胃が痛いのはストレスのせい?...メンタルと胃腸の深い関係

緊張すると胃がキリキリ痛む、プレッシャーの大きい出来事の前はおなかの調子が悪くなる――そんな症状に見舞われた経験がある人は少なくないでしょう。実際、胃潰瘍や胃腸炎などはストレスが原因となっているケースも多く、患者数も年々増えているそうです。

いったい、メンタルと胃腸の病気のあいだにはどのような関係があるのでしょうか。ストレスからくる胃腸の症状や、不調に対する日常的なケア方法を、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に教えていただきました。

ストレスが胃腸に与える影響とは?

――胃腸がストレスに弱いイメージはありますが、これはどういうメカニズムで引き起こされているものなのでしょうか。

そもそもストレスとは何かというと、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態によって引き起こされるもの。このとき体内では、自律神経のバランスが崩れています

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があって、交感神経は日中や活動しているときに活発になり、一方の副交感神経は夜間やリラックスしている状態のときに活発になります。

通常であれば、この2つの神経がバランスをとりながら働いてくれているのですが、人間関係の悩みや仕事のプレッシャー、過労による肉体疲労など、いわゆるストレスの原因となる外的刺激を受けると交感神経のほうが強くなってしまうんです。そうすると、胃がキリキリと痛んだり、下痢や便秘、またはその両方を引き起こしたりします。

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――そういった症状を訴える患者さんは多いですか?

そうですね。男性の場合はおなかが緩くなるケースが多いですが、女性の場合は胃の痛みや便秘、おなかが張るといった症状を訴える方が多い印象です。

――女性の場合、更年期に入ると女性ホルモンの減少によって気持ちの浮き沈みが激しくなったりしますが、そういった体の変化とストレスは何か関係性がありますか?

やっぱり関係はあると思います。更年期世代の女性は、働いている方であれば仕事上の責任も増えてくる時期でしょうし、子育ての悩みを抱えている方もたくさんいらっしゃるはず。

そうすると、なかなか自分の時間を持てないというか、常に何かを考えていて、ぼんやりする時間がない人が多いように思います。それがストレスにつながるのではないでしょうか。

また、女性ホルモンの乱れが胃腸の不調につながることも大いにあります。

月経前にイライラしやすくなることがありますよね?イライラするということは、交感神経が優位になっている状態です。

更年期の女性ホルモンは、月経前に近い状態になっているので、それが胃腸に与える影響はあると思います。

メンタルが引き金となって起こる、おもな胃腸の疾患

――メンタルが引き起こす胃腸の病気には、どういったものがありますか?

一般的に考えられるのは、「逆流性食道炎」「胃・十二指腸潰瘍」「急性胃粘膜障害」「機能性胃腸症」「過敏性腸症候群」の5つです。


逆流性食道炎

胃酸はストレスによっても過剰に分泌されますが、それが胃から逆流して食道に上がってしまうのが、逆流性食道炎です。

胸やけや胃の痛みのほか、ひどい場合はのどが痛んだり、咳き込んだりといった食道以外の箇所にも症状が出ることがあります。

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胃・十二指腸潰瘍

次に、胃・十二指腸潰瘍ですが、ご高齢の方の場合は胃の中にいるピロリ菌の影響が考えられます。40代未満の方はストレスなどによって胃酸の分泌が過剰になり、胃や十二指腸の粘膜が炎症を起こし、それが度重なることで潰瘍ができていきます。

胃・十二指腸潰瘍の症状は空腹時に起こるのが特徴で、みぞおちのあたりが痛むことがあります。


急性胃粘膜障害

急性胃粘膜障害は、ストレスなどによって胃の粘膜が傷つき、急性胃炎が起きたり、急性の潰瘍ができたりすることをいいます。

胃のあたりに突如痛みを感じ、場合によっては救急車を呼ばなければならないくらいの痛みになります。


機能性胃腸症

採血や内視鏡検査などをしても明らかな異常がないにもかかわらず、食事の後の胃もたれやみぞおち周辺の痛みなどが続く場合は、機能性胃腸症の可能性が。
これも原因のひとつとしてストレスが考えられます。

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過敏性腸症候群

最後に、過敏性腸症候群ですが、これはストレスが原因で起こる病気といわれています。緊張を感じると下痢になり、緊張が解けると止まるという症状の方が多いです。

また、下痢のあいだは食欲がなかったのが、止まった途端に食べたくなって、食べるとおなかが張って、今度は便秘になってしまうケースも多々あります。

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――こういった症状でクリニックに来院した場合、どのような診察行われるのでしょうか。

まずは症状を引き起こす原因として、ポリープやがんなどがないかを調べます。そして、その方の普段の食生活や職場環境など詳しく話を伺った結果、ストレスが原因となった場合は、症状を抑える薬を処方することもありますが、個人的にはあまりおすすめはしたくないですね。

――それはなぜでしょうか?

特に胃酸を抑える薬にいえることなのですが、それを飲み続けることによって胃の粘膜の状態が変化することがあるんです。そのため、薬を処方する以外の方法がないかを探り、治療にあたっています。

もちろん、下痢が続いてつらいときに飲む整腸剤や、痛みがひどいときだけ胃酸を抑える薬を飲むのは大きな影響はありませんので、安心してください。

また、過敏性腸症候群にはそれに特化した薬がありますので、まずは病院に行って相談していただければと思います。

予防にはストレスを溜めないことが大切

――ストレスが原因で胃腸を傷めやすい人の特徴はありますか?

やっぱり真面目な人であったり、他人の目や噂を必要以上に気にしてしまったりする人が多いですね。

――一番の予防法はストレスを溜めないことだとは思いますが、真面目な気質などは性格なので、なかなか難しいかもしれません。そういう人でもできるセルフケアはありますか?

毎日の生活の中で、自分なりのストレス発散法を見つけることは大事だと思います。

例えば、仕事中でもお昼休みだけはきちんととって仕事から離れるとか、夜に30分でもいいから自分の時間を持つようにするとか。

お友達とメールや電話をするみたいなことでもいいと思うんですよ。口に出してしゃべったり、文字にしたりするだけでも発散になりますし、それに対して相手も同意してくれたら気持ちもほぐれると思うので。

とにかく、自分の中だけに溜め込まず、なるべく外に出せる方法を見つけるようにしてほしいです。

――食生活で気を付けることはありますか?

症状によりますね。下痢をしているときはアルコールや刺激物をとるのは良くありません。そもそも下痢のときは食欲も落ちていると思いますが、下痢が治まると食べたくなったりするんですよね。

その際は、ヨーグルトなどの乳製品や納豆、豆腐など、なるべく残渣が少なく消化の良い食べ物を食べると、その後の便秘を防ぐことができます。

とはいえ、もし下痢などの症状がない場合は、食べたい物を食べていいと思います。食べたいと思えるのは、元気な証拠。食べてストレス発散というのも、胃腸の不調を防ぐひとつの方法ですよ。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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