちゃくちゃ痛かった。「無痛にすればよかった」って思いますし。 それが高齢だからそんなに痛いのか、個人差があるのかは分からないですけど、あんなに痛いなんて予想をはるかに超えてました。「早く! 早く切ってください!」そんな感じでしたよ、本当に。

壮絶ですね......。でも、事前に「痛いよ」とは聞きませんか?

ノラさん
それがね、母とか世の女性たちは、産んだ後に「めちゃくちゃ痛かったよ」みたいな風にあまり言わないんですよ。友達に「なんであんなに痛いって教えてくれなかったの?」って聞いたら、「いや、今から経験する妊婦には言えないよ」って。 でも、そんなに痛いって誰もちゃんと教えてくれてないぞ!みたいな(笑)。

確かに(笑)。産後の体力面はどうでしたか?

ノラさん
もう、痛い。絶対無痛にすべきでしたね。産んでもすぐお世話が始まるから、その時の体力がゼロになっちゃって、本当に大変だったんですよ。 お風呂に入るのもしんどくて、3日くらい入れませんでした。助産師さんに「今日入りますよ」って言われたら、動くのが痛くて痛くて「風呂かよ......」っていう感じで。

そこまでのダメージが。

ノラさん
精神面でも体力面でもすごいしんどかったから、産んでからの体力を温存するためにも「本当、無痛じゃないと無理だよね」って今でも思ってます。
一番衝撃だったのは、リハビリの時です。「歩きなさい」って言われて、点滴の棒(ガラガラ)を持って、本当にゾンビのように一歩一歩歩いてたんですよ。見た目もヤバい感じで。 そうしたら前から、20代くらいの若いギャルが歩いてきたんです。ちゃんと化粧をして、髪も巻いて。

産後のお母さんですよね?

ノラさん
そう。で、電話しながら「マジ余裕だったわー! すんごい早く退院したいんだけどー」って話しながら、スタスタ歩いてて。 それを見た時に、「これが高齢出産の末路か......」と思いましたね(笑)。
自分と比較した時に、全然違うわけですよ。もちろん個人差はあるし、その方は自然分娩だったかは分かりませんが、若い子を見た時に「あ、超余裕なんだ」って。 これがもし自分が20代だったら回復力も違ったのかなと、ここに「高齢出産」を感じましたね。

それは強烈な対比ですね......。当時はコロナ禍でしたが、孤独感などはありましたか?

ノラさん
帝王切開の傷も痛いし、お世話するのも大変で。母乳もイメージ通りに出るかと思ったら全然出なくて、それがもう激痛なんですよ。 泣きながらやってて、コロナで夫の立ち会いもなく、人も入れられなかったんですけど......私は逆に「コロナでよかったな」と思いました。

えっ、逆に良かったですか?

ノラさん
こんなボロボロの状態で、人がお見舞いに来てほしいなんて思わないじゃないですか。「無理!」と思って。自分のことだけで手一杯で、人が来て話したりとかそんなの無理だから、よかったなと思いました。

なるほど。一人の時間を大切にできた、ということでしょうか?

ノラさん
いや、「一人の時間」というよりは、「誰にも会えるメンタルじゃない」ってことです(笑)。しんどすぎて、痛すぎて。 眠れないし、授乳しなきゃいけない時間も来るし、マッサージしなきゃいけない痛みと......。 だから、一人の時間を楽しむとかそんなレベルじゃなくて、誰にも会える感じじゃなかったですね。産後に「こんなに辛いのは高齢だからなのかな」ってしみじみ感じました。

回復はしていない」がリアルな現実。40代の不調は"チーム家族"と"ポテチ"で乗り切る

産後の回復に1年ぐらいかかったとお聞きしました。回復の過程で具体的に大変だったことはありますか?

ノラさん
実はまだ回復はしてないんですよ。今もどこかしら痛いですし、育児と仕事をしてどんどん動いてるので、ある意味、回復してるという感じがしないです。ギリギリです。
でも、いろいろな意味で時間の使い方が分かるようになったし、娘も保育園にも入れてるので、自分に余裕ができた感じはあります。回復は少しずつしているけど、常に疲れている感じですね。

帝王切開した時の傷の痛みもあるかと思います。どのようにケアしたり、体調をケアしてましたか?

ノラさん
なるべくゆっくりお風呂に入ったりしてました。でも、ちょっと気を抜くと仕事と育児の両立が大変になって心に余裕がなくなるので、スケジュールにも気持ちにも余白がある状態をなるべく目指していました。
あとは、趣味のバレーボールを月に1回やったり、定期的に片付けをしたり。好きな海外ドラマも見ました。本当に大したことじゃないですけど、一人の時間を大事にしていましたね。

――人前に出るお仕事柄、見た目には気を使われると思いますが、寝不足や産後のホルモンバランスの影響(髪の毛が抜けるなど)にはどう対応していましたか?

ノラさん
髪の毛が抜けてた時代もありましたけど、それは1年くらいで回復していて、当時は薄いところを(パウダーなどで)塗ったりとかしてました。 産後は今でも急に動いたりいきんだりすると尿漏れとかもあるし、産後みんなが通るであろうようなことは全部経験してます。
対策としては、整体行ったりしてますし、最近だと「ユミコア」っていうボディケアをしたりとかして。美しさなんてものは、健康の延長じゃないですか。
青汁飲んだりサプリ飲んだりとかっていうのはもちろん常にしてますけど、すっごい長くずっと続けてるみたいなのは、多分ないかもしれないです。

食事制限をしたり、本当に辛い時に実践している「回復術」のようなものはありますか?

ノラさん
回復術......いやー、ないですね(笑)。 食事面は一番何もやってないです。ストレスをためないと思って。今でもポテトチップスを夜中に食べるし、むしろ自由にしています。ただ、まず生きてて、子供産んで仕事してるだけで、私はもうすごいって日々思ってるので、自己肯定感めっちゃ高いかもしれない。
(授乳当時は)母が割と来て食事を作ってくれたりしていたので、そこは助かっていました。やっぱり「チーム家族」ですから。一人じゃ無理なんで、チームの家族でやってましたよ。

「やれることはやり切る」平野ノラが語る、後悔しないための決断と自己肯定感

「5年後の45歳になった時、後悔したくない」。未来を見据えて挑戦を決めたノラさん。育児と仕事の両立に悩む日々を支えるのは、圧倒的な「自己肯定感」と、自分自身を許し認めるポジティブなマインドでした。

「年齢は関係ない!大切なのは『やりたい』という気持ち!」

これからママになる方、あるいは40代で出産しようか迷っていたり、高齢出産に不安を抱えている読者へメッセージをお願いします。

ノラさん
仕事一辺倒だった最中にコロナになり、その時の自分とこれからの人生についてしっかり向き合いました。もし5年後、45歳になった時に「子供を持ちたいな」って思っても、その年齢だとちょっと自信がないかもなって思ったんですよ。 でも、今チャレンジしなかったら、きっと後悔するのが45歳な気がしたので、ちょっとチャレンジしてみようって。
やっぱり自分の人生、絶対後悔したくないなっていう思いがすごくあるんです。31歳で芸人始めたのもそうなんですけど。 子供って授かりものだから自分の思いじゃどうにもならないじゃないですか。高齢とか関係なく、できる人もいればできない人もいる。
だから、自分がどうしたいのかっていう気持ちとしっかり向き合って、やっぱり子供が欲しいなと思っている方は、大変だろうが何だろうと、やれることをまず後悔せずにやる。やりきった先にできなかったら納得するだろうし。本当に後悔してほしくないなって思います。 「あの時頑張ったけどできなかった」って言ってその後生きるのと、「ちょっと思ったけど頑張れなかったな」って思うのとでは違いますし、その後の人生も長いですから。

どうしても年齢的な不安を感じてしまう人も多いと思います。

ノラさん
不安を持っている人は、起きてないことになるべく不安を感じないようにって思います。もう本当にね、これ癖だから、不安になるの(笑)。自分のマインドの癖なんで。 高齢だろうが何だろうが、出産ってやっぱりみんな怖いものじゃないですか。別に10代の子でも不安だし、関係ないですよね。
だからなるべく不安に思わず、「こうなりたい、じゃあ今何ができるだろうか」って考えているほうがより前向きだし、いい人生になる気がしているので。後悔せずに自分のために、自分の声をしっかり聞いて行動してほしいなと思います。

ママとして、一人の女性として輝き続ける秘訣

平野ノラとしてパワフルに輝き続けるために、一番大切にしていることはありますか?

ノラさん
私は仕事の疲れを育児で癒されて、育児の疲れを仕事で発散しているんですよ。仕事してるからこそ元気になるし、より娘のために頑張ろうと思う。仕事の疲れを持って帰った時に娘に癒されるし、逆に育児の疲れも仕事で......っていう、いい循環ができているなと。
そういう風に、自分の中でのバランスを保っています。

両方あることで、良い相互作用が生まれているんですね。

ノラさん
そうですね。専業主婦の方でも、子育てとの距離感とか、自分一人の時間とかも絶対必要じゃないですか。一つを頑張る方もいらっしゃると思うんですけど、私は常に自分のバランスを考えています。人それぞれ、「自分のバランスを見つける」って、とても大事じゃないかと思いますね。

「仕事と育児のバランス」のお話がありましたが、そうは言っても、仕事中に「今日熱出てたけど大丈夫かな?」と気になったり、逆に家にいる時に「明日のロケ大丈夫かな?」と仕事モードを引きずったりすることもあると思います。そのあたりの気持ちの切り替えはどうされていますか?

ノラさん
だからやっぱり、そこも自己肯定感ですよね。 いろんなことが大変だったり、今日までにやらなきゃいけないことができなかったりしても、「でも私、産んで育てて、娘は健康に育ってる。なんて幸せなの、なんて偉いんだ!」って。だから大丈夫だって思うようにしてます(笑)。

なるほど、そこに行き着くんですね。

ノラさん
そこなんですよ。そこを自分が許してあげなければ、どんなにヤバいなと思ってもやっていけないというか。「あんた頑張ってんじゃん!」って、自分で自分を励ます。自分を認めてあげるってことだと思うんです。
働きながら産んで育てて仕事をしていくって、本当に奇跡みたいなすごいことじゃないですか。それを「すごいことをしているんだよ」って自分で常に思っているので、ちょっとくらいできなかったとしても、「大丈夫、大丈夫、すごいすごい」って思うようにしています。

ご自身でそう思えるからこそ、乗り越えられていると。

ノラさん
そうですね。あとは、娘の言葉に救われることもあります。 以前、私が保育園に持っていかなきゃいけないものを忘れちゃって、「あー、ダメだなぁママ......」ってつぶやいたことがあったんです。そうしたら娘が、「ダメじゃないよママ、ダメじゃないよ。それでも『まあいっか』!」って言ってくれたんですよ。
完璧にはできないんだけど、それを自分自身で「ダメだ」と思わずに、「あ、頑張ってやってるよ」って思わなきゃダメだし、娘もそういう私の姿をすごく見てるわけですよ。 私が娘に対して「頑張ってるね」「まあいっか」って言っているのを真似して、私に返してくれたんだと思うんですけど、その言葉にはすごく教えられたし、救われましたね。

普段のママの言葉が、娘さんにもしっかり届いている証拠ですね。

ノラさん
そうなんです。私、本当におっちょこちょいだから「ごめんね」って言うと、「おっちょこちょいじゃないよ」って励ましてくれたり。 逆に娘の方がしっかりしてる部分もあるから、私が忘れてた時に「自分だらー(だらしない)」とか言ったりもするんですけど、それも「自分も言うんだ!」みたいな(笑)。
今4歳なんですけど、ママが頑張ってることも見てるし、できなかったなーって自分を責めたりするところも見てる。だから「そんなことないよ、頑張ってるよ」って言ってくれるんです。 だからこそ、「本当に頑張ってるんだ」って自分で自分を認めてあげるのは、すごく大事なことだと思います。

最後になりますが、現在育児や仕事に追われて疲れてしまっているお母さんたちへ、平野さんらしい前向きなメッセージをいただけますか?

ノラさん
育児って、日々同じことの繰り返しだし、本当にしんどくて「いつまで続くんだろう」と思う時もありますよね。自分も想像していたのと全然違うなって思ったり。 だけど、「いつかは終わる」わけですよ。
娘ももう4歳なので、あと5、6年もしたら、親よりも小学校の友達と遊ぶことの方が楽しくなったりして、あっという間に手がかからなくなる。子育てって、自分が思ってるよりきっと早く終わるんですよね。
だから私はその時に、自分がちゃんと「子離れ」できるように、今はめちゃくちゃ愛情を注いで「愛で切る(めで切る)」って決めてます。もう、これでもかっていうくらい愛でて、やり切ろうと。

「愛で切る」、素敵な言葉ですね。いつか来る終わりのために、今を全力でやると。

ノラさん
そうですね。いつか子育ては終わるし、その時にやっぱり後悔したくないですから。 周りの先輩ママたちが結構おっしゃるんですよ。「もっと子供に寄せればよかった」「仕事ばっかりじゃなくて、もっと一緒にいてあげればよかった」って。
そういう後悔の声を聞くと、やり直しが効かない正解のないのが子育ての難しいところなんだと。だったらなるべく娘のそばにいて一緒に楽しみたいなって。

ついつい「ちゃんとしなきゃ」と焦ってしまうママも多いと思います。

ノラさん
完璧じゃなくていいんですよ。だってお母さんになるのは初めてだし、私も親になるのが初めてだから、しょうがない(笑)。うまくいかない時もあるし。だから完璧を求めず、過去でもない、未来でもない、「今」を大事にしてほしいです。今のお子さんと自分の成長を、一緒に噛みしめてほしいなと思います。

「完璧」じゃなくていい。自分を褒めて、今を「愛で切る」

「マジ余裕」な若きママと、「ゾンビ」のように歩く自分との対比。そして、産後1年以上経っても回復していないというリアルな肉体事情。 平野ノラさんが語ってくれた高齢出産の現実は、決してキラキラした部分だけではありませんでした。
しかし、そんな満身創痍の日々を乗り越える鍵は、完璧を求めないことと、圧倒的な自己肯定感にありました。「生きて、産んで、働いているだけで私はすごい!」 そうやって自分で自分を励まし、時にはポテトチップスで息抜きをし、家族という「チーム」に頼る。そして娘さんの「まあいっか」という言葉に救われながら、今の愛おしい時間を全力で「愛で切る」。
40代からの育児は体力勝負ですが、経験を重ねた大人だからこそ持てる「マインドの強さ」があります。 今、育児や仕事に追われているあなたも、まずは「私、頑張ってるじゃん!」と自分を褒めてあげてください。バブリーな笑顔で走り続ける平野ノラさんの姿は、すべての頑張るママたちへの最強のエールです。


SUPERVISERこの記事を監修した人

profile
平野ノラ

平野ノラ

お笑いタレント

1978年生まれ、東京出身。ワタナベエンターテインメント所属。31歳で本格的に芸人の道に進み、肩パッドにバブルメイクで昭和の空気を再現した"バブリーネタ"で大ブレイク。近年はテレビ出演はじめ、バレーボール教室、片付け本の執筆など多彩に活動し、42歳で第一子を出産。家庭と仕事の両立を自然体で楽しむ等身大の姿が、多くの共感を集めている。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
輝く人
この記事をシェアする

この記事は、働く女性の医療メディア
ILACY(アイラシイ)の提供です。

“おすすめ記事recommended

CATEGORYカテゴリー