シミの代表格「老人性色素斑」を薄くするには?最適な治療の選び方

40代になると、急に目立ち始めるシミ。シミにはいくつか種類があり、最も一般的なものが、紫外線を多く浴びることによってできやすくなる「老人性色素斑(日光黒子)」です。

「老人性色素斑はなぜできるのか?」といったメカニズムから、実際にシミができてしまった後の治療法まで、東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュの上島朋子院長に解説していただきました。

加齢に伴って現れるシミ。それが「老人性色素斑」

――老人性色素斑の特徴について教えてください。

老人性色素斑は、年齢とともに頬やこめかみに丸く現れるベタっとした褐色斑です。ほかにも、シミと認識される褐色の色素斑には、いろいろな種類があります。例えば、俗にそばかすと呼ばれる「雀卵斑」、30代から40代の女性に多く、紫外線やホルモンバランスの崩れなどが影響するといわれる「肝斑」、やけどやニキビなどの炎症後に生じる「炎症後色素沈着」などです。

肝斑と老人性色素斑は共存している場合が多いですが、少しぼやけて淡い印象の物が肝斑で、比較的はっきりした濃い色の物が老人性色素斑です。

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――ここからは老人性色素斑を「シミ」と言い換えて、お話を伺います。シミは、その名のとおり老化現象なんですよね?

そうですね。紫外線を繰り返し浴びることによって皮膚に現れるシワやたるみなどの老化現象を「光老化」といい、シミもそのひとつです。

光老化は通常の老化にプラスして起こるため、若い頃に紫外線を多く浴びた方はより早く老化が進み、さまざまな肌トラブルに見舞われやすくなります。また、光老化の進行は肌質も関係します。生まれつき色白な方はうっかり紫外線を浴びてもシミができにくい傾向がありますが、紫外線を少し浴びただけでシミになってしまう肌質の方もいらっしゃいます。

――シミと日焼けの違いについて教えてください。

簡単に言うと、自然に元の肌色に戻るのが日焼け、戻らないどころか少しずつ濃くなってしまうのがシミです。そのメカニズムを詳しく説明しましょう。

肌を上からみると、私たちが日頃ふれている「表皮(ひょうひ)」の下に、毛穴や皮脂腺などを有する「真皮(しんぴ)」があり、さらにその下に「皮下脂肪」という構造になっています。表皮の最下層には基底細胞とメラニンの工場であるメラノサイトが並んでいます。

表皮の細胞は紫外線にあたると、メラノサイトにメラニンを作るよう指令を出します。メラノサイトで作られたメラニンは、表皮の細胞に受け渡され、細胞の核の上に集まります。核には大切な遺伝情報を格納したDNAがありますから、それを紫外線から守るために日傘を差すイメージですね。

紫外線の刺激がなくなると、表皮の細胞はメラノサイトへの指令をやめます。そして、ターンオーバーによって肌表面に押し上げられ、ついにははがれ落ちて元の肌色に戻ります。これが日焼けです。

ところが、紫外線を浴び続けると、表皮の細胞の一部は正常な機能を果たさなくなっていきます。紫外線を浴びていないときもメラノサイトへの指令をやめず、指令を受けたメラノサイトがメラニンを供給し続け、その結果シミができるのです。

シミを作らないためには、日頃から紫外線に注意することが大切です。朝の洗顔後に日焼け止めを塗ることをルーティーンにしたいですね。日中も、ムラなくこまめに塗り直すなど意識しましょう。

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メラノサイトと表皮の細胞の両方に働きかける治療が有効

――シミができてしまった場合、どのように対処すればいいでしょうか。

シミができるメカニズムと逆のことを行っていきます。具体的には、(1)表皮の細胞がメラノサイトに指令を出す前に、ターンオーバーによって皮膚の細胞がはがれ落ちるように仕向ける。(2)表皮の細胞からメラノサイトへの司令を減らす。(3)メラノサイト内でのメラニン生成を抑えるようにする。

(1)に相当する治療は「レチノイン酸」や「ピーリング」、(2)は「ビタミンC」や「トラネキサム酸」、(3)は「ハイドロキノン」や「コウジ酸」「L-システイン」「アルブチン」、そしてここでも「ビタミンC」が有効的です。

これらを組み合わせることで、より早く効果を実感できます。

――この中には、薬局で手に入る薬もありますか?

はい、低濃度の物は市販されています。ハイドロキノン、コウジ酸、アルブチン入りの化粧品は、非常にたくさん出回っています。また、レチノイン酸(トレチノイン)よりも活性は落ちますが、レチノール入りの化粧品もありますし、低濃度のピーリング剤を配合した化粧水はドラッグストアで購入することができます。トラネキサム酸、L-システイン、ビタミンCはサプリメントとして販売されています。

クリニックでは、より効果が出やすいよう、薬剤の濃度を高めたり、組み合わせを工夫したり、皮膚への浸透を高める機器を用いたりします。

――シミを改善するレーザーはどのような治療なのでしょうか?

シミに対するレーザー治療では、黒いものに反応する波長の光を使います。レーザーが肌に当たると、黒い部分であるメラニンをたくさん持っている細胞は、ダメージを受けて壊れやすくなります。一方、メラニンを少ししか持たない細胞はダメージを受けません。

レーザーに反応した細胞は、数日後には死んで薄いカサブタとなり、その後ゆっくりはがれていきます。元の肌色とシミの色のコントラストを利用して行う治療ですから、濃いシミほど効果を発揮します

しかし、レーザーは魔法の治療ではありません。治療後のお手入れは、レーザー照射そのものよりずっと重要で、それを怠るとかえってシミが悪化することもあります

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――市販の薬を試して効果を感じない場合、医師に相談することで何がわかりますか?

いろいろな市販薬を試しても効果がない方の中には、「シミだと思っていた物が、実はシミではなかった」という場合があります。また、複数のシミが混在していて、ひとつの治療ではうまくいかないこともあります。医療機関では、シミかシミではないか、使用しているお薬が合っているかどうかを判断することが可能です。

シミができて濃くなっていく過程はとてもゆっくりですが、実は日々進行しています。薬での治療はこれを巻き戻していくものであり、すぐには薄くなりません。それでも半年、1年とコツコツ治療を続けていくと、少しずつ薄くなっていくことを実感できるでしょう。

ノアージュでは、患者さん一人ひとりが無理なく治療を続けていけることを第一に、ニーズに合った治療をご提案しています。


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東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ


SUPERVISERこの記事を監修した人

上島先生

PROFILE

上島 朋子 (かみしま ともこ) 医師

医学博士
専門分野:皮膚科

1992年新潟大学医学部卒業
東邦大学医学部大森病院、栃木県立がんセンター、財団法人鎌倉病院皮膚科部長を経て2016年より東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ勤務、神奈川美容外科クリニックでは10年間非常勤医師として勤務、2018年5月よりノアージュ院長に就任。病理学の研究を経て皮膚科医になった経歴から、「肌」という繊細な臓器をしっかりと見つめ治療・施術を提供することをモットーとする。「肌の健やかな美しさ」にこだわり、疾患の治療から先端美容医療、そして再生医療の研究まで手がける。

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