女性にも多い脂肪肝。お酒を飲まなくても、太っていなくても要注意!

よくお酒を飲む人や、太りぎみの人に多いイメージのある「脂肪肝」。ところが、やせている人やアルコールを一切摂取しない人でも、体質や生活習慣によって脂肪肝になることがあります。
内臓脂肪が溜まるのを抑えてくれていた女性ホルモンが減少しはじめ、代謝が落ちる更年期の女性も要注意。脂肪肝を放っておくと肝炎や肝硬変になり、さらに進行すると肝臓がんになる可能性があります。

今回は、脂肪肝のメカニズムと危険性や予防法について、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師・古川真依子先生に教えていただきました。

お酒を飲まない人でもなりうる脂肪肝

――脂肪肝とは、どういう状態を指すのでしょうか?

脂肪肝は、その名のとおり肝臓に中性脂肪が溜まり、一定量の肝細胞が脂肪に入れ替わってしまう状態。脂肪肝の人の肝臓を超音波で見ると、脂肪がキラキラした白い風船のように映ります。

具体的には、肝細胞の約30%以上が脂肪細胞に置き換わると脂肪肝と診断されます

――以前は、それほど問題視されていなかったように思うのですが...。

そうですね。肝臓が悪くなる理由といえば、かつてはウイルスに感染して肝臓に炎症が起きるウイルス性肝炎や、過度のアルコール摂取というイメージでした。当時は、脂肪肝は単に脂肪のつきすぎという印象で、先々のリスクはそれほど注目されていなかったかもしれません。

ところが、近年になって少しずつ、脂肪肝から肝炎や肝硬変、肝臓がんになることがわかってきました。さらに、アルコール以外の原因によって引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患にも同様のリスクがあることが判明し、一気に注目されるようになったんです。

アルコール性の脂肪肝と非アルコール性の脂肪肝では前者が圧倒的に多いですが、後者も決して少なくありません。

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――非アルコール性の脂肪肝には、どのような要因があるのでしょう。

最も多いのは、食べすぎによる肥満です。基礎代謝量以上にエネルギーを摂取する状態が続けば、血中の中性脂肪やコレステロールが少しずつ増えて、肝臓に蓄積されていきます。

ただし、「遺伝的にコレステロール値が高い人」「体質的に太りやすい人」「食べても太りにくいやせ型でもコレステロール値の高い食事を好む人」は、食事の量や内容に気をつけていても脂肪肝になる可能性があります

特にやせている人は、「脂肪肝は自分とは無関係」と思ってしまいがちですから、気をつけていただきたいと思います。

また、更年期になると、脂質の代謝を担っていた女性ホルモンが減るため、これまでと同じ生活をしていても脂肪がつきやすくなります

――脂肪肝と診断されてから、できることはありますか?

脂肪肝には、特効薬がないのが現実です。脂肪肝と診断されたら、これ以上の悪化を防ぎ、少しでも改善につなげるという意識で生活習慣を見直すことから始めましょう。

肥満ぎみの人は、やせれば肝機能の数値の改善が期待できますから、まずは体重を落とすことです。脂肪肝と診断された後に食事制限や運動などで体重を落とし、翌年の健康診断では脂肪肝の診断を免れたという人もいます。

健診で脂肪肝と診断された人を見ていると、やはり体重との関係が大きいと感じますから、日頃から正しい生活習慣で体重をコントロールすることが大切ですね。

適量の食事と適度な運動で太りにくい体づくりを

――脂肪肝のリスクに自分で気づく方法があれば教えてください。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるくらい、自覚症状に乏しい臓器です。脂肪肝になっていても、自分で異変に気づくことはほぼできません。症状が出たときは、脂肪肝の状態を超えて、何らかの病気が進行していると思ったほうがいいでしょう。

最大の予防法は、自覚症状が何もない段階から定期的に検診を受けることです。超音波で見れば脂肪肝かどうかは一目瞭然ですが、できればそうなる前に、採血の結果などを参考に肝臓の働きをチェックしておくと安心ですね。

日常生活でできる工夫のうち、最も簡単で重要なのは、「今日は自分が代謝できる範囲を超えて食べた」という感覚をつかむことです。

明らかに食べすぎたときは満腹感ですぐにわかると思いますし、翌朝むくんでいたり胃もたれしていたりといった症状で気づくこともあるでしょう。食べすぎは重大なリスク要因ですから、こうした感覚は節制の合図だと思って、次の食事で調整する習慣をつけてください。

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――具体的には、どのような食事が望ましいのでしょうか?

良質なたんぱく質をしっかりとって、脂肪分や糖質は控えめに。とはいっても、体内で不足するほど一部の栄養素の摂取量を減らしてしまうと、栄養のバランスが崩れて体に悪影響を及ぼしかねません。

朝食と昼食はしっかり食べて夕食の量を減らす、間食を控えるなど、適度な節制を心掛けましょう。

また、「食べたいのに食べられない」「食べたのにおなかがすいて仕方がない」と感じると、ストレスでドカ食いしてしまう可能性が高いので、食物繊維を多く含む食品をメニューに盛り込んで満腹感を得ることも大切です。毎日体重計に乗るというのも効果的な場合もありますが、人によってはストレスになりますから、無理はしないようにしましょう。

――脂肪肝の予防のために、ほかにできることはありますか?

コレステロール値が高くなる家族性高コレステロール血症など、遺伝性のリスク要因は早めにつかんでおきたいですね。

両親や兄弟姉妹をはじめ、叔父・叔母、祖父母など、血のつながった人の中にコレステロール値が高い人や、心筋梗塞や狭心症といった心臓病を発症した人がいないかどうか、確認しておきましょう。もしいることがわかったら、すぐに検査を受けて、適切な治療をするようにしてください。

日常生活では、マラソンやウォーキング、サイクリング、水泳など、糖質や脂肪を燃焼する効果がある有酸素運動を取り入れるのがおすすめです。ヨガやピラティスといった体幹を鍛える運動もいいですね。

体幹がしっかりすると、基礎代謝が向上するだけでなく姿勢も良くなるので、脂肪がつきにくい体を作ることができます。

年齢とともに、食事をちょっと我慢した程度ではなかなか体重が落ちなくなってきますから、有効な運動と上手に組み合わせて、体型と体重をコントロールしていきましょう。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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