「骨粗しょう症」対策は40代から!老け顔の原因は「骨」にアリ?

更年期から徐々に進んでいく病気である「骨粗しょう症」。骨粗しょう症というと、高齢の方がなるものというイメージがあるかもしれません。

しかし、せんだい総合健診クリニックで院長を務める石垣洋子先生は、将来骨粗しょう症にならないためには若いころからの予防が大切であることのほか、骨量や骨密度の低下は40代の女性にも大きな影響を与えると言います。それはいったい、どういうことなのでしょう?

今回は、女性に多い骨粗しょう症の原因と、40代女性だからこそ気を付けたい点について、石垣先生に教えていただきました。

骨粗しょう症になってからでは遅い!

――骨粗しょう症とはどういった病気なのでしょうか?

骨量や骨密度が減少して骨強度が低下し骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気を、骨粗しょう症といいます。骨強度(100%)は骨密度(70%)と骨質(30%)からなり、骨粗しょう症という病気の難しさは、下の図のような複合的な要因がかかわっているという点にあります。

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骨強度低下要因の多様性(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より)



そして、この病気の一番悩ましいところは、一度骨粗しょう症と診断されたら、「改善する」というのは難しいため、それ以上悪くならないようにするというのが最善の治療になるところです。60歳以上の方に多い「いつのまにか骨折(※)」も、原因のひとつに骨粗しょう症が挙げられます。

※いつのまにか骨折...骨粗しょう症や変形性脊椎症、脊柱管狭窄症などが原因で、背骨が「いつのまにか」骨折してしまうこと。腰が痛い、背中が曲がる、背が縮むといった症状がある。検査の方法としては、超音波や、より精度の高いDXA(デキサ)法というレントゲン検査を行うことが主流で、ご本人に自覚症状があるというよりも、検査の結果、出てきた数値によって診断されるのが一般的。

――骨粗しょう症になる要因は、どんなことが考えられますか?

ストレスや喫煙、過度な飲酒、無理なダイエット、乱れた食生活、運動不足など、さまざまなことが考えられますが、女性の場合は女性ホルモンの減少も大きな要因になります。というのも、骨は女性ホルモンであるエストロゲンの影響を受けるためです。

健康な骨というのは、古くなった骨を壊して、そこを補填するように新しい骨を作っていく、いわゆる「骨のリモデリング」と呼ばれる新陳代謝を繰り返しています。エストロゲンは、新陳代謝に対して骨を壊すのを緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。

そのため、閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が減少すると、骨の形成が追いつかず、急激に骨量や骨密度が減って骨粗しょう症になるリスクが高まるのです。

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骨量の経年変化(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より)

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骨密度とエストロゲン分泌量の変化

骨量や骨密度の減少は「見た目年齢」にも影響する

――骨粗しょう症というと高齢の方がなるというイメージがありますが、40代の女性も気を付けなければいけないものでしょうか?

確かに骨粗しょう症の有病率でいうと、40代女性はごくわずかです。一般的に、骨量は20〜30代が最も多く、40代半ば頃から減少するのですが、女性の場合は、ちょうどそこに更年期によるエストロゲンの分泌の減少も重なり、骨の老化を加速させます。

もちろん、それですぐに骨折しやすくなるというわけではないものの、40代女性にとって骨量や骨密度の減少は、見た目年齢に大きな影響を与えます。

――それはどういったことですか?

骨粗しょう症は、腰椎や大腿部といった体を支える大きな骨への影響を思い浮かべる方がいらっしゃると思いますが、実はそれよりも先に、頭蓋骨や顔面骨も加齢とともに減っていきます。それらの骨が減ると、顔やせが進行して老け顔になってしまいます

――骨の減少が皮膚にも影響するのですか?

そうです。人間の体には骨があって、そこに筋肉がついて、その上に皮膚がありますよね。骨がすべてを支えています。

顔の土台は骨。土台である骨がやせ、次に骨と筋肉や皮下脂肪をつなぎとめている靭帯も弱くなります。すると表面の皮膚が変化し徐々に下垂。それがほうれい線や口角を下げて見せるマリオネットラインとなって表れます

目のくぼみなども同じですね。目の周りの骨がやせてしまうことが原因で、結果、顔全体が老けたようになってしまいます。実は、老け感はシミやくすみといった表面の変化より、顔の内部での変化が大きく影響しているのです。つまり、

見た目が老けている人は「骨密度が低く」、見た目が若い人は「骨密度が高い」ということになります。

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実際、私たちのクリニックを定期的に訪れる女性患者さんの中にも、急に顔が老けたように感じるというので骨密度を測ってみたところ、前回に比べて急激に骨密度が減っていたというケースもありました。

逆に、いくつになっても年齢を感じさせない若々しい見た目を保っている方は、やはり骨密度が平均あるいは平均以上を維持しているんです。そのことからも、私は見た目年齢と骨年齢はすごく近似していると思います。

――腰椎や大腿骨といった大きな骨より、頭蓋骨や顔面骨のほうが先に骨密度が低下するのには何か理由があるのでしょうか?

顔は体の中でも特に骨密度が高い場所で、加齢による作用もありますが、腰椎や大腿骨といった体の内部にある骨に比べて、頭蓋骨や顔面骨は皮膚が浅く、紫外線などの外的影響を受けやすいことも考えられます。

そして、肝心なのはその急激な減り方で、老け顔の始まりは下あご(下顎骨)がやせることから始まり、骨密度は下あご(-22%)から真っ先に減っていくことがわかってきました(腰は-12%、上あごは-14%)。

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骨密度が減ると、骨自身も縮んで小さくなっていきます。私たちの顔の土台として支えている骨が縮小すれば、顔のあちこちで表面の皮膚とのあいだに隙間ができ、余った皮膚が深いシワやたるみを作るというメカニズムです。

しわ・たるみというと、例えばコラーゲンやセラミド、エラスチンなど、化粧品やサプリメントで肌に働きかけるのがいいといわれていますが、元々大きく骨密度が落ち込む下あごは私たちの顔の中で一番年齢を感じさせる場所。50代、60代になったときの見た目年齢を考えたら、40代からきちんとケアしておくことが大切です。なぜなら、最初に申し上げたとおり、一度減ってしまった骨は元には戻りませんから。

骨粗しょう症に有効な予防策とは?

――骨密度の減少を予防するために、40代から心掛けておくべきことは何でしょうか?

最近の研究で、骨に適度の「衝撃」を与えることが重要だとわかってきました。骨の形成には「オステオカルシン」という、通称「骨ホルモン」と呼ばれる物質が必要不可欠なのですが、この分泌量も加齢とともに減少してきます。けれども、骨を刺激することで「オステオカルシン」の分泌を維持、あるいは微増する効果が期待できるんです。

そこでおすすめなのが、「かかと落とし」といわれる運動です。やり方は、姿勢を良くして立ち、そのままゆっくり大きく真上に伸び上がった後、ストンと一気にかかとを落とすというもの。これを、

1日合計30回以上を目標に、毎日継続してください。また、頭蓋骨や顔面骨には、ヘッドマッサージなど直接刺激を与える方法も効果的です。

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――食生活の面ではどんな注意をしておくべきですか?

私がおすすめしているのは、乳製品と果物です。チーズやヨーグルトといった乳製品にはカルシウムだけでなくタンパク質も豊富に入っています。果物に含まれるビタミンCは骨の形成に大いに役立ちますし、果物に多く含まれている抗酸化物質のひとつ「β・クリプトサンチン(β-CRP)」が骨密度を高くするという研究もあります。このほか、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを多く含む食品を摂取することや、「エクオール」を含有したサプリメントを利用して、女性ホルモンを補充するというのもいいと思います。

――こうした予防策は40代といわず、もっと若いうちからやっておくことも大切ですね。

そうですね。骨量や骨密度が年齢とともに減ってくるのは、ある程度仕方がないことなんです。でも、それを最小限で抑えられるかどうかは自分次第。その目安を測るという意味では、今の自分の骨密度がどれくらいかを知っておくことが大切です。骨密度を測ったことがないという方も多いと思いますので、これを機にぜひ骨密度検査を受けることをおすすめしたいですね。骨密度検査は健康診断や人間ドックのオプションとして付けられます。価格も施設によりますが数千円で受けられるため、気軽に受けてみるといいと思いますよ。


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せんだい総合健診クリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

石垣先生

PROFILE

石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師

専門分野:内科

1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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