メタボと肥満の違いって?女性に多い「隠れメタボ」にご用心!

「メタボリックシンドローム(メタボ)」が、毎年行われている「ユーキャン新語・流行語大賞」のベストテンに選ばれたのが2006年。2008年からは「メタボ健診」と呼ばれる特定健康診査(特定健診)制度が始まったこともあり、メタボという言葉は完全に市民権を得たといっていいでしょう。

しかし、あまりにも「メタボ」という言葉が一般的になってしまったために、本来の意味から外れて、「メタボ=肥満」と誤って認識している方が多くなっているようです。もちろん、肥満の方はメタボに該当するケースが多いのは事実ですが、メタボとは「単なる肥満」ではありません。

ここでは、肥満とメタボの違いに加えて、男性より女性に多い「隠れメタボ」についてせんだい総合健診クリニック院長の石垣洋子先生に教えていただきました。

痩せているからといって油断大敵!

――まず、肥満とメタボ(メタボリックシンドローム)はどう違うのでしょうか?

肥満というのは、BMI(Body Mass Index)が25以上の方をいいます。BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値のことで、これが25以上になると、さまざまな疾患のリスクが高まるとされています。しかし、BMIの値だけでは、脂肪が多いのか、筋肉量が多いのかを判別するのが難しく、脂肪にしても内臓脂肪なのか皮下脂肪なのか区別がつきにくいため、一概にBMIだけで健康状態を判断するのが難しいのが現状です。

一方のメタボリックシンドロームは、内臓脂肪が蓄積することを前提として、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち2つ以上が重なった状態を指します。内臓脂肪が増えることで、心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性の病気を招きやすくなってしまうのです。なので、単に腹囲が大きいだけの方は該当しません。

基準としては、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上で、さらに「血圧」「血糖」「脂質」のうち2つ以上が基準を超えている場合にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と認定されます。CTスキャンで調べた内臓脂肪面積は、腹囲と相関していることから、腹囲測定で代用されています。

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――では、「隠れメタボ」というのはどういうものなのでしょうか?

特定保健制度は5年ごとに(2018年以降は6年ごと)に計画が策定されることになっていますが、当初から問題視されていた腹囲の基準に関して見直しの動きがありました。その理由が、「腹囲が基準値以下であっても糖尿病などの生活習慣病を発症する人が結構いる」という事実でした。

つまり、やせていても病気のリスクが高いということで、こうした人たちを「隠れメタボ」あるいは「やせメタボ」と呼んで問題提起したのが始まりでした。見た目はさほど太っていないのに内臓脂肪が多い状態の人は、厚労省の研究班によるとメタボと認定された数と同じくらいいて、「メタボ」と「隠れメタボ」を合わせると1,800万人という驚異的な数字が報告されています。

BMI30以上の肥満は、肥満大国アメリカでは3人に1人該当する一方、日本でそれに該当する方は全体のわずか3%にもかかわらず、糖尿病の発症頻度は米国と変わりません。誰もが太って糖尿病を発症するわけではなく、痩せていても油断大敵です!!

――厚生労働省が定めたものとして、現在は40歳以上、74歳以下を対象に メタボ健診(特定検診)・特定保健指導が行われていますが、やはり40歳を過ぎるとメタボや隠れメタボと診断される人が多いのでしょうか?

そうですね。特に女性の場合は年齢とともに女性ホルモンが減少してくることが大きく影響します。実は、女性ホルモンというのは脂肪代謝と深く関係しており、コレステロールを下げる女性ホルモンの働きが加齢とともに衰えるため、体内に中性脂肪が多くなるとされています。食生活など何も変わっていないのに太りやすくなるというのは、そのためです。

また、脂肪を燃焼させるには筋肉が欠かせませんが、この筋肉も年齢とともに減ってしまいます。そうなると、体内のほとんどが脂肪になってしまい、体脂肪率が上がってしまいます。

内臓脂肪を減らすには、まず食事から

――脂肪というとなかなか落ちないというイメージがあるのですが、内臓脂肪を落とすにはどうすればいいのでしょうか?

急激な減量は、体が飢餓状態に置かれたと錯覚して、かえって脂肪を溜め込みやすい体にしてしまうので要注意です。あくまでも「ゆるい減量」が重要で、1ヵ月に1kg減を上限にして徐々に減らすことが内臓脂肪を減らす最大のポイントでもあります。

食生活では、

・早食い、朝食抜き、寝る前の食事をやめる
・1日1食など極端なダイエットをやめる
・全体の食事量を減らすことで総カロリーは抑えているものの、スイーツを食べてしまうなどの偏った食習慣を改める

といったことが大切。内臓脂肪を減らす効果は運動よりも食事のほうが大きく、「過食になりがちな食生活を改めて適度な運動をする」というのがおすすめです。特に、寝る前の飲食は、就寝中に体内に脂肪を溜めやすくするので注意してください。

あくまでもイメージですが、体重を減らす効果は食事7:運動3くらいで、過激に急激な減量などではなく、「ゆるく実践」というのが石垣流指導の方法です。実際、体重を3%(50kgの人で1.5kg)減らすだけで内臓脂肪は減り、多くの場合、血糖・中性脂肪・血圧の数値は改善されます。

内臓脂肪は皮下脂肪に比べて増加しやすい一方で、減らしやすいという特徴もあり、努力すればするほど効果が出やすいのがいいところです。「食事を減らして運動すれば痩せる」というのはみんながわかっていることですが、まずは食事の見直しから始めると、早い段階で手応えがあるのでモチベーションも上がり、Win・Winです。

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――では、運動はどういったものが有効ですか?

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動がいいといわれていますが、忙しい方々が毎日これをこなすのは至難の業ですよね。3日坊主になりやすいのも運動で、なかなか継続できないのが運動習慣の難しいところでもあります。

そんな中で私が今注目しているのが「NEAT(ニート)」。NEATとはNon-Exercise Activity Thermogenesisの略で、運動以外の家事やオフィスワークなどの日常生活活動による代謝のことです。わざわざジムなどで特別な運動をしなくても、NEATを増やすことで内臓脂肪を減らせることがわかってきました。

最近は何もかもが便利になり、テレビのチャンネルを変えるのも、電話をかけるのも、一歩も動かず手元で操作できる時代になりました。しかし、

・立ったり座ったりを繰り返して家の中を移動する
・エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使う
・帰宅時に1つ前の駅で降りて歩く

といったことを日頃から意識して行動することでNEATを増やし、それが内臓脂肪を減らして減量につながる「簡単かつ一番の近道だと」私は信じています。

現代はあまりにも便利になり過ぎて、動かなくても多くのことができてしまいます。便利であることの代償として、ご自身の内臓脂肪を増やし、ひいてはメタボから重大な病気の発症につながっているというのも事実です。意識が変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わります。習慣が変われば、人生が変わります!!まずは、意識して行動してみましょう。ちょっとの不便が健康を生み出す源だと私は思っています。


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せんだい総合健診クリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

石垣先生

PROFILE

石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師

専門分野:内科

1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。

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※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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