腸内環境が良いとは?「デブ菌」ってあるの?...腸や便にまつわる疑問

病気にならない、もしくはなっても悪化させない体づくりの一環として、「免疫力」に関心を持つ人が増えています。免疫力と腸内環境は切っても切れない関係といわれ、免疫力アップにつながる食事の仕方や暮らし方といった情報が巷にあふれるようになりました。
しかし、どの情報が正しいのか、どれが自分にとって有益なのか、判断に迷うこともあるのではないでしょうか。

そこで今回は、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師・古川真依子先生に、免疫力と腸内環境の関係性から腸や便に関する話まで、気になる10個の疑問に答えていただきました。

Q1 腸内環境と免疫力には密接な関係がある?

あります腸活の基礎知識でもお話ししたとおり、腸には栄養分を吸収する小腸と、体に不要な物を便として出す大腸があり、ウイルスや細菌から体を守る腸管免疫というシステムが備わっています。

腸の状態が悪いと免疫機能が低下して病気にかかりやすくなり、腸の状態が良いと免疫機能が向上するのはそのためです。

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Q2 「腸内環境が良い・悪い」って具体的にどういう状態?

腸内細菌は、
・善玉菌...消化吸収や免疫力の働きを助ける
・悪玉菌...毒性のある有害物質や発がん性物質を増やす
・日和見菌...善玉菌と悪玉菌のうち優勢なほうに味方する
の3つに分類されます。

「腸内環境が良い」とは、善玉菌とそれに味方する日和見菌が多く、悪玉菌が少ない(悪玉菌に味方する日和見菌が少ない)状態。

「腸内環境が悪い」はその逆ですね。便秘が続いて老廃物が溜まると、悪玉菌が増えて腸内環境は悪化します。

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Q3 腸内環境が悪いと病気になりやすい?

腸内環境が悪くなっているのは、ウイルスや細菌から体を守る腸管免疫システムのバランスが乱れ、機能が低下している状態。つまり、風邪などの感染症をはじめとする、さまざまな病気にかかりやすくなるのは事実です。

溜まった老廃物が血液を通して全身に回れば、肩こり、腰痛、頭痛など全身の不調を引き起こす原因にもなりますよ。

Q4 太る原因になる腸内細菌があるって本当?

本当です腸内細菌の中には、通称「デブ菌」「やせ菌」と呼ばれる種類があります。専門的な言葉でいうと、デブ菌は脂肪を溜め込む「フィルミクテス」、やせ菌は脂肪を燃焼する「バクテロイデス」。どちらも日和見菌に分類され、食べる物や腸内環境によって優位になる菌が決まります。

実際、肥満の人の腸内には悪玉菌に味方をするフィルミクテスが多く、やせている人の腸内には善玉菌に味方をするバクテロイデスが多いという研究結果もあり、この2つの菌が「太りやすい」「やせやすい」といった体質に大きく関わっていることがわかっています。

デブ菌を増やさないためには、できるだけ善玉菌を増やし、同時にバクテロイデスを増やしていくことが重要ですね。

Q5 「宿便」を出すと、腸内環境は良くなる?

腸内に長く滞留している宿便(しゅくべん)は、悪玉菌を増やして腸内環境に悪影響を与えます。腸内洗浄などで一度すべての便を出してしまえば、腸内環境をリセットすることはできるでしょう。

といっても、まったく別の腸内環境を手に入れられるわけではないので、腸内環境が良くなるとは限りません。ゼロから腸内環境を作っていくつもりで、腸内洗浄後の食生活や生活習慣に気を配ることができれば、腸内環境の改善につながる可能性はありますね

ただし、市販されている薬を使って自己流で腸内洗浄をするのはとても危険です。保険適用外になる場合も多いですが、腸内洗浄の知見がある医療機関を受診しましょう。

Q6 赤ちゃんがお母さんの腸内環境を受け継ぐというのは本当?

本当です。赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいるときは無菌状態で育ち、経膣分娩で産道を通るときに初めてふれたお母さんの腸内細菌をそのまま受け継ぎます。受け継いだ腸内細菌は次々に侵入してくる悪い菌から赤ちゃんの腸を守り、バランスのとれた腸内環境を育てていく元になります。

妊娠中から発酵食品を積極的にとるなどして便秘を解消する努力をし、お母さん自身の腸内環境を良くしておくことは、赤ちゃんに良い腸内環境と免疫力を与えてあげることにつながるでしょう。

Q7 便秘は遺伝する?

便秘体質が遺伝する科学的な根拠はありません。ただ、親子で顔形が似るように、腸の形や骨格は遺伝します。ねじれた大腸の形が遺伝したことによって、親子ともに便秘しやすくなるということはありうるわけですね。

また、便秘のほとんどは生活習慣など後天的な影響によるものですから、食べる物や食べる時間、食べ方などに共通点が多い家族は、便秘体質も似てきます。逆にいえば、生活習慣に気を配ることによって、親の便秘体質を子供に受け継がせないようにできるということです。

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Q8 「水に浮く便が状態の良い便」というのは本当?

便の状態は、食べた物のほか、腸内細菌や水分量などによって決まります。便秘ぎみで重く硬い便や、下痢ぎみで水のような便は水に浮きませんから、「水に浮く便は腸の状態が良い」というのはひとつの目安にはなるでしょう。

理想は、適度にやわらかく形を保っている子供の便のような状態。排便後に便の状態を確かめてみるといいですね。

それに加えて、気にしていただきたいのが排便後の自分の感覚です。便の状態は悪くなくても、「いつも残便感があってなんとなくスッキリしない」「お腹が張っている」といった感じがある場合は、腸内環境に問題があるかもしれません。毎日必ず排便がなくても構わないので、不快感がない状態を目指していただけるといいと思います。

Q9 便秘改善に良いとされるヨーグルト。とるなら、夜がいい?

睡眠中に善玉菌を長く腸にとどめ、朝起きてご飯を食べて便を出すという理想のサイクルを実現するのに役立つので、夜ご飯のときに善玉菌を含む食品をとるのはいいと思います。

ヨーグルトや乳製品など、消化にいい食べ物が望ましいですね。ただし、食べてすぐ寝ると太る原因になりますから、寝る直前は避けましょう。

Q10 風邪で病院を受診した際、抗生剤とともに整腸剤が処方されるのはどうして?

風邪などで抗生剤を服用すると、病原菌だけでなく体に役立つ常在菌まで攻撃してしまい、おなかを下すことがあります。そのため、プロバイオティクスという整腸剤がいっしょに処方されます。プロバイオティクスは、善玉菌を増やし、抗生剤を服用することで乱れた腸内環境の回復を促すために有効なのです。

さらに腸内環境の回復効果を高めたいなら、整腸剤で善玉菌を増やすのと並行して、善玉菌のエサになるオリゴ糖や食物繊維などを多く含む「プレバイオティクス」をとるといいでしょう。

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健やかな毎日のために、安定した腸内環境を作ることを心掛けて

腸が正常に働いているからこそ、心身の健康が保たれるといって過言ではありません。腸内環境が安定すれば、感染症や大きな病気の予防、体型維持にもつながります。

そのためには、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動が不可欠。特に更年期前後の女性は、どうしても便通のバランスを崩しがちになりますので、忙しい毎日の中でも意識的に腸をいたわることを意識して生活しましょう。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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