自己流はNG!本当の「糖質制限ダイエット」とは?

withドクターズ

世代を問わず、女性なら誰しも「自分のスタイルに自信を持ちたい」と思うもの。新しいダイエット法が登場したら、一度は試してみる...という人も多いでしょう。中でも「糖質制限ダイエット」は、「糖質の摂取を控えるだけ」というキャッチーさもあって瞬く間に広まり、空前のブームが続いています。

一方で、「糖質制限をしてもまったくやせない」という人や、「お米やパン、麺類を食べなければ、肉やバター、脂っこいものもいくら食べても大丈夫」といった自己流での糖質制限に熱中して、バランスを崩し、生活に支障をきたす人も少なくありません。

今回は、医学的な観点から食事メニューの開発も手掛ける東京ミッドタウンクリニックの特別診察室長・渡邉美和子先生に、正しい糖質制限ダイエットのやり方と考え方について教えていただきました。

極端な糖質制限にはリスクがある

――「糖質制限はやせられる」という情報が広まって、チャレンジする人が増えています。

糖質制限ダイエットは、3大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質のうち、炭水化物の一部である「糖質」を控えるダイエット法です。炭水化物は「糖質」と「食物繊維」から成り立っていて、食物繊維は血糖値の急激な上昇やコレステロールの吸収を抑制するといった良い作用がある一方で、糖質はエネルギーとなる栄養素そのもの。よって糖質の摂取量を減らそう、という考え方ですね。

糖質を減らす分、たんぱく質や脂質を増やしてとってもいいという点が、食事量そのものを減らすダイエットより魅力的に見えるのが人気の理由でしょう。低糖質でダイエット効果をアピールする商品がコンビニに並んでいて、手に入りやすいのもブームを後押ししていると思います。

ただ、ここ最近はエスカレートしすぎているように感じますね。炭水化物を制限すれば肉やバターなどの動物性脂肪はいくらとってもいいとか、日本人の食文化である米を一切とらないとか、そうした極端なやり方によって、めまいやだるさなどの体調不良を訴えるケースも増えており、やみくもに続けることはお勧めできません。「糖質以外はいくらでも食べていい」といった一見キャッチーに思える表現も、さまざまな病気を引き起こすリスクになりえます

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――自己流で糖質制限をするうちにのめりこみ、ついやりすぎてしまう人も多いと思います。どんな弊害があるのでしょう。

近年の大腸がんや前立腺がん、乳がんが増加している理由のひとつとして、動物性脂肪を多くとる食生活の欧米化が挙げられていることをご存じの方は多いと思います。「糖質制限をしているから」といって、動物性脂肪を含む食品を無制限に食べていれば、当然ながらそうした病気のリスクは高まります。

血糖値を下げることだけにフォーカスするのであれば、炭水化物以外の栄養素が増えてしまっても支障はないかもしれませんが、その代わりにがんやアレルギーの悪化など、ほかの病気のリスクが増してしまっては元も子もありません。

また、「よく噛んで満腹感を感じる」食べ方は美しさを維持するダイエットの基本であり、「いくらでも食べていい」と満腹以上に食べ過ぎる習慣は、確実に健康バランスを崩すことにつながります。



――正しい糖質制限の仕方を教えてください。

私は「バランスカーボ(balanced carbohydrates)」という考え方を提唱しています。糖質を極端に減らすというより、バランス良く、いい糖質をとるという考え方です。例えば、栄養分が精製されてしまった白米よりも玄米、白いパンより全粒粉のパン、といった具合です。糖質の量そのものは変わらなくても、糖質の吸収を穏やかにする食物繊維が豊富で、大切なビタミン、ミネラルが多くとることができるという利点があります。

銀シャリの白米はかきこむように食べてしまうことはあっても、玄米はそうはならないでしょう。噛めば噛むほど旨みが出るので、結果良く噛んで食べることになり、無理に「減らそう!」と意気込まなくても自然に少量で満足できるのではないでしょうか。

主食として大切なお米より、嗜好品のジュースや缶コーヒーといった甘い飲み物から減らしていくこともお勧めです。よくセミナーなどでお話しするのですが、スポーツ飲料やジュースには、砂糖や果糖ブドウ糖液がたくさん含まれています。

ブドウ糖は最も体に吸収されやすい形ですから、血糖値は急上昇しやすく、エネルギーとして使用されなかった分は容易に内臓脂肪として蓄積されます。角砂糖15個分以上入っている清涼飲料水も珍しくなく、野菜ジュースでさえ、市販の物はかなりの糖分が含まれていることが多いです。よって、嗜好品としてではなく体のために野菜ジュースを飲むなら、砂糖を入れずに自分で作るようにしましょう

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あとは、おなかがすいているときに単独で炭水化物を食べないこと。同じケーキやどら焼きでも、野菜豊富な食事をしっかりとってからデザートとして食べるのと、空腹時にそれだけ食べるのとでは、血糖値の上がり方が大きく違います。

「糖質制限をする意味があるか」をまずは見極めて

――そもそも、糖質制限ダイエットは、どんな人に向いているのでしょうか。

日本人はやせていても糖尿病になりやすい体質の人が多いので、白米やパン、麺類などの主食を減らしておかずを増やし、血糖値やインスリンをコントロールする糖質制限ダイエットは、比較的向いています。だからといって、日本人なら誰でも糖質制限が必要というわけではなく、且つ血糖値をコントロールすることと、ダイエットはまた別物です

糖質制限ダイエットが合っているかどうかは、医療機関で行う血液検査の結果も判断の参考になります。ヘモグロビンA1C(HbA1c)が5.6%以上の方や、インスリン値に異常がある方など、糖尿病になるスイッチが目に見える方ならやる価値があるでしょう。また、中性脂肪の値も炭水化物とアルコールの摂取量に関係しますから、空腹時の値が150mg/dl以上の方は糖質制限による効果が見込めます。

――逆にいうと、そうした数値が正常なら、糖質制限はあまり気にしなくていいのですね。

そうですね。その人の状態によっては、糖質制限よりほかに、やるべきことがある場合もあります。例えばLDL(悪玉)コレステロールが高いなら、アルコールを含む食事全体の量を見直したり、適度な運動で脂肪の燃焼を促したりするほうが先ですよね。自分にとって意味があるかどうかを知るためにも、まずは自分の状態を知ることから始めましょう。

また、糖質制限をする人もしない人も、偏った食事はせず、できるだけバランス良く食べることが重要です。脂のとりすぎは病気のリスクを高めますが、過度に脂を制限すると肌や髪が乾燥してしまいます。悪く言われがちなコレステロールも、大切な女性ホルモンの原料であるなど意外な側面もあります。

アメリカのニュース雑誌「TIME」でも「Eat Butter」という特集を組み、世界で最も健康的な食品のひとつとしてバターを紹介していました。油は何でも害、と考える傾向があった中で、脂質の重要性にスポットを当てるという点で画期的でしたが、私が推奨するのはバターのような動物性脂肪より、魚の脂を代表とするオメガ3脂肪酸といわれる脂質です。血液をサラサラにして血管老化を予防するなど、さまざまな効果が知られています。

毎日お魚を食べるのが難しければ、鰹節や缶詰など、安価で手軽な加工品でもカバーできますよ。フレッシュで質のいい物なら、エゴマ油アマニ油を料理の仕上げに使うのもいいと思います。揚げ物には、ビタミンEが入っていて酸化しにくいアボカドオイル、カメリナオイルがお勧めですが、手に入りやすいところでは国産の菜種油もお勧めです。美容面でも健康面でも、適度に良い脂をとることは大切なのです。

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――基本はバランスのいい食事ですね。

私は、「この病気だからこの食材」「ダイエットをしているからこのメニュー」というのではなく、持病があろうとなかろうと、若かろうと老いていようとも、「ユニバーサルに良い食習慣」を提唱しています。「これだけとっていればいい」という単純な考えだけではいけないですし、「これをとってはいけない」といった過度ながまんも継続できません。必要な栄養素をきちんととるということですね。

食事は、目で見て、ジュージュー焼ける音を聞いて、匂いをかいで、サクサク、パリパリといった食感まで味わいながら食べるもの。五感をフルに使って、「おいしい!」と感動しながら食べることが、体のためにとても大切です。体にいい食品を自分の力で選ぶためにも、味覚を育て、食事を楽しんでほしいですね。


SUPERVISERこの記事を監修した人

渡邉先生

PROFILE

渡邉 美和子 (わたなべ みわこ) 医師

専門分野:内科・抗加齢医学

1994年 北里大学医学部卒業
慶應義塾大学内科学教室 入局。永寿総合病院勤務などを経て、2003年医療法人社団桃蹊会理事長、2007年マリーシアガーデンクリニック院長を経て、2010年より東京ミッドタウンクリニックへ。2011年東京ミッドタウンクリニック「特別診察室長」に就任。臨床の場で会員制医療における健康危機管理や医療相談に携わるほか、日本抗加齢医学会、日本内分泌学会をはじめ医学学会でのお弁当監修や企業との健康関連事業に取り組むなど、独自の食指導「安心で美味しい食の医療プロジェクト」にも力を入れている。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。

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