医師が教える正しい「腸活」のすすめ

心身ともに健康な体づくりのために、まずは腸を整える!――近年「腸活」という言葉とともに話題となったトピックですが、実は腸活の本当のメリットや、体における腸の働きがよくわからないという人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に、腸活の基礎知識のほか、腸内改善に効くセルフケア法を教えていただきました。

その不調、腸内環境が原因かも?意外と知らない腸の働き

――まずは、基本的な腸の働きについて教えてください。

腸はおもに小腸と大腸があり、大まかにいうと小腸は栄養分を吸収するところ、大腸はいらなくなった物を便として出すところになります。また、腸には「腸管免疫」というシステムがあり、ウイルスや細菌から体を守る役割を果たしています。つまり、腸内環境が悪化すると免疫力が低下し、風邪をはじめ、さまざまな病気にかかりやすくなると考えられます

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――腸内環境が悪くなる原因は何ですか?

一番は便秘ですね。女性の場合、男性に比べて骨盤が広いために腸が垂れ下がりやすく、そこに便が溜まりやすいんです。さらに、腹筋も少なく、便を押し出す力も弱いので、どうしても便秘になりがちです。

それから、生理前に便秘になるという方も多いですよね。それは仕方がないことではあるんですけど、やはり便秘が続くと悪玉菌が増えて腸内環境が悪くなります。

――腸内環境が悪いことで、体にはどんな影響が出ますか?

便秘が続くとお腹がぽっこり出てくるほか、わかりやすいところでいえば、肌荒れやニキビなどの吹き出物、むくみといった症状が出ます。また、便秘は腸の中に老廃物が溜まっているということなので、それが血液を通して全身を巡ると、肩こりや腰痛、頭痛といった症状につながる可能性もあります。

便秘に悩んだときの対処法

――便秘でつらいときに市販の便秘薬を飲む人も多いと思うのですが、薬に頼ってもいいのでしょうか?

いいと思います。現在市販されている便秘薬には、「刺激性下剤」と「緩下剤」の2種類があって、前者は腸に刺激を与えて便通を促す、後者は便をやわらかくして出しやすくするという違いがあります

基本的には、自分に合ったタイプの下剤を使っていただくのがいいと思いますが、刺激性下剤は、初めて使う方だとお腹が痛くなる場合も。また、下剤に体が慣れてしまうと、飲む量を増やさないと便が出ないということにもなりがちなので、常用的には使わないほうが理想的といえます。

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――便秘がひどい場合は、病院にかかるのも手ですね。

そうです。先程、市販の便秘薬でもいいとお伝えしましたが、便通の状態もずっと同じではないので、根本的な改善になるかというと、決してそうではありません。

便秘で病院に行くのは気が引けるという方も多いのですが、医師に相談してアレンジしてもらった薬を飲んだほうが効率的で、便秘改善への第一歩になると思います。実際、患者さんの中には、便秘が改善し、腸内環境が良くなったことで、表情まで明るくなるという方も多くいらっしゃるんですよ。

肌荒れやむくみが改善したことで、いろいろなことに前向きに取り組めるようになるというメリットもあると思いますね。

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――反対に、腸内環境が悪くなっている状態を放置していると、どのようなリスクがあるのでしょうか?

腸におけるリスクは大腸がんですね。ほかにも、腸炎やポリープによって痛みが出ることもあります。

――理想的な便の状態や排便の回数とは、どのようなものでしょうか?

便の状態としては、黄土色から茶色くらいの色で、有形であるというのが理想です。回数については、必ずしも毎日排便がある必要はありません

大切なのは、その人自身の感覚とサイクル。毎日出せなくても、それに対して残便感や不快感がないのであれば問題ありません

腸内環境の予防・改善に役立つセルフケア法

――腸内環境を整えるには、普段からどんなことをしたほうがいいでしょうか?

腸活という点では、納豆やキムチなどの発酵食品、ヨーグルトやチーズといった乳製品を積極的にとってほしいと思います。それから、便秘を予防・改善するのであれば、食物繊維も必要です。食物繊維は水溶性と不溶性の2種類があって、どちらか一方をとればいいというものではありません。

野菜や海藻に含まれる水溶性の食物繊維には、便を膨らませていい便を作る働きが、そして豆類や穀類に多い不溶性の食物繊維には、便をまとめる働きがあるので、両方をバランス良くとるようにしましょう。

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――最近は糖質制限で炭水化物を抜くという人も増えています。

便に関していえば、やはり便の元となる物を食べなければならないので、あまり過度な糖質制限はおすすめできません。極端な糖質制限は便秘につながるので気を付けてほしいですね。

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――冒頭で、「女性の腸は垂れ下がりやすい」とおっしゃっていましたが、垂れ下がった腸を元に戻したりすることは可能なのでしょうか?

垂れ下がった腸を戻す、あるいは垂れ下がらないようにするためには、インナーマッスルを鍛えることが大切です。腹筋がないと背中が丸まって、下腹部が前に出てしまいますよね?そういった姿勢の悪さも、腸が垂れ下がる原因になります。

インナーマッスルがしっかりあれば姿勢も保てますし、腸も正しい位置に上がって、便秘の解消につながると思います。

――腸内環境を整えるには、まずは便秘を改善すること。そのためにも食事と運動が大切なんですね。

そうですね。あと、腸マッサージもおすすめです。仰向けに寝て、下腹部にある腸に沿って「の」の字にマッサージをするだけ。痛くない程度に、でもしっかりと押してあげるのがポイントです。

便秘が続いているという方は、便が溜まりやすい下腹部の左下をしっかり押してあげるといいでしょう。

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とはいえ、便秘や腸内環境の改善はすぐには効果が出ないもの。月単位、年単位といった感じで、努力を続けていくことが大切です。

それでもなかなか改善されなかったり、便に関して「本当はもっとこうなるといいんだけどな」と思ったりすることがあれば、気軽に医師に相談してみてくださいね。


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東京ミッドタウンクリニック


SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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