グルテンが腸内環境を悪化させる?その理由について解説

有名スポーツ選手が実践し、パフォーマンスが劇的に向上したことで一躍知られるようになった「グルテンフリー」。これは、小麦に含まれるたんぱく質「グルテン」をとらない食事法です。
グルテンは、食べ物をおいしくする一方、腸に負担をかけ、心身の不調を引き起こす可能性がある成分。体質によっては、グルテンを断つことで体調が改善したり、思考がクリアになったりすることがあるといいます。

そこで今回は、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に、グルテンが腸内環境に影響を与えるメカニズムと心身に与える影響のほか、グルテンフリーにすることで得られる効果などを伺いました。

グルテンに反応しやすい人は要注意

――まずは、グルテンとはいったい何なのか、その特徴から教えてください。

グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦などの穀物に含まれる、消化されにくいたんぱく質のことです。「グルテニン」と「グリアジン」という2つの成分が、水と合わさって絡み合うことでグルテンに変化します。

小麦粉に水を加えて練ったパスタやうどん、パンなどは、もちもちして歯応えがありますよね。これは、弾力があって伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いものの粘り気が強いグリアジン、両方の特徴がグルテンに備わっているからです。

――最近は、グルテンフリーをうたった商品をよく見かけるようになりました。とかく悪者にされがちな印象のグルテンですが、本当に悪いところばかりなのでしょうか?

グルテンには多くの栄養素が含まれていますし、もっちりふわふわとした食感はおいしさに直結します。グルテンをとっても問題ない人にとっては、食べ物の味わいを増してくれる成分といえるでしょう。

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――グルテンをとりすぎると、どのような症状が現れますか。

人によってさまざまですが、代表的なものには

・腹痛や下痢などの消化器症状・栄養不良
・思考力の衰え
・慢性的な疲労感
・異常な眠気
・記憶力の低下
・集中力の低下
・気分の落ち込み

などがあります。

肌荒れや生活習慣病なども、グルテンが原因の便秘や肥満が遠因となっている可能性があります。

――どうして、グルテンをとると不調が起きるのでしょう。

胃を通った食べ物は、次に小腸で消化されます。このとき、体に必要な栄養素は小腸の粘膜から体の中へ入り、不要な毒素や老廃物は外へ排出されるのですが、グルテンは粘り気と弾力のせいで分解されにくく、粘膜に張り付きます。

すると、粘膜がダメージを受けてすき間を作り、そこから悪いものまで体内に取り込むようになって、腸の働きを低下させてしまうのです。

腸は、消化や吸収を担うだけでなく、感情に関わる神経細胞があって免疫にも影響する場所。腸の働きが悪くなると、体と心にさまざまな不調が出るのはそのためです。

■正常な腸粘膜と、グルテンによってダメージを受けた腸粘膜

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元々アレルギー体質の人は要注意

――どんな人がグルテンの影響を受けやすいのでしょうか。

個人差はありますが、アレルギー体質の人はグルテンに反応しやすい傾向があります。

花粉症や慢性鼻炎、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群など、一見するとグルテンとは無関係に見えるアレルギーや疾患をお持ちの方も、注意したほうがいいですね。

また、「セリアック病」「グルテン過敏症(不耐性)」「グルテンアレルギー」の3つは、グルテンと直接的な関係がある疾患です。


セリアック病

セリアック病は、グルテンを摂取すると過剰な免疫反応が起き、自分自身の腸内を攻撃して炎症を起こす自己免疫の遺伝性疾患。小腸の粘膜が慢性的な炎症を起こすことで腸の機能が低下し、栄養吸収が阻害され、さまざまな全身症状が起こる。


グルテン過敏症(不耐性)

グルテン過敏症(不耐性)は、グルテンを含む食べ物をとると、消化器症状をはじめとする心身の不調を生じる疾患。まだ解明されていないことも多いが、セリアック病と症状が似ているものの小腸の損傷などは見られず、セリアック病でないと診断されて初めて疑われることが多い。


グルテンアレルギー

グルテンアレルギーは、グルテンをとることでかゆみや喘息などのアレルギー症状が出る疾患。

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――自分がグルテンに反応するかどうか、調べる方法はありますか?

アレルギーの有無は、一般的なアレルギー検査で「小麦」の反応の有無を調べればわかります。ここで挙げたそのほかの疾患について確定診断をするには、血液検査をするか、それでもわからない場合は小腸の組織を採取して検査しなくてはなりません。

最も手っ取り早いのは、グルテンと関連がありそうな不調を感じている場合に、一定期間グルテンフリーに挑戦して体の変化を確認してみることです。

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不調を実感している人は、グルテンフリーに挑戦してみよう

――本来はグルテンを断つ必要がない人でも、グルテンフリーに挑戦して問題はありませんか。

グルテンには健康にいい成分も含まれているので無理に断つ必要はありませんが、一定期間グルテンを断って様子を見たからといって、特に大きな弊害はありません

グルテンを含む物を食べた後に、「なんとなく消化機能が落ちている」「疲れがとれにくい」「肌荒れやニキビがひどい」といった何らかの不調を感じている人は、アレルギー体質でグルテンに反応している可能性が高いと考えて、グルテンフリーを試してみるといいですね。

――グルテンはかなり多くの食べ物に含まれていて、完全に抜くのは難しい気もします...。

そうですね。いきなりすべてのグルテンを断とうとすると、ストレスになるかもしれません。おすすめは、主食系を別の物に置き換えてみることです。

<グルテンの置き換えの例>
・朝食のパンをご飯にする
・おやつのクッキーを果物にする
・パスタやうどんの代わりにそばを食べる

小麦粉の代わりに、米粉や大豆粉を使った食品を料理に取り入れるのもいいですね。最近では、グルテンフリーのパンやパスタなどの食材がいろいろと販売されていますから、積極的に活用しましょう。

また、そういった代替食材を使わなくても、野菜を中心にした和食寄りの献立を意識するとグルテンフリーを実践しやすいと思います。

――グルテンフリーは、どのくらいの期間で効果が出てくるものですか?

便として余計な物が排出され、腸内環境が入れ替わる目安として、まずは1週間試してみましょう。「便秘が改善された」「疲れにくくなった」「肌の調子が良くなった」といった効果が感じられたら、グルテンが腸にダメージを与えていた可能性があります。

――最後に、グルテンフリーを試してみようか考えている人にアドバイスをお願いします。

グルテンフリーを実践する際は、善玉菌を含む食品を多く取り入れて、腸内環境の改善を促進させましょう。善玉菌そのものを多く含む納豆やチーズ、キムチなどの発酵食品や、善玉菌のエサとなる食物繊維を積極的にとることをおすすめします。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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