フェムケアとは?国内外の動向も解説

近年、"フェムケア"という言葉が注目を集めつつあります。
女性が健やかな日々を送るためには、とても大切な考え方です。
しかし、日本では海外と比べると、フェムケアの概念自体がまだまだ浸透していないという現状もあります。

そこで本記事では、フェムケアの基本的な概要を解説します。
女性としての毎日を、より気持ち良く過ごしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

フェムケアとは?

フェムケアは、「Feminine(女性の)」と「Care(ケア)」をかけあわせた造語で、女性の体や健康のケアをする製品・サービス全般、あるいはケアすることそのものをさす言葉です。主に月経に関するものをイメージする方も多いかもしれませんが、フェムケアは月経のみならず、以下のような女性の悩みや女性特有の変化・機能全般に寄り添うものです。

フェムケアのさす主な範囲

  • フェムゾーンケア(洗浄や保湿、インナーケアなど)
  • 妊娠中および産後
  • 更年期症状
  • 女性用サプリメント
  • セクシャルウェルネス

さらに近年は「女性が働きやすい社会のサポート」「女性のQOL向上」など、広い意味でもフェムケアという言葉が使われつつあります。そのためフェムケアには「こうしなければならない」といった具体的なやり方は決まっていません。
フェムケア用アイテムを購入・使用することはもちろん、女性が自身の悩みや不快感を自覚したうえで、それらを軽減するためのさまざまな工夫を講じることも広義でのフェムケアに含まれます。

また、月経管理アプリなど、フェムケアアイテムのなかでもデジタルテクノロジーを用いているものを"フェムテック"といいます。こちらもフェムケア同様、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

下記の記事では、更年期の方におすすめのフェムテック・フェムケアアイテムを紹介しています。まずは専用アイテムからフェムケアを始めてみたい方はぜひご覧ください。

更年期の方におすすめのフェムテック・フェムケアアイテム7選

世界でのフェムケアの現状

フェムケア、またフェムケアに内包されるフェムテックは、世界で注目を浴びている概念です。
世界的な調査会社であるFuture Market Insightsが2022年に発表した「Femtech Market Outlook (2023 to 2033)」によると、世界のフェムテック市場の収益は2023年に総額12億米ドルに達成したそうです。さらに、2033年までには50億米ドルまでの成長が見込まれています。

それでは、日本を含めた世界各国でのフェムテック市場は、今後どのように成長していくのでしょうか?
同調査の結果から、2017年~2022年の年平均成長率、および2033年時点で予測される年平均成長率と市場規模を以下の表にまとめました。



世界各国のフェムテック市場の年平均成長率・市場規模
年平均成長率(2017年~2022年) 年平均成長率(2017年~2022年) 市場規模(2033年の予測)
アメリカ 9.7% 12.2% 14億米ドル
イギリス 11.3% 14.3% 2億7,460万米ドル
中国 13.6% 17.1% 4億3,890万米ドル
日本 16.8% 18% 3億6,810万米ドル
韓国 16.8% 19.9% 1億770万米ドル


市場規模でみると、アメリカが圧倒的ではありますが、実は今後最も急速な成長が見込まれているのはアジア各国です。中でも韓国は、圧倒的な人口を誇る中国よりも、そして日本よりもさらに、これからの年平均成長率が高いことがわかります。

これには、韓国の若年層のなかで、月経や生殖に関する製品への関心が高いことが背景として考えられ、月経管理アプリを使用している女性もかなりの割合でいるとされています。日本でも同様のことが挙げられ、特に若年層と親和性の高いスマートフォンの利用増加や、通信環境の改善が、フェムテック市場の拡大に貢献しているとみられているようです。

参照元:Femtech Market Outlook (2023 to 2033) - Future Market Insights



海外のフェムケア事情

各国のフェムケア事情についてもう少し掘り下げてみましょう。

フェムテック分野においてはアメリカが世界最大のシェアを誇ります。イギリスの調査会社FemTechAnalyticsによると、世界のフェムテック企業全体の半数以上をアメリカの企業が占めているそうです。
アメリカでは、妊娠・出産をはじめとする生殖の分野を中心に、生理用品に注力したECサイトや、体外受精のサブスク、排卵日予測ブレスレットなど、多彩なフェムテックが次々と送り出されています。そういった革新的なサービスのほかにも、クラミジアや淋病の予防薬や、女性特有の病気に関する遺伝子検査サービスなど、女性の健康に直結する製品・サービスの開発に尽力している企業も数多くあります。

アメリカは女性のヘルスケアの意識が高い国なので、このようにフェムケア・フェムテック市場が大きくなっているのでしょう。しかしその背景としては、アメリカでは医療費がとても高いことが挙げられます。なるべく病院に行かずに、医療費の負担を抑えるために、常日頃から自身の健康に気を配る必要があるというわけです。

さらに、先ほどの調査結果では登場しなかった国でも、フェムケアの分野は成長しつつあります。

たとえば台湾は「生理用品先進国」ともよばれており、月経ディスクや月経カップなど、さまざまな生理用品を開発している企業があります。台湾は、月経をはじめとする女性特有の健康問題について公の場で議論することがタブー視されている風潮がある国です。しかし、近年は徐々に、以前よりも多くの女性が健康に気を配るようになったようです。そういった風潮の後押しもあり、台湾でもフェムケアアイテムが増えてきているのでしょう。

また、台湾やシンガポールでは、フェムゾーン用のソープを使用する考えが根付いており、ドラッグストアにはフェムゾーン用ソープだけが並ぶ棚もあるほどです。日本ではなかなか考えられない光景ですね。



日本国内のフェムケア事情

矢野経済研究所が2021年に実施した調査によると、日本国内におけるフェムケア・フェムテックの市場規模は2021年時点で642億9,700万円という結果が出ています。2020年の調査以来、前年比は103.9%から107.7%へと伸びており、劇的な増加ではないものの、徐々に市場が成長していることがわかります。

引用元:矢野経済研究所、フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査結果を発表 - 日本経済新聞

ただし消費者に目を向けると、フェムテックの認知度は低く、「フェムテックという言葉の意味を知っている」と回答したのはどの年代でも一桁台の割合です。

引用元:フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する消費者アンケート調査を実施(2022年) - 矢野経済研究所

日本国内では消費者の認知度に課題のあるフェムケア・フェムテックですが、市場規模の拡大とともに認知度も上がっていく可能性も十分あります。
実際に「フェムテックジャパン/フェムケアジャパン Tokyo」という、フェムケアアイテムの展示・体験イベントの来場者数は、2021年の初開催時は約500名、2022年の第2回は約600名と増加。さらに第3回となる2023年開催時には1,000名以上と、右肩上がりに伸びています。
このイベントでは、"飲むフェムケア"として手軽に始められるサプリメントや、吸水ショーツ、フェムゾーン用ソープなど、さまざまな国産アイテムが並びました。

アメリカをはじめとする世界各国の後押しを受けて、これから日本国内のフェムケア市場も拡大していくことを期待したいですね。

フェムケアが注目を浴びている背景

日本国内でのフェムケアの認知度は低いとはいえ、フェムケアに興味があって本記事を読んでいる方がいらっしゃるのもまた事実です。雑誌やSNSをはじめとするメディアで、フェムケアやフェムテックという言葉を目にしたことをきっかけに興味をもった方も多いのではないでしょうか。

メディアで扱われているということは、つまりフェムケアが日本国内でも注目を浴びつつあるということです。
そこで、以下ではフェムケアが注目を浴びている背景を掘り下げて解説します。



①男女共同参画社会による、女性が働きやすい社会の促進

女性が働きやすい世の中をつくるためには、女性特有の健康課題や悩みを少しでも取り除く必要があります。その心強いパートナーとして、フェムケアは不可欠な存在です。

内閣府の「男女共同参画白書 令和4年版」では、女性の就業率は右肩上がりで徐々に上昇しており、男性の就業率とのギャップも年々埋められてきていることがわかります。

引用元:男女共同参画白書 令和4年版 > 2-2図 女性就業率の推移 - 男女共同参画局

しかし、女性には月経や婦人系疾患、および更年期症状をはじめとする不調や、妊娠・出産というライフステージの変化があります。そのため、多くの女性が就業できたとしても、男性と同等のパフォーマンスを発揮するのがなかなか難しいのもまた事実です。

日本医療政策機構が実施した調査では、45%の女性が「月経に関連した症状でパフォーマンスが半分以下になる」と回答しました。また、50%の女性が「更年期症状を理由に昇進を辞退したことがある」と判明しています。

そういった背景を受け、経済産業省では「フェムテック等サポートサービス実証事業」を実施し、フェムテック等事業者へ補助金を出す制度を整えています。国をあげてのプロジェクトとしても、フェムケアが注目されているのです。

参照:働く女性の健康増進に関する調査2018(サマリー)(日本語) - 日本医療政策機構



②国内外でのジェンダー平等意識の高まり

近年は日本国内のみならず、世界全体でジェンダー平等意識が高まっています。ジェンダー平等への向き合い方もまた、フェムケアの浸透の一因と考えられるでしょう。

日本はもちろん、世界で近年着目されているSDGsの項目の一つに「ジェンダー平等」が掲げられています。しかし一方で、日本は長年、ジェンダー・ギャップ指数の総合順位が低く、先進国のなかでも遅れをとっています。

参照:ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2022年 - 男女共同参画局

日本国内でも多くの人がこの現状を問題に感じ、「男女平等を目指すべきだ」と考えているようです。電通総研が2023年に実施した「ジェンダーに関する意識調査」では、男性の74.3%、女性の81.7%が「社会全体で男女平等を目指すべき」と回答しています。

世の中全体が日本国内のジェンダー・ギャップの課題を受け止め、ジェンダー平等意識が高まっていることからも、フェムケアが注目されつつあると考えられます。

参照:【電通総研コンパス第11回調査】ジェンダーに関する意識調査 - 電通総研

フェムケアを始めるうえで大切なこと

フェムケアは、女性がより生き生きと過ごしていくうえで欠かせないものだということがわかりました。しかし同時に、フェムケアを「特別なもの」だと思いすぎないことも大切です。

ご自身が心地よく生きていくために、悩みや不快感に気づき、それに対し必要なことを選択していくのがフェムケアの第一歩です。フェムケアを始めるうえで高い志を改めてもったり、専門的な勉強をしたりといった必要はありませんし、さまざまなアイテムを使うことも必須ではありません。

「特別なもの」「ハードルの高いこと」だと思って、なかなか始められない......。そんな事態になっては、せっかくフェムケアという考え方を知っていても非常にもったいないことになってしまいます。

まずは、「自分の身体で、女性特有の悩みを感じていることはないかな?」と考えてみて、それに対してできる小さなアプローチから始めてみるのはどうでしょうか。

下記の記事では、美容家の神崎 恵様に、フェムケアに対する考え方についてお話しいただいております。
ご興味のある方は、あわせてぜひご覧ください。
神崎 恵さんに聞く、プレ更年期・更年期を健やかに美しく過ごすために大切なこと【前編(全3回)】

女性が生きやすい世の中のためにはフェムケアの浸透が大切。まずは簡単なことから始めよう

いかがでしたでしょうか。
今回は、フェムケアについて、基礎的な情報から国内外の動向など詳しく解説いたしました。

今やフェムケアは「フェムゾーンケア」にとどまらず、女性が自分らしく生きていくために大切な概念として、幅広い定義を内包しています。そして同時に、フェムケアは決して特別なものではなく、気軽に取り入れていただきたいものでもあります。

ぜひ、ご自身の身体に改めて目を向けて、「何が解決すればもっと生き生きと過ごせるかな?」を考えてみてください。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
フェムケア
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