胆石症になりやすい人を表す、4つの「F」とは?

日本人の10人に1人が持っているといわれる「胆石」。みぞおちや右上腹部の激痛から胆石症が判明する場合もありますが、胃もたれや便通の不調など、ちょっとした症状の裏に胆石が隠れていることもあるといいます。

そこで、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師・古川真依子先生に、胆石症になりやすい人の特徴を表す4つの「F」(40代以降の中高年、肥満の人、女性、多産婦)や、潜伏する胆石を早期発見する方法について伺いました。

胆石のおもな成分はコレステロール

――胆石症とはどういった病気なのでしょうか。

胆石症とは、胆のうに石ができてしまう病気です。胆のうは、肝臓と十二指腸を結ぶ胆管という管の途中にある臓器。肝臓で作られた「胆汁」という消化液を一時的に溜めておき、物を食べたときに収縮して放出する働きを担っています。

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この胆汁にはコレステロールが含まれており、それが固まって石のような状態になったものを胆石といいます。

――胆石があるという時点で、すぐに治療が必要なのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。実は、胆石を持っている人は珍しくないんですよ。胆石が胆のうの中に留まっている状態であれば、特に症状もないですし、問題ありません。

ただ、胆石がある人は胆のうに炎症が起きやすく、腹部に痛みを感じて診察を受けた結果、実は胆石がたくさんあったという場合もあります。また、何かの拍子で胆石が胆管に落ちてきてしまった場合は、激痛を伴うほか、黄疸が出るなど命に関わることもあります。治療が必要となるのは、そういった何かしらの症状が出たときですね。

――症状の特徴はどういったことですか?

典型的な症状は、食後、特に脂っこい物を食べた後に、みぞおちや右上腹部に激しい痛みが生じるというもの。キリキリ痛むというよりは、ドーンとか、ズーンといったイメージの痛みになります。

このほか、発熱や便秘、吐き気、背中の痛みなど、一見、胆石とは関係ないと思える症状が現れる場合もあるので、少しでもいつもと違うと思うことがあったら、早めに診察を受けていただきたいです。

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胆石症になりやすい4つの「F」

――胆石症になりやすい人の特徴は4つの「F」で示されるそうですが、これはどういったことなのでしょうか?

4つの「F」とは、「40代以降(Forty)」「肥満(Fatty)」「女性(Female)」「多産婦(Fecund)」を示します。その理由は、それぞれこのようになっています。

・40代以降(Forty)
年齢的にさまざまな不調が出てきやすくなる年代。胆石症も、年齢が若いからならないという病気ではありませんが、比較的40代以降の方に多いという傾向があります。

・肥満(Fatty)
肥満になると血中のコレステロール値が上がるので、胆石ができやすくなります。

・女性(Female)
女性は40代以降になると女性ホルモンが減少してきます。それにより、血中のコレステロール値が上がりやすくなり、胆石のリスクになることがあります。

・多産婦(Fecund)
妊娠中は脂質の値が高くなるほか、生理も止まるので、血中のコレステロール値も上がりやすくなります。多くはいませんが、5人以上分娩しているような多産婦の方はその状態にある期間が長いので、胆石ができやすいと考えられます。

――血液中のコレステロール値がかなり影響するんですね。

コレステロールは胆石の主成分となる物が多いですから、とても影響しますね。

――胆石があるかないかを調べるには、どうすればいいですか?

胆石の有無は腹部超音波検査でわかります。簡単な検査ですので、40歳になったら定期的に受けてほしいですね。それで、もし胆石があるとわかった場合でも、不安になる必要はありません。最初に申し上げたとおり、胆石が胆のうの中に留まっていれば問題のないことが多いので、まずは胆石がそれ以上大きくならないように、脂っこい食べ物を控えたり、太らないように気を付けたりしてもらえたらと思います。

――一度できた胆石は、小さくなったり、消滅したりすることはないのでしょうか。

小さくなることも、消えることもないですね。また、手術で胆のうの中にある胆石だけを取り除くということもできません。なので、一番の対策は、それ以上数を増やさない、大きくならないようにすること

胆のうという臓器はそれほど大きくないですから、石が増えたり大きくなると、胆のう自体が機能しなくなってしまいます。そうなると、胆のうがんのリスクになってくるので、そのときは予防的に胆のうを摘出する場合もあります。

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胆石症は食事の欧米化によって増加した病気のひとつ

――胆石がある人は珍しくないとのことですが、胆のう炎の症状が出てしまった場合はどのような治療が行われるのですか?

急性胆のう炎の場合、内科のアプローチとしては、入院していただき、絶食と点滴、抗生剤で、完治までに1週間くらいかかるというのが目安です。

なぜ絶食が必要かというと、食べ物が入ってこなければ、胆のうが働かなくて済むため。胆のうを休ませてあげるというイメージですね。

また、胆のうや胆管は多くの細菌が棲む消化管につながっているので、常に細菌に感染するリスクを持っています。胆のう炎の原因は、それらの細菌によるものですので、食事をとらない、感染の悪化を防ぐという意味合いもあります。

――胆石症の予防、胆石を大きくしないための方法はありますか?

日本人の食事が欧米化したことによって、さまざまな病気が増えてきたといわれますが、胆石症もそのひとつでしょう。そういう意味では、お肉や揚げ物中心の食事より、和食のほうがいいと思いますね。

あとは、便秘をしないように。食物繊維をとって、しっかり出す。便秘がひどくなると肥満の原因となり、その結果、悪玉コレステロールの値が上がり、胆のう炎や胆石の原因になることもあります。同様に、アルコールやカフェインといった刺激物のとりすぎも胃腸のバランスを崩すきっかけになりますから、適量を心掛けるようにしてもらうといいと思います。



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SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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