更年期世代のぽっこりおなか―解消のカギはたんぱく質にあり

更年期世代の悩みのひとつである「ぽっこりおなか」。「ダイエットで何とかしよう!」と考える人がほとんどだと思いますが、内臓周りの筋肉の衰えが原因の場合は、食事制限で体重を落とすようなダイエットでは解消につながらず、反対に健康や美容に悪影響を及ぼすことも...。そこで効果的なのは、有酸素運動と合わせて「たんぱく質を摂取すること」です。

今回は、ぽっこりおなかの解消に役立つたんぱく質の働きや正しい摂取の仕方について、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に2回にわたって教えていただきます。

こちらの前編では、筋肉の低下がぽっこりおなかを誘発するメカニズムや、たんぱく質が不足することによる影響を中心にお伺いします。

ぽっこりおなかの原因は筋力の低下!まずは有酸素運動をしよう

――更年期のぽっこりおなかに悩む人は多いですが、筋肉の衰えが原因のひとつであることはあまり知られていませんね。

更年期になって急に下っ腹にお肉がついて、ぽっこりと目立つようになったと感じる場合、筋肉量の低下が影響している可能性は大きいと思います。

筋肉の量は年齢とともに減り、筋力も低下します。もちろん、おなかの周りの筋肉も例外ではありません。便秘や、大腸内視鏡検査でさわれるほどの大きさがある子宮筋腫など、ほかに明らかな原因がないようなら、筋肉の衰えを疑って対策をするといいでしょう。

――なぜ、筋肉が衰えるとおなかが出るのでしょう。

理由は2つあります。


内臓が下がるから

ひとつは、物理的に内臓が下がるから。筋力が衰えると、若い頃のように内臓をしっかり支えることができなくなり、自重で下がった内臓によっておなかがぽっこりと前に出てしまいます。


良い姿勢を維持できなくなるから

もうひとつは、体幹の筋肉を使って良い姿勢を維持できなくなるからです。

猫背や反り腰など骨盤をゆがめる姿勢は、おなかが前に突き出して見える原因となります。特に、習慣化した猫背は、常におなかに圧力がかかり続けるため、便秘になって老廃物を溜め込みやすくなったり、お肉がだぶついて見えたりします。

――代謝が落ちていくことも、太りやすくなる要因になりますか?

そうですね。基礎代謝量(何もしていなくても消費されていくエネルギー量)は年齢とともに低下しますが、筋肉量が減るにつれて、さらに低下していきます。年齢とともに太りやすくなったと感じるのはこれが原因。

更年期は血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の量をコントロールしたり、内臓脂肪の代謝を促したりしてくれていた女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少し、皮下脂肪がつきやすくなる時期でもあるので、筋肉量を維持して代謝を上げることがとても大切です。

――食事量を減らすだけのダイエットでは意味がなさそうですね...。

そのとおりです。筋力は、放っておくとどんどん衰えていくので、意識して鍛える必要があります

おなかを引き締める運動というと、ほとんどの人が腹筋運動を思い浮かべると思いますが、内臓を支えているのは腹筋だけではありませんから、背筋やインナーマッスルも忘れずにトレーニングしましょう。おなか周り全体を動かして、引き締めていくことが大切です。

――どのように鍛えたらいいのでしょうか?

おすすめは、全身を使う有酸素運動です。

ランニングや水泳、エアロビクスなどが代表的ですが、そこまで激しくなくても構いません。一定の時間、筋肉にある程度の負荷をかけることができれば、ウォーキングでも十分です。

体幹を鍛えるには、ヨガやピラティスがいいですね。バランスボールに乗るだけでも、体幹には効果的ですよ。

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運動以外に、食事でたんぱく質を摂取することも必須

――筋肉を維持するために、運動以外に心掛けることはありますか?

たんぱく質をきちんと摂取してください。たんぱく質は、筋肉の素になる必要な栄養素。たんぱく質は20種類のアミノ酸からできていて、20種類のうちひとつでも欠けると、たんぱく質は合成できないといわれています。

中でも体内で作ることができない9種類を「必須アミノ酸」といい、それらはたんぱく質として食事からとらなければなりません

そのため、「おなかが気になるからダイエットしよう!」と野菜ばかり食べたり、食事の回数を減らしたりといった偏った食生活をすると、必要なたんぱく質をとりきれずに体重といっしょに筋肉も落ち、代謝も落ちてしまいます。

ぽっこりおなかを解消できないばかりか、女性の美容と健康に悪影響を及ぼす可能性もあるので、注意していただきたいですね。

――人間がたんぱく質に支えられていることは多くあるんですね。

たんぱく質は、人間の体を構成する筋肉や骨、臓器、皮膚、爪、さらには体を守る免疫機能や、ホルモン、酵素などを作る材料になっています。

たんぱく質が不足にすることによって起こる身近な影響としては、「筋肉量の低下」と「美容面のトラブル」が大きいですね。


筋肉量の低下

無理なダイエットやストレスなどで十分な食事をとることができていないと、体は生きていくのに必要なエネルギーを確保することができません。すると、筋肉を分解してエネルギーを作り始めます。

トレーニングをしても消費したエネルギーを筋肉で補う悪循環に陥り、筋肉量を増やすどころか維持することもできません。


美容面のトラブル

肌のハリやツヤ、弾力をキープするコラーゲンのほか、髪や爪のほとんどを構成するケラチンも、たんぱく質を主成分とする物質です。

「肌のくすみやたるみが気になる」「髪の毛が細くなった」「切れ毛や抜け毛が気になる」「爪がすぐに欠けたり割れたりする」といったトラブルは、たんぱく質不足のサインかもしれません。

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たんぱく質は更年期世代が必ずとるべき栄養素

――たんぱく質は、そもそも人間にとって必要不可欠な栄養素ですが、筋肉量の低下が顕著になる更年期以降の女性にとっては、より重要なものなんですね。

そのとおりです。たんぱく質は、無理なカロリー制限や偏った食生活を続けていると確実に減り、健康や美容のために始めたダイエットによって、心身のバランスを崩すことにもなりかねません。

毎日の食事をおろそかにせず、体に必要なたんぱく質をきちんと摂取するようにしましょう。

――1日に、どれくらいのたんぱく質をとればいいのでしょうか?

1日に必要なたんぱく質は、摂取エネルギーの13~20%といわれています。成人女性なら1日で50gくらいが平均値でしょう。食事だけではどうしても不足してしまう場合、プロテインなどで適宜補うのも効果的ですよ。

次回は、たんぱく質の効率的なとり方について教えていただきます。


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SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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