ヒステリー球(咽喉頭異常感症)ってどんな症状?謎めいた喉づまりの原因と治療法

ポリープなどの明確な要因がないにもかかわらず、喉に違和感があるという「ヒステリー球(咽喉頭異常感症)」。近年よく耳にするようになった病気ですが、患者の多くはILACY(アイラシイ)世代でもある、30代後半~50代の女性といいます。となると、更年期との関連性も見逃せません。

そこで今回は、ヒステリー球の症状の特徴から発症の原因、治療法や予防法までを、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に教えていただきました。

ストレスがヒステリー球を引き起こす

――ヒステリー球(咽喉頭異常感症)という病気は、あまり耳なじみがないのですが、どういった病気なのでしょうか?

ヒステリー球という名称からもわかるとおり、球のような物が喉に引っ掛かった感覚があることをいいます。おもな症状は、喉が圧迫される、飲み込みづらい、息が詰まるといったものなのですが、この病気の特徴は、そういった症状を引き起こす要因がないということなんですね。

――体にも喉にも異常がないのに、症状だけを感じるということですか?

そうです。喉にポリープができていたり、胃酸の逆流がある場合は喉に違和感があったりしますが、ヒステリー球にはそういった具体的な要因はないんです。ただ、放っておくと症状がひどくなる可能性もあるので、やはり治療は必要になりますね。

――原因にはどういったことが考えられるのでしょうか?

一番はストレスです。緊張や不安が強いときに症状が出るというケースが多いですね。それがどんなときかは本当に人それぞれで、例えば、仕事でプレッシャーを感じていたり、職場の人間関係に悩んでいたりする方は仕事中に症状が出て、退社後や週末など、一度仕事を離れたら出なかったりするようです。

また、身近な人が喉や食道のがんになったと聞いて、自分の喉を気にし始めたのがきっかけで症状が出るようになった方もいます。

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――ヒステリー球になりやすい性別や年代はありますか?

比較的、女性に多いといわれています。中でも、お仕事や子育てで忙しくされている30代後半から40代、50代の方が多いですね。

――その世代の女性は更年期に差し掛かる時期でもありますが、ホルモンバランスの変化とヒステリー球の症状に関連性はあるのでしょうか?

あると思います。やはりホルモンバランスが乱れることでイライラしやすくなったりしますから、ちょっとした症状も気になってしまったり。直接的な要因ではないかもしれませんが、関与はしていると思います。

喉に違和感が...。どの診療科を受診すべき?治療法は?

――では、症状を感じた場合、どの診療科に行けばいいのでしょうか?

まずは、耳鼻咽喉科がいいと思います。ポリープや炎症といった、喉の違和感を引き起こす原因がないかを診なければいけないので。そこで異常がないとなったら、次はおそらく胃カメラをすすめられることが多くなるため、消化器内科を受診する...という方が多いと思います。

そこでも、胃酸の逆流などの異常がないとなった時点で、ようやくヒステリー球である可能性にたどり着きます。ただ、場合によっては、喉の炎症止めや胃酸を抑えるお薬を出されて終わってしまうこともあります。

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――ヒステリー球と診断されないことも多いと。

そうですね。というのも、ヒステリー球は最近になってその概念が確立されてきた、比較的新しい病気なんです。なので、病院の診察で異常がなかった場合、「気のせいですね」「精神的な問題ですね」といわれて終わってしまうことも多いんです。

特に、内科の医師はどうしても目視できた異常を治すことを目的としていますので、「異常がないからヒステリー球」という診断になかなかたどり着けないケースも少なくありません。そのため、患者さん自身が、こういう病気があるということを知っておくと、診断の手助けになると思います。

ポリープや胃酸の逆流だと喉の違和感はずっと続きますが、そうではなくて、特定のシチュエーションのときだけ感じる喉の違和感は、ヒステリー球である可能性が高いですね。

――では、ヒステリー球と診断された場合、どんな治療が行われるのでしょうか?

ヒステリー球に効くといわれる漢方薬があるので、まずはそこから試してみるのもいいかと思います。症状がひどいと抗不安薬などを処方されることもありますが、副作用もありますので、医師と相談しながらの服用をおすすめします。

――症状が改善されるまでに、どれくらいの期間を見ておけばいいのでしょうか?

個人差はありますが、2、3ヵ月~半年といったところでしょうか。ヒステリー球はストレスが原因であることが多いので、すぐに改善されなかったとしても焦らず、気長に様子を見るといった感覚でいていただくのがいいと思います。

自分なりのリラックス法を見つけることが症状改善の近道

――治療を始めても、日常生活の中で喉の違和感が続くことがあるかと思います。そんなとき、すぐにできる対処法はありますか?

これは、あまり医学的なエビデンスはないのですが、炭酸など冷たい飲み物を飲むとすっきりするという患者さんもいらっしゃいますね。また、ハーブティーなど、リラックス効果がある物を飲むのもおすすめです。

ヒステリー球の場合は緊張をほぐしてあげることが大切なので、症状が軽くなる飲み物や、ゆっくり半身浴をする、好きな音楽を聴くなど、自分なりのリラックス方法を見つけることが大切だと思います。

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――予防法としては、やはりストレスを溜め込まないことが重要になりますよね。

そうですね。ただ、どうしても避けられないストレスというのもあると思いますので、そういう意味では予防をするのは難しい病気です。なので、少しでもおかしいと思ったら、早めに医療機関に行っていただくことをおすすめします。

普段の生活では、基本的なことではありますが、規則正しい生活やバランスのいい食生活、適度な運動、体を温めるといったことを心掛けましょう。と同時に、こういう病気の存在を知っていることも重要です。

それだけで気が滅入らないというか...。やっぱり、喉に違和感があったときに、「もしかしたら何か喉にできているのかもしれない、でも病院に行く時間がない」となると、どんどん気になって、ナーバスになってしまいますから。

実は、喉の違和感に悩む方は日本だけでなく、海外にも多くいて、決して珍しい病気ではありません。ですから、あまり思い詰めず、「よくあること」というくらいの意識でいるのが一番いいと思いますね。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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この記事は、働く女性の医療メディア
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