食欲がわかないのは体からのSOS?食欲不振に潜む病気の可能性

おなかがすいているはずなのに、なぜか食べたいと思わない。食べようとしてはみるものの、どうも食が進まない...。
嫌なことがあったり、体調が優れなかったりして食欲が落ちることは誰にでもあることですが、そうした状態が何日も続くようなら要注意。もしかしたら、食欲不振の陰に思わぬ病気が隠れているかもしれません。

今回は、40代以降の女性に多い食欲不振の原因とその対策を中心に、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生にお話を伺いました。

食欲がわかない状態が何日も続くようなら受診を考えて

――食欲がわかない原因としては、どのようなものが考えられますか。

「おなかがすかない」「食べたいと思わない」など、食べることに対する欲求が低下したり失われたりする原因は、大きく2つあります。

・器質性疾患によるもの
器質性疾患による食欲不振は、食道や胃腸、肝臓、膵臓、十二指腸など、消化器やそのほかの臓器に発生した明らかな異常によって引き起こされるもの
慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの疾患をはじめ、頻度は高くないものの胃がん、大腸がんも考えられるでしょう。風邪やインフルエンザ、胃腸炎などの感染症が原因で腹痛や不快感、吐き気などを催し、食欲が落ちることもあります。

・機能性疾患によるもの
機能性疾患による食欲不振は、臓器そのものには症状に直結する異常がないにもかかわらず、体の機能が低下していて患者さんに自覚症状がある状態
精神的なストレス、更年期のホルモンの乱れ、甲状腺ホルモンが不足して代謝が落ちる甲状腺機能低下症などはその代表例ですね。

――「今日は食欲がないな」と感じたことがある人は多いと思います。どんなときに病院を受診するべきか、目安を教えてください。

ひどく疲れた日や悲しい日、体調が優れない日など、「何も食べたくない」と思うことは誰にでもありますよね。そんなとき、1日寝て食欲が復活するようであれば、それほど気にする必要はありません。一方で、食欲が失せた状態が何日も続いたり、目に見えて体重が減ったりするようなら、必ず医療機関を受診しましょう

医療機関では、患者さんのお話を伺った上で、必要に応じて腹部エコーや内視鏡などの検査をし、目で見て分かる器質的な要因の有無から探っていきます。

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機能性の食欲不振は「付き合い方を知る」ことが大切

――器質性の要因が否定された段階で、機能性の要因を疑うわけですね。ILACY(アイラシイ)世代では、どのような要因が考えられますか。

更年期世代の女性に多く見られる機能性の要因を、3つ紹介します。

・ストレス
女性の40代から50代は、仕事で責任ある立場を任されたり、思春期、反抗期、受験といった育児のターニングポイントを迎えたりと、ストレスが溜まりやすい時期。慢性的な緊張状態が続いて疲れや精神的な負担が蓄積すると、胃の動きが低下して胃酸がたくさん出るため、痛みや喉の詰まりを感じて食べ物を受け付けにくくなります。
ストレスが原因の食欲低下で、胸や胃が痛くて物が食べられない、と訴える方が多いのはそのためです。

・ホルモンバランスの乱れ
また、女性ホルモンが次第に減少していく更年期には、ホルモンバランスの変化に伴うさまざまな症状が起こります。そのひとつが食欲不振。排卵後から月経前にかけて同様の症状が現れる場合も、ホルモンバランスの乱れによる月経前症候群が疑われます

・下痢や便秘など消化器の不調
さらに、おなかが張って苦しい、吐き気がするといった便秘に伴う症状も、食欲不振を引き起こします。反対に、下痢がひどくて食事を受け付けない場合もあるでしょう。
大事なプレゼンの前や子供の試験の前など、ここぞというときに決まっておなかを下してしまうケースは、その人の性格や気の持ちようも大きく影響しています。原因がはっきりしない症状で日常生活に支障が出る、とてもつらい状態ですね。

実は、私も子供が幼稚園へ入園するタイミングで生活のサイクルが変わり、食欲不振や下痢が続いて体重が2~3kg減ってしまったことがあったんです。環境になれるまではたいへんで、症状がつらいときは薬を飲んでしのいでいました。私も身をもって経験したので、このような症状が現れることの苦しみはよくわかります。

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――どのように対策をすればいいのでしょう。

ストレスが原因なら、ストレスそのものを取り除くのが根本的な治療法です。実際、重要な会議や商談、子供の受験といった気がかりが解消すると、気持ちがすっきりして症状がなくなる人も多くいます。

とはいえ、仕事に関することや人間関係、育児全般など終わりが見えないものに対するストレスは、そう簡単に解消できませんよね。心が弱いからだと考えて、気持ちで乗り切ろうとする人がいますが、自分で自分を追い込んで、うつっぽくなってしまう危険があるのでおすすめできません。

できれば、家族や友達など、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。医療機関を受診して医師に話をするのもいいと思います。自分なりの解消方法を見つけて、うまく付き合っていっていくのがいいと思います。

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だらだらと続くことが多いホルモンバランスの乱れによる不調も、ストレスと同じく付き合い方が肝心。月経前後の不調や、更年期特有の症状かもしれないと感じたら、まず婦人科に相談してみましょう。

漢方薬で症状が改善することもありますし、あまりに症状が重ければホルモン補充療法(HRT)などで改善を図る方法もあるはずです。

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なお、便秘や下痢の場合は、まずは生活習慣を正すこと。規則正しい食生活と十分な睡眠を心掛けてください。併せて、適切な下痢止め薬や便秘薬も使えば、症状の緩和を図ることができますよ。

定期的な健診をベースに、自己分析やたっぷりの睡眠で症状改善を

――最後に、食欲不振に悩んでいる更年期世代の女性にアドバイスをいただけますか。

忙しい日々を送っていると、知らないうちに疲れが蓄積して、体と心のバランスを崩してしまいがち。休みの日に「自分のための時間」をたっぷり取ってリフレッシュしてください。一般的に、質の良い睡眠をたっぷり取れた日は調子がいいはずですから、「寝る前の自分の時間」は休みの日に回すといいですよ。

また、自分の状態を理解してコントロールするために、自己分析をするのもおすすめです。朝・昼・晩、もしくは1週間、1ヵ月といったスパンで、食欲がわかない時間帯や曜日をメモしてみてください。前後の予定や睡眠時間も併せて記入しておくと、「月曜日は会議が多く、おなかの調子が悪くなることが多い」「睡眠時間が短いと食欲が出ない」といった規則性を見つけやすくなります。

こうして規則性を知ることで対策を立てやすくなるだけでなく、知ることによる安心感で症状が緩和されることもありますよ。

――確かに、自分の体の癖を知ることで、不安を軽減することもありますよね。ただ、セルフケアでも症状がなかなか改善しなければ、迷わず受診したほうがいいと思いました。

そうですね。40代以降は、体にさまざまな変化が起きる時期。食欲ひとつとってもさまざまな原因が考えられますから、違和感があればすみやかに医療機関を受診していただきたいです。また、定期的な健診も基本としてほしいですね。

医療機関への受診や健診の際は、ご自身が気になっていることをあらかじめメモしておいて、それを元に医師へ相談すると、診断の際に役立ちますよ。

更年期はどうしても不調が出やすくなる時期ですが、セルフケアと医療機関への受診を適宜おこなって、症状が重くならないようにしていきましょう!


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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