フェムゾーン(デリケートゾーン)のにおいが気になる...更年期以降の悩みを医師が解説(2025年更新版)

フェムゾーンの3大悩み「痛み」「かゆみ」「におい」。更年期世代を含めて多くの女性がどれかしらの悩みを感じているといわれていますが、性やフェムゾーンについて話すことをタブー視しがちな日本では、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまう人が多いようです。
フェムゾーンをすこやかに保つには、日頃のケアに加え、不調が出始めたら早めの対策が肝心。そこで、3大悩みの原因と対策、そして予防法について、産婦人科医の吉形玲美先生に教えていただきます。
第3弾は、自分だけでなく対人的にも気になってしまう不快な「におい」についてお話を伺いました。
※本記事は、2020年8月25日公開版を更新したものです
いつもと明らかに違うにおいに注意
――フェムゾーンのにおいにはさまざまな原因があると思いますが、代表的なものを教えてください。
まず前提として、フェムゾーンがにおう原因は年齢によって異なっていて、においがするからといって必ずしも異常であるとは限りません。
特に閉経前・閉経後で大きく異なり、更年期に至っていない若い方(45歳未満の方)なら、腟内は正常で酸性に保たれていますから、フェムゾーンやおりものから少し酸っぱいにおいがすることがありますが、通常これは問題がないにおい。むしろ、においがあるのが普通で、腟が正常であるというサインといえるでしょう。
ただし、酸っぱさも程度の問題。例えば強い刺激臭や、何ともいえない独特の不快なにおいがするときは病気の可能性がありますから、すみやかに婦人科を受診してください。急ににおいが強くなったと感じるときは、雑菌などの感染を疑いましょう。
一方、更年期が終わりに近付くと、女性ホルモンの減少に伴って腟内の潤いがなくなり、腟壁が薄くなって乾燥する萎縮性腟炎が起こります。萎縮性腟炎になると、腟のバリア機能が失われて抵抗力が落ちるので、お尻の周りに常在している大腸菌や雑菌などが侵入して繁殖し、おりものが黄~黄土色に変化したり、普段とは異なるにおいがしたりすることがあります。これは、細菌性腟炎といって、治療を要しますね。
――においの源が腟の外なのか、中なのかによっても原因が異なりそうですね。
腟の外側のにおいで多いのが、何かのきっかけで漏れてしまった尿が下着や外陰部についたまま時間が経ち、アンモニア臭がするケースです。更年期から老年期にかけては骨盤の筋肉が衰えるため、腹圧の刺激や性器下垂、性器脱(※)などが原因で尿もれが増えるので、注意が必要ですね。また、単純に尿や便の拭き残しがあってにおう場合や、使用したトイレットペーパーが付着してにおいの原因になっていることもあります。
※性器脱...膀胱や子宮、直腸といった骨盤内臓器が腟の入り口から飛び出た状態になること。これは、骨盤内臓器を支える骨盤底筋群が加齢によって衰えることが原因。
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腟の内側からにおう場合は、病気がほとんどです。数こそあまり多くありませんが、子宮頸がんや子宮体がんなどが進行していると、それまでとは違う独特のにおいがすることがあります。
また、診察で症例が多いのは、独特のおりものが出て、いずれも強いにおいがする性感染症です。
■独特のおりものが出るおもな性感染症
・トリコモナス...泡状のおりものが出る
・カンジダ...ポロポロとしたカッテージチーズ状のおりものが出る
・クラミジア...水っぽいおりもの、黄色っぽいおりものの量が増える
明らかに色が違う場合も、何らかの病気が潜んでいる可能性が高いので、早めに婦人科を受診してください。
もうひとつ、細菌性腟炎から骨盤腹膜炎になると、強い下肢部痛や発熱のほか、感染が悪化してきついにおいのする膿状のおりものが出ます。まれですが、子宮体がん検査をきっかけに骨盤腹膜炎になる人がいるので、検査は必要性を見極めて受けるようにしましょう。
においは専用のケア用品で、やさしく丁寧に洗おう
――フェムゾーンのにおい対策について教えてください。
「フェムゾーンの痛みの原因は?」の記事でも解説した通り、萎縮性腟炎は、女性ホルモンが入っていて腟粘膜の炎症を改善できる腟坐薬を挿入、もしくは女性ホルモンのエストロゲンを補充するHRTをおこない、根本的な解決を図ります。
カンジダ腟炎や性感染症も、早期発見・早期治療が重要。市販薬もありますが、症状が強いときは迷わず婦人科を受診しましょう。
――病気以外の場合はいかがでしょう。
おりもののにおいは、おりものシートをうまく使えばかなり軽減できると思います。さまざまなおりものシートが市販されていますが、一番重視していただきたいのは素材です。いくつか試してみて、自分に合う肌触りのシートを選んでください。できれば、香料の少ない物のほうがいいでしょう。
素材感は、生理用ナプキンにもいえることですね。使い心地が良く、肌にふれていて嫌な感じがしない物を選んでください。
どちらにも共通していえるのは、こまめに取り替えること。特に、排出されて時間が経った経血は細菌が好むので、独特のにおいが発生しやすくなります。仕事などで長時間トイレに立てないときもあると思いますが、においを抑えるには、なるべく長時間同じナプキンをあてたままにするのは避けたほうがいいですね。
あとは、フェムゾーン専用のケア用品を使って、正しいケアをすること。においが気になるとつい強く洗ったり、何度も洗ったりしてしまいますが、洗いすぎは禁物です。
ソープを選ぶ場合はまず、pH値(5.0~7.5)に調整された物を選ぶといいでしょう。一般的なボティソープのpH値が9.0~11.0に対して、腟内は外界から子宮に雑菌がはいってこないようpH3.8~4.5の弱酸性で保たれています。そのためボディ用の作られたアルカリ性のソープでは腟を守る常在菌まで奪ってしまいます。かといって腟と同じpH値だと、汚れがきれいに落ちない可能性もあります。洗い終わったら、フェムゾーン専用の保湿ジェルやクリームを使って、潤いを逃さないようしっかり蓋をしてください。
自分のフェムゾーンを知ることが、正しいケアの第一歩
――においを予防する方法はありますか?
まずは、自分のフェムゾーンに何がどのように配置されているかを知っておきましょう。拭き残しや洗い残しがある方の中には、腟や肛門の場所を正確に把握していない方が少なくありません。
お風呂で洗っているときや、入浴後などに鏡でフェムゾーンを見て、どこをどう洗えばいいのか、イメージすることをおすすめします。
――洗う場所がわかれば、ケアも行き届きそうですね。
せめて、尿道口、肛門、腟口のほか、ひだ状で汚れが溜まりやすい大陰唇はしっかり見て覚えておくといいですね。どんな形状をしているかがわかれば、トイレでの拭き方や洗い方も変わってきますし、普段のケアも行き届くようになると思います。
正しいケアの第一歩だと思って、自分のフェムゾーンを知ることから始めてみてください。
更年期以降に増えていくフェムゾーンの3大悩み「痛み」「かゆみ」「におい」は、日頃の心掛けである程度抑えることはできます。専用の洗浄剤、保湿ジェルやクリームを使うことを意識して、清潔に、丁寧にケアしていきましょう。
更年期を迎えるとフェムゾーンはどのように変化する?
――本項からは吉形医師のお話とは別に、役立つ情報をお届けできればと思います。
先ほど話に出てきたように、更年期になるとフェムゾーンの悩みを抱える女性が増加します。それは、女性ホルモンの一つである"エストロゲン"の分泌量が急激に減少するためです。
エストロゲンは皮膚や粘膜にうるおいを与える役割を担っているため、分泌量が減ると全身で乾きやきしみを感じるようになります。この影響はフェムゾーンも例外ではなく、腟内が乾燥することで、痛みやかゆみなど不快な症状の原因となるのです。
また、エストロゲンの分泌量が減ると、腟内をきれいに保つおりものの量も減少し、細菌が繁殖しやすくなります。このように更年期以降は、腟内環境が乱れやすくなります。
フェムゾーンがにおう原因について
腟内に原因がある場合
フェムゾーンがにおう原因はさまざまです。
まず腟内に原因があるケースとして考えられるのが、月経中に使用するタンポンや月経カップを長時間使用することです。
長時間、タンポンなど異物を腟の中に入れたままにしておくと細菌が繁殖し、強いにおいを発することがあります。極めてまれですが、高熱や腹痛などの症状が表れる骨盤腹膜炎を引き起こす可能性があります。腟内に挿入する月経用品の使用は必要最小限とし、商品に記載されている使用時間や使用方法を守ることが大切です。
もしこれらを取り出したかどうかがわからなくなってしまったような場合は、婦人科を受診し、腟内を確認してもらうことをおすすめします。
病気が原因の場合
――「フェムゾーンのにおいが強くなった」と感じる場合は、なんらかの病気にかかっている可能性もあります。では、においの原因となるフェムゾーンの病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
- 性感染症
フェムゾーンがにおう原因としてまず挙げられるのが、性感染症です。性感染症の種類は、淋菌感染症(淋病)やクラミジア、トリコモナス症、梅毒などさまざまですが、罹患するとおりものが変化するとともに、においが発生する傾向にあります。
たとえば淋菌感染症にかかると、膿のようにドロドロとした黄緑色のおりものが増える、また排尿時に痛みを感じるといった症状が表れます。人によってはおりもののにおいが強くなる場合もありますが、こうした症状に気がつかないケースも少なくありません。
性交渉後、フェムゾーンになんらかの違和感を覚えたときは性感染症を疑い、クリニックを受診するのが賢明です。
- 細菌性腟炎
細菌性腟炎は、腟内における雑菌の増加が原因で起こります。
通常、腟内には雑菌の侵入を防ぐ乳酸菌が存在しており、良好な環境に保ってくれています。しかし、フェムゾーンを洗いすぎたり、疲れなどから免疫力が低下したり、性交渉によっても乳酸菌の防御力が下がり、腟内環境が乱れてしまうことがあるのです。なお、更年期以降は腟内乳酸菌は減少するので慢性的にリスクがあります。
細菌性腟炎にかかると、おりものが生魚やイカのようなにおいに変化します。 自然に治ることもありますが、毎日のフェムゾーンケアで予防ができ、婦人科で処方してもらう腟剤の使用により早期に症状が改善します。
- 萎縮性腟炎
萎縮性腟炎とは、閉経や卵巣摘出をきっかけにエストロゲンの分泌量が低下し、腟内に炎症が起こる病気です。
先ほどお伝えしたように、エストロゲンの分泌量が減るとフェムゾーンのうるおいが失われ、乳酸菌が減少します。乾燥している状態では摩擦で傷がつきやすくなり、それに伴って痛みやかゆみが引き起こされるうえに細菌が繁殖しやすいため、萎縮性腟炎から細菌性腟炎に発展することもあります。
外陰部に原因がある場合
フェムゾーンがにおうのは、腟内で異常が起きているときだけではありません。外側から見える女性器の部分に原因があり、不快感を覚えるにおいにつながっている可能性も無きにしもあらずです。
- 外陰炎(がいいんえん)
女性の外陰部である大陰唇(だいいんしん)や、その周辺の陰部で起こる炎症が、外陰炎です。
外陰炎は、大腸菌のような細菌や、ヘルペスをはじめとするウイルス、そしてトリコモナスやケジラミといった微生物による感染が原因 で起こります。ほかにも、フェムゾーンの蒸れや、皮膚に傷がついた場合も、外陰炎の原因となります。
主な症状は赤みやかゆみ、ひりつきですが、おりものの量が増加してにおいが出ることも少なくありません。長い期間炎症が続くと、外陰部の皮膚がただれて変色し、日常生活に支障をきたすようなかゆみが生じるケースもあります。
- 汚れの付着
フェムゾーンがにおう原因には、汚れの付着も挙げられます。
アンダーヘアに尿が付いたままになっている場合や、適切に洗浄できておらず、恥垢が溜まっている場合は、尿に近いにおいやツンとするようなにおいを発することがあります。「腟内や外陰部には何も異常がないのににおう......」と感じるときには、フェムゾーンの汚れが原因かもしれませんので、ケア方法を見直してみてはいかがでしょうか。
ただし「汚れを溜めないように」と、温水洗浄便座を過度に使用するのは避けたいところです。洗浄することですっきり感を得られますが、使いすぎると腟内の常在菌までも洗い流してしまい、炎症を引き起こしかねません。
体質が原因の場合
フェムゾーンを健康に、そして清潔に保っていても「なんだか嫌なにおいがする......」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしかすると、そのにおいは"外陰部臭症"によるものかもしれません。
外陰部臭症とは、通常より外陰部にあるアポクリン汗腺の数が多いため、分泌される汗が常在菌によって分解されるときの独特のにおいを強く発してしまう症状です。下着に黄色い汗ジミがつく場合や耳垢が湿っている場合、においの原因は体質の可能性があります。
フェムゾーンのにおい対策
フェムゾーンがにおう原因についておわかりいただけたところで、次に今日から取り組めるケア方法をお伝えしていきます。
「においは気になるけれど、適切なケアがよくわからない......」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。しかし悩みを抱えたままでは、何事も楽しめなくなってしまうものです。ご自身の身体のことを知り、より大切にしていくためにも、フェムゾーンのにおいを解消する方法を押さえておきましょう。
きちんと保湿する
顔や身体は丁寧にうるおいのケアをしている方でも、フェムゾーンの保湿は疎かになっているのではないでしょうか。
年齢を重ねるたびにフェムゾーンは乾燥しやすくなり、ひりつきやかゆみを引き起こすリスクが高まります。そのため日頃からうるおいを与える習慣をつけ、乾燥によるトラブルを未然に防ぐことが大切です。
まずはフェムゾーン用の洗浄料を泡立て、なでるように優しく洗います。タオルで軽く抑えるように水分を拭きとったら、清潔な指でフェムゾーン用のジェルやクリームを塗っていきます。保湿アイテムを塗る部位は、大陰唇周辺の皮膚です。
なお、フェムソーン用の洗浄料がしみる場合はお湯のみの洗浄で、ボディーソープは刺激が強いので避けましょう。また、ジェルやクリームが腟内に入らないようご注意ください。
VIO脱毛をする
アンダーヘアをなくすとフェムゾーンを清潔に保てるようになるため、においの軽減にもつながります。VIO脱毛をすればフェムゾーンが蒸れにくくなるうえ、お手入れもしやすくなります。そのため、外陰部のトラブルに悩むことが多い場合は検討するとよいかもしれません。
VIO脱毛直後のフェムゾーンは、敏感で乾燥しやすい状態となっていますから、必ず保湿アイテムを塗って、うるおいをキープしておきましょう。
ショーツの素材を変える
フェムゾーンのにおいをケアしたいのであれば、ショーツの素材にもこだわりたいところです。
風を通しにくい素材のショーツをはいていると、蒸れて雑菌が繁殖しやすくなるうえ、においもこもってしまいます。フェムゾーンの環境を快適に保つには、通気性と吸水性に優れた素材のショーツがおすすめです。たとえば、シルクやコットンなどの天然素材のものが最適です。
また、肌にぴったりと密着するような締めつけの強いデザインのショーツは避けるとよいかもしれません。湿気が逃げにくい環境をつくってしまうため、ご自身の身体に合ったサイズを選ぶのが大切です。
便秘や下痢に注意する
においを軽減させるには、便秘や下痢にならないよう日々の過ごし方を見直すことも不可欠です。
実は腸と腟内の関係は深く、元気な腸内環境の維持は腟内環境の健康にもつながると考えられています。そのため、栄養バランスの良い食生活や定期的な運動の習慣をつけて、便秘や下痢に悩まない毎日を送りたいところです。
「腸内環境を整えたい」と思われるときには、発酵食品や食物繊維が含まれる食品を摂取することをおすすめします。たとえば、発酵食品であればヨーグルトやチーズ、食物繊維が含まれる食品であればアボカドやゴボウなど。また、双方が含まれる納豆もおすすめです。
フェムゾーンがにおうときは、身体全体の健康にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
フェムゾーンがにおう原因は、腟内の異常や病気などさまざま!適切なケアで悩みを解決しよう
今回は、女性が悩むフェムゾーンのにおいについて、吉形玲美医師にお話を伺ったのち、その内容をより役立てるための情報をお伝えしました。
フェムゾーンのにおいに悩みを抱える女性は数多くいらっしゃいます。なかでも更年期を迎えると、エストロゲンの分泌量が減少することで腟内環境が乱れ、においをはじめとするフェムゾーンの悩みを抱える方が増えます。
フェムゾーンがにおう原因や、においの特徴はさまざまなので、気になることがある場合は婦人科を受診するのがベストです。また、きちんと保湿をしたりショーツの素材にこだわったりと、ご自身でできるケアにも取り組んでいきましょう。
『40代から始めよう!閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』
今回、お話を伺った吉形玲美医師の著書『40代から始めよう!閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』には、更年期前後の時期を心晴れやかに過ごすための方法がギュッと詰まっています。閉経のしくみから、更年期を迎えたあとの不安を解消する術まで、女性の健康を守るための情報が満載です。
フェムゾーンの悩みを解決するヒントを得るためにも、ぜひ手に取ってみてください。
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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この記事を監修した人

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師
医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、月経不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。
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